第20話:涙の訳
ジンが後始末をしていた食堂には賑やかないつものメンバーが戻ってきていた。
「ジン〜大丈夫だったのね!!」
この声はシマリスのゾーイだ。
「ゾーイ様!! サリー様のおかげですよ。ほんと、私たちも驚きました」
「あれ?? サリーはどこだ??」
ゾーイに続いてクマのボトも戻ってきていた。
「サリー様は疲れて倒れてしまったので、カターシャ様がお部屋までお連れしていると……」
「なんだって!! あいつにサリーは渡さない!!」
「何クマがアホなこと言ってるのよ」
ゾーイの鋭いツッコミを受け、大きなクマはショックを受けている。
「俺の方がサリーと仲良しなのに」
「ははっ何はともあれ城が守られてよかった」
ジンは微笑んだ。
「にしても、魔法爆弾が仕掛けられるようになったとはねぇ、食堂の警備もそろそろ真面目にやらないとね……」
ゾーイは真剣な面持ちでつぶやいた。
「やはり、ゾーイ様も思いますか……これから数日は偵察団の聞き取り調査が入るかもしれません。お二人ともできる限り協力していただけるとありがたい……」
「当然よ!! 協力するわ!!」
いつもより少し賑やかだった食堂。
その頃サリーの部屋ではカターシャが眠る彼女を見つめていた。
「ん…………」
「起きたか??」
至近距離でサリーを見つめるカターシャ。
「わっ!! 近いよ!! 近い…………」
「元気そうで良かった」
「みんなのところ行かなくちゃ……」
そういっておき上がろうとするサリーをカターシャの力強い手が止めた。
「まだ寝てた方がいいぞ」
「だけど……」
布団の中でむすっとする私をカターシャがまじまじと見る。
「ーーーー何よ、そんなに見ないでよね!! 穴が空いちゃう」
「はっはっは!! サリー、今回は本当に助かった。ありがとう」
いきなり笑い出したかと思えば、真剣な目つきでサリーを見つめるカターシャ。
「いいの、私もドラゴンに会うことが出来て良かったから…………」
母の話を少しだけ思い出して、サリーは懐かしい気持ちになったのだろう。
すると突然カターシャがサリーの頭に手を置き、じっと眺めている。
「大変だったな。ほんとに」
「なんで…………涙が出てくるのよ……」
「ははったまにはいいじゃないか」
そういってカターシャはサリーの涙を指で拭き取った。
「ん、優しくしないでよ! もう」
サリーの涙は一向に止まりそうにないようだ。
「ははっ、大洪水だなこれは!!」
「カターシャあっち行って」
サリーは恥ずかしくなったようで、掛けてある布団にくるまった。
「おい!! 隠れるな!!」
そういうとカターシャはサリーが寝ているベッドに座り本を読み始めた。
「何読んでるの??」
布団の中から顔だけ出すサリー。
「この本はサリーが読んでいた魔法書だ」
「えっ!!」
「にしても、何が書いてあるのかさっぱりわからない……」
「そ、そう??」
サリーの母が何故か読んでいた魔法書。知識のある、限られた者にしか読むことのできない不思議な言語で書いてあるのだ。サリーと、彼女の父母、あと数人の人しか読むことはできないらしい。
(でもなんで私が読むことができるんだろう……そして、ドラゴンが言った消した記憶……あれは、魔法の記憶についてのことを言っている。私が消した魔法の記憶……か……なんだか眠くなってきた)
「まぁいい、母親の肩身、大事にしまっておけよ…………っておい、もう寝たのか??」
サリーはスヤスヤと眠りについたようだ。
カターシャは大きなため息をついた。
「ほんとに助けてくれてありがとう。サリー、城を守ってくれてありがとう」
いつにもなく優しい顔のカターシャは、眠っているサリーの腕をとり、手の甲にキスをした。
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