第44話 外伝◆暗黒竜その5
◆ガルガ王国 32年前
王都
メヌエット商会 事務所
アメリア視点
私の名前は、アメリア。
平民だから、家名はない。
今は、6歳。
元々は孤児で、赤ん坊の時に王都のサリー孤児院の前に捨てられていたそうだ。
だから、両親ともにわからない。
まあ、どうでもいいけど。
先日、ここメヌエット商会の会長、マリアさんに引き取られた。
マリアさんは私を引き取る時、私にある事を言った。
「この商会は代々、能力主義でトップを決めてきました。あなたには、才能があります。でも、それは今の時点、年齢にしては、です。今後の努力がなければ、すぐに他の者に後れを取ってしまいます。日々の努力を怠らないように!」
「はい」
メヌエット商会(旧名▪食と叡知の女神商会)、初代リンレイ会長からマリアさんで7代目、何故か全員が女性だった。
特に、女性でなければという規定はない。
むしろ、初代の頃は女性は人権が無い状況で、女性が働く事など、あり得ない事だったらしい。
今では、信じられない事だが。
なんでも、昔は女性だけが罹る不治の病があった為、女性が少ない時代があったそうだ。
そのせいで、女性は大事にされ過ぎで囲われ、一妻多夫を強要された。
今はその病も失くなり、一夫一妻が普通だ。
そんな時代の中で女性として1人で生計を立て、働いていたリンレイさんを私は尊敬してる。
だから、私は努力する。
私を見出だしてくれた、マリアさんに報いる為にも努力して、会長を目指す。
そう生きようと孤児院を出る時、決めた。
そして、会長になって孤児院の皆を呼んで共にメヌエット商会をもっと大きくする。
「アメリア、出かける支度をして下さい。これから、貴女にある人を紹介します。大変高貴な身分の方です。失礼のないように」
「はい、マリア会長」
高貴な方?こんな平民が運営する商会がつき合える方、地方貴族かな?
その時の私は、そう思った。
何故なら、王都の貴族や王族と商いをするには、名のある貴族が運営する商会を経由して売り込むしかない。
基本的に貴族は、私達平民に直接合う事はしないし、出来ないからだ。
当然、中間マージンが高く付き、高額商品しか売り込めない。
大抵は、商いとして成立しない。
まあ、変わり者の地方貴族なら、うちでも相手をしてくれるのだろうが。
「黒髪の女神駅より出発します。今からなら15時頃の汽車になりますか、到着は明日の10時頃ですね」
汽車?!乗車するだけで金貨一枚するあの汽車?乗れるの?う、嬉しい。
「その、嬉しいです」
「ああ、汽車は子供達の憧れでしたね。大人びていても、貴女も子供だと理解しました。ふふ、可愛いですね」
マリアさんに笑われた!うう、恥ずかしい。
顔が熱い、多分私の顔は真っ赤だ。
私達は、乗り合い馬車でアスモンド街を経由して、黒髪の女神駅に到着した。
私、身なりは大丈夫だよね?
私は今、ワンピースを着ている。
汽車は平民の金持ちか、貴族以上しか乗ってない。
ちゃんとした身なりじゃないと、車掌から乗車拒否を受けるからだ。
ん、依れてない。大丈夫そうだ。
髪は、後ろにまとめて崩れてない。
ふと、マリアさんを見上げる。
マリアさんは金髪をポニーテールにして、帽子を被り、シックなドレス姿。
ちょっと地方貴族の、後家さんでも通る立ち姿だ。
やっぱり、しっかりしている。
でも、これで60を超えてるなんて、本当に見えない。
40後半でも通るかも。
駅が近づくにつれ、人の数が増えてきた。
この駅は貴族街に近いので、貴族の乗降客を狙った出店が多い。
高額商品を扱う商店が目立つ。
もちろん、地代もそれなりだろうけど。
ふと見ると、ローブを着た一団がプラカードを掲げて叫んでる?
何だろう?
『女神を我が手に』、『女神を我が手に』、『帝国から女神を解放せよ』、『女神は神殿に有るべき』、『女神の叡知は神殿の物、帝国の独占を許すな』
マリアさんが、眉間に皺を寄せた?
「旧キハロスの神殿の一派だね、黒髪信仰の連中さ。女神の正当な所有権は神殿に有りとか、ほざいてる奴らだ。困ったもんだよ。まるで、女神様を物みたいに言って酷い連中さ」
私は、マリアさんの言動に不思議に思った。
まるで女神様が、この世に生きているみたいな言い方だったからだ。
ここの駅舎の名前にもなっている❪黒髪の女神❫、130年くらい昔に実在した人物とされている。
当時、食料難に喘ぐ旧カイオス王国や周辺国に、今の野菜の原種になる成長の早い野菜や果物を与え、様々な技術を伝道したらしい。
(メキカ帝国開国記より)
様々な二つ名があったらしいが、今その名を引き継ぐのは、精霊湖ぐらいか。
そして最終的に旧三国の王妃となり、現帝国の元を築いたとされる。
だから黒髪は、帝国の皇族に時々現れるらしい。
今は、黒髪の人は居ないらしいが。
隠された皇族でもいるのかな?
「アメリア、何をボケっとしているの?そっちは、貴族以上の一等車輌です。私達は、二等車輌になるからこっちです。」
「は、はい!」
私はマリアさんに言われ、慌ててマリアさんを追いかけた。
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