第22話:邪魔するものたち
「私、このお店来たかったんだよね!!」
異国情緒溢れる店内をテンション高く見て回るサリー。中から店主がやってきた。
「あら〜カターシャじゃないの!! そちらはサリー様ね!! 話はうちの息子から聞いているわよ〜」
(息子さん?? 誰だろう一体)
「初めまして、サリーです」
「サリー、リコリスの母親だ」
カターシャに耳打ちされて驚き固まっているサリー。多分、母親と言ってもリコリスさんとそう年も変わらないような見た目だからであろう。
「チャイを二つ頼む」
「分かったわ〜好きなところに掛けなさい」
ちょっぴりソワソワしているサリーと、頬杖をつきサリーを眺めるカターシャ。リコリスの母親は微笑ましいような表情で彼らを見ていた。
「はいどうぞ〜ご注文のチャイよ!! よかったらこのビスケットも食べてちょうだい。試作で作ってみたから」
「ありがとうございます」
サリーは丁寧にお礼を言ってチャイを飲んでいる。チャイには沢山のスパイスと、ココナッツミルク、きび砂糖が少しだけ入っている。
「あ〜甘くて美味しい。安心する味だね。ビスケットもすごい美味しい……カターシャも食べたら??」
「ああ。にしてもサリーは美味そうに食べるな」
「だって本当に美味しいから!!」
このまま放っておいたらいつまでもカターシャに弄られてしまうと焦ったサリー。話の話題を変えようとした。
「それでカターシャ、さっきの話の続きを教えてくれない??」
「あぁそうだったな。ついついお前の顔を見ているのが楽しくて……」
サリーはカターシャにジロジロ見られていることが恥ずかしくて、いつものように赤面していた。
「ーーーーーーっそれでなんの話だっけ!!」
「なんだサリー、さっき話したこともう忘れたのか??」
「……もーーそうゆうの辞めてほしい」
「分かったよ。人集りの話だったな……」
「これはリコリスから聞いたんだが、商人への販売には決まって黒いローブを身に纏った影みたいに真っ暗な奴が来るらしいんだ。
同じ奴が来ることはよくあるんだが、それだけじゃない。必ず屋根の上から売れ行きを見ているそうだ。そして、夕方ごろになると買い物に来た奴らがもっとくれとせがんで来る。
画陣の国の者がスパイスを届けに来る日は毎回同じようなことが起こるらしい。」
サリーはいつにもなく真剣な顔付きでカターシャの話を聞いていた。
「うーん……これも魔法書で読んだ話なんだけど……大勢の人が一斉に何かを求めるとき……物に中毒性があることが多いんだけど、大体は裏で操っている人がいるらしいの」
「操っている人か……」
「それに、画陣の国の人たちがこんなことすると思う?? 私も一度行ったことがあるけれどみんないい人たちだったわ。ここの事も悪く言ってなかった。むしろ褒めていたくらいよ……」
「それは俺も思うんだ……リコリスの姉が画陣の国に嫁いだんだが、情勢的に俺たちに何か仕掛けるってことはしなさそうなんだよな……」
「ーーーーもしかしたらスパイス自体に問題はないかもしれないわね……その黒いローブを身に纏った影の仕業なのかもしれない」
カターシャは黒いローブの人影を鮮明に思い出そうとしていた。
「ちょっとまて、あいつは人じゃないのか??」
「カターシャ?? 王様になれなかった影の話は知ってる??」
「ーーーーーー」
「お嬢さん!! その話もっと詳しく聞かせてくださいませんかねぇ!!」
カターシャの声に被せるように誰かがやってきた。
「びっびっくりした〜ノアールさん?? どうしたんですか??」
「いや〜この辺を散歩してましたら、店に入るお二人を見つけましてねぇ。店の前で待ち構えていたのですが、出てくる気配もなく……仕方なくお邪魔した次第です」
「ノアールお前なあ……頼むからストーカーは辞めてくれ」
カターシャは呆れているようだ。
「ノアールさんこそ散歩だなんて珍しいですね!! わざわざ町に来る理由でもあったのですか??」
サリーが意味深ともとれる質問をした。
「全くお嬢さんには敵いませんねぇ。想像通りですよ。私もこの一件、何かよくないものが絡んでいるとみておりまして、今日は術団のものを連れて調査に来ていたのです」
「ノアール。お前らもそうだったのか……」
「カターシャお前らとはどういうことだ??」
「騎士団でも数人、ここの町人に扮して探っているところなんだ。今もどこかで調査している」
「そうでしたか。我々の人数が多いに越したことはないです。お嬢さん、先程の話の続きをしてくれませんかねぇ……」
「そうでしたね。王様になれなかった影の話ですね…………」
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