第41話 外伝◆暗黒竜その2

◆メキカ帝国

帝都 (旧カイオス王都)

叡知の塔


モモ視点


「な、何ですか?!あなたは?突然女性の部屋に入ってきて無礼でしょう!すぐ出て行きなさい!」

メアリーが男に怒鳴ったが、男の反応が薄い。

一体、何者だ?


「……………だ」

「は?」

「……どっちだ。我の妻は、どっちだ?」

不味い、正気ではないのか?

しかし、久しぶりに見る我々以外の黒髪。


「メアリー!下がりなさい!」

「ご、御先祖さま?!」

おれはメアリーの安全を確保してから、男に対峙した。


「お前、何者だ。護衛の騎士達は、どうした?」

「…知らん。興味がない。それより」

男は、ズイっとおれの前に立つと、おれを下から上に舐めるように見た。


「そなたから、妻の魔力を一番感じる。何故だ?」

「言ってる事が意味わからん。なんの話し?魔力?」

は?!コイツ、今、魔力って言ったか?!


「この世界は、どういうわけか妻の魔力で満ちている。だが、特に強い魔力をお前から感じる。何故だ?」

「お前、まさか竜?…なのか?」


「そうだ」

「?!」

「?」

おい、おい、おい、なんだなんだなんだ。

今頃になって、あの竜に関わる話しか?!

勘弁してくれ。


おれは目でメアリーに合図し、メアリーを部屋から退出させた。

おれの大事な子孫を、危険に晒す訳にはいかない。

メアリーの退出を確認すると、おれは近くのソファーに座り込んだ。

男にもソファーに座るように話したが、男は座る様子がない。


「あんた、一体何処からきたんだ?」

おれの質問に男は、首を捻る。

質問を、理解してないようだ。


「もう一度聞く。あんたは、どうやってここに来た?」

「次元の狭間をさ迷っていた。我が世界はあると時、突然次元の狭間に飲み込まれ崩壊して滅んだ。妻はその時狂い、自らを痛めつけ魔力を撒き散らしながら、別の狭間に吸い込まれた。私は後を追ったが、見失った。その後数百年、妻を捜しやっとこの地に辿り着いた」

はーっ、確定か。

さて、どう対応するか。

おれの命だけで済むかどうか。


「あんたは、此れからどうするんだ?」

「妻を捜して弔う」

「は?」

「妻は、狂って魔力暴走状態だった。魔力を垂れ流していた。もはや、生きてはいない」

ああ、そうだったのか。

あれは酔って寝てたんじゃなく、すでに死んでいたのか。

だが、その妻の遺体を傷つけた責任はとらねばなるまい。


「すまない。あんたの妻の遺体は、おれが傷つけた。解体して、森の土に埋めたんだ」

「…解体、それをお前がか」

「ああその時、血も浴びて少し飲んだかな?」

おれがそういった途端、男はおれの手を掴んだ。


「?!な、なんだ?」

「…………」

いったい、なんなんだ?

コイツ、おれの手を取って固まってる?


「不思議だ。お前の中で妻が生きている」

は?

おれの中に何がいるって?

「ま、まて?おれの中にお前の妻?が居るのか!?」

「正確には、妻の魔力が循環している」

「魔力が循環?それって一体?」


バターンッ、「御先祖様!ご無事ですか?」

その時、ドアが激しく開いて数人の騎士とメアリーが乱入してきた。

「メ、メアリー?!」

ま、不味い!今おれは、この男と手を取り合って見つめ合っていたところだ。

どんな想像をされるか、わからん?!


「あ、ら?御先祖様?さっきの無礼な男はどちらに?」

メアリーは部屋を見回し、首を捻っている。

は?なんだ?目の前に居るじゃないか?

一体、なにが起きている?


男を見ると、おれを見て口元に指を立てている。

自分の事を、喋るなってことか?!

「あ、ああ、男ならさっき急に部屋から出ていったが」


「え、本当にですか?おかしいな。すれ違わなかったけど?どっかに隠れてたか!あなた達、男は下です。行きます!御先祖様、部屋は施錠して下さい」

「了解」

メアリーは、男達と部屋から出て行った。


「…………」

「…………」

急に静かになって、なんか気まずい。

う、喋りたいが何を言っていいか、わからん。


「あんた、姿を消せるの」

「お前は、我の妻になれ」

は?

今、なんか言われたか?


「………え~と?」

「我の妻になれ」

「…………」

いやいや、何なんだ?藪から棒に、妻?なんでそうなる?


「でなければ、我はもうすぐ狂う。そうなれば、この世界は終わる」

「ちょっと待て?!なんでそうなる?そもそも、おれがあんたの妻にならないと、なんで狂うんだ?それであんたが狂うと、なんで世界が終わるんだ?」

男は、おれの手を離すと、おれの目を見つめた。


「我々竜は、一度番になると胎内の魔力をお互いに流して二人で循環させるのだ。そうなると、お互いが唯一無二になり、どちらかが死ねば片方も、間もなく狂って死ぬ」

「なるほど、一心同体になってるから、片割れでは生きられないと」


「そうだ。そしてこの世界は元々、魔力の少ない世界だ。だから、この世界の生物は魔力に対し、抵抗力を持たない。よって濃い魔力に晒されれば、ほとんどの生物は死に絶えることになる」

「ちょっと、ちょーと!待ってくれ」

おれは男に手で制止して、話を一度止めさせた。


コイツの話を整理すると、コイツは番がいなければ狂って死ぬ。

この世界の生物は、魔力に耐性がないから魔力を受けると死ぬ。ん?

「おい、なら、お前の妻は魔力を持っていなかったのか?おれは、血まで浴びて飲んだんだぞ?」


「妻は、次元の狭間ですでにその魔力の8割を消失して、この世界に辿り着いたはずだ。多少の影響は有っただろうが、全ての生物の命を奪う程の魔力は残っていなかったはず。そして、お前はこの世界の生物ではない」

「?!」


そうか、その多少の影響でさえ、湖の周辺とカイオスの国土の大半を不毛の大地に変え、長きに渡り女性だけにかかる不治の病をまん延させたのか?!

そして、おれが暗黒竜の血まで浴びてTSだけで済んだのは、おれがこの世界の人間ではないからだ。


おれは、再び男を見た。

「話しは分かった。だが、あんたが再び次元の狭間に戻れば済む話しじゃないのか?」

「無理だ。もう、戻れない。次元の扉を開くには、私の魔力が万全でなければならない。ここにくる為私は、魔力を半分使ってしまっている。そして、この世界では魔力を補給する手段がない」



なんだって~っ!それは詰みって事じゃないか!

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