初めての役割

第11話:朝の匂い

「サリー起きて、時間だよ」


「分かった。起きる…………」


 そういえばアズールは言葉を話すことができたんだな、そう思いながらベッドから起き上がる。


 窓から光が差し込む朝。時刻は四時三十分だけど、外はどうやら明るいようだ。部屋の窓からはうさぎたちの畑が見え、今日も朝からせっせと水やりをしている。


 顔を洗って髪を整える。私の髪の毛は金髪のショートヘアだから、水で濡らして寝癖を整えるくらいで十分。耳には旅の途中で貰ったピアス、胸元には母からもらったペンダントをぶら下げる。


 母にもらったもう一つの宝物、指輪はアズールの首元につけている。


「よしっ今日から頑張ろう!!」


「サリー、服着替えるの忘れているよ〜」


「あっそうだそうだ。ありがとうアズール!!」


「ははっサリーは相変わらずだね」


「ごめんね〜けど、落ち着いたら町で服買おうかな」


「そうだね」


 急いで着替えを済ませ食堂へ向かった。


 この城の廊下は石造り。朝はひんやりしているようだ。


「サリー様!! おはようございます!!」


 行き交う人に挨拶をされた私。何故かみんな私の名前を知っている。


 途中、聞き覚えのある声が私を呼んだ。


「よっサリー!! アズールもいるんだな」


「あ!! リコリスさん、おはようございます」


 背が高く、マッチョなリコリスさんのことは初めて会った時から覚えている。魚をくれた人だ。


「今日はどうしたんですか??」


「これ、ゾーイに頼まれてな。どうも今日の夜に使いたいみたいだったから、サリーに会うついでに届けにきたってわけよ!!」


「わざわざありがとうございます!!」


「いや、いいんだ!! とりあえずお前さんは元気そうだな!! よかったよかった。ところでカターシャとはどうだ??」


「どうって何も…………」


「そうか、ああ見えて優しいやつだから仲良くしてやってくれ…………」


 少し意味深にも聞こえたリコリスさんの言葉。私は深く考えず頷いた。


「はい!! もちろんです」


「じゃ、俺はこれで!!」


 ドスンと私に食材が入った箱を渡し、廊下を走っていった。


(体育会系だなあれは…………にしても筋肉がすごすぎる。ハハっ、ボトより熊みたいだ)


「よし!! 行こう!!」


 サリーはアズールと共に食堂に向かった。


 食堂についた私は、リコリスさんにもらったものを冷蔵庫に片付け、ボトが来るのを待った。


 けれど、彼はこない。十五分……、三十分……待てど来る気配はない。


「アズール、これ絶対寝坊だよね」


「うん。そんな気がするよ〜熊は一度寝るとなかなか起きないみたいだからねぇ〜」


「えっ?? 今頃冬眠するのか、夏なのに…………」


 私は食堂の窓を開けながらそんなことを話していた。


「サリー、そんなことより早く作ったほうがいいかもね。八時になっちゃうよ。僕も何かできることがあれば手伝うから」


「ありがとう、アズール」


 約束の時間から一時間が経った頃、私とアズールは朝食の準備を始めた。

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