第40話 外伝◆暗黒竜その1

◆精霊湖


旧メテルナ、旧キハロス、旧カイオスに隣接する精霊湖。

かつて、世界に災いの病を撒き散らした暗黒竜が根城にしていた湖。

召喚勇者に討伐され、いく年月。

竜の病も消失し、湖周辺もすっかり緑が戻り、動物や魚達が住まう本来の自然に戻っていた。


この湖、元々は名前がなかった。

三国に接していた為、領有権の問題から名前が付かなかったのだ。

だが、召喚勇者が三国の王妃になったので、王妃の二つ名の1つが湖の名前になったのだ。




ジャリッ


長い黒髪と黒い衣服を着た男が、湖畔に立っていた。

その男は、辺りを見回すと何かを探す様子だった。


突然、男の動きが止まった。

振り向いて、旧カイオス王国方面をじっと睨む様に見る。

が、暫くして旧カイオス王国の方向に向かい、森に消えていった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



◆メキカ帝国

帝都 (旧カイオス王都)

叡知の塔


モモ視点


「はぁぁ、今日もやる事がない。なんか、したいんだけど思いつかない」

「なら、ゆっくりなさったらどうですか?御先祖様?」

カチャッ

おれの娘のサリー、その曾孫の曾孫の曾孫のメアリーが紅茶を出した。

今、直系の子孫で黒髪なのはメアリーだけだ。


思えばあれから、随分過ぎた。

最後の夫、ベルンを看取ったのはいつになるか。

まあ奴が60歳の時に子が出来た時は、正直呆れたが。

頑張るにも程がある。


おれの見かけは、未だに20歳ほど。

もちろん、体調も見かけ相当だ。

おれが皆より年を取らないと分かってから、3人の夫達は気味悪がると思ったが、逆に喜ばれた。

ずっと若い奥さんと一緒に居られるって、ほざいてた。


おかげで、おれが産んだ子供は30人。

みな、成人して子を成した。

さらに、その子が子を成しおれの血を引く子孫は200人を越える。

しかも、全てが王族だ。


正直、これ程長く生きるとは思っていなかった。


ああ、そうだ。

おれの今の名前は、モモ▪フォン▪メキカ。

そして、今いる国はメキカ帝国。


分かると思うが、メテルナ、キハロス、カイオス三国が一つになった。

まあ、血縁が一緒だったから当然の回帰だ。


おれが今いるところは、旧カイオス王都。

現在の、メキカ帝都になる。


ところで、おれが30人も子供を産んで、国の継承問題は大丈夫だったかって?

大丈夫だったから、メキカ帝国になったんだよ。

なんか皆、和気藹々としておれのところにべったりで、いがみ合いなんか全くなかったからな。

少しは、反抗期が有っても良かったなんて思ってるくらいだ。


おれは今、帝都の外れの塔に住んでいる。

叡知の塔とか、呼ばれてるところだ。

おれが、いろいろと日本の技術を小出しにしていたら、いつの間にかそう呼ばれるようになった。

別に叡知でも何でもないんだが、まあ、スマホの事を説明するのも面倒だ。


そんな事で、おれの今の立場は研究者兼相談役といったところか。

まあ、血の繋がりがあるからといって、年をとらない化け物を、城に置くわけにはいかないからな。


「ところで、ガルガ王国のメヌエット商会から、問い合わせが来ております」

「どんな話し?」

「ええっと?私がお読みしてよろしいので?」

「構わないよ、別に隠すような話しはないよ」

メアリーが手紙を持ってきた差出人のメヌエット商会は、あのリンレイさんの親父さんが経営していた商会だ。

あの後、リンレイさんが後を継いで商会を大きくした。

今はリンレイさんから八代目か、よく続いてる。


「先般、❪こんぷれっさー❫なるものの設計図を見させて頂きました。非常に画期的かつ革新的であると判断しております。後日、早急に話しを詰めたいので明後日の列車で伺います。アメリアより」

「分かった。明後日の列車なら、到着は午後一だな。帝国中央駅に誰か迎えを出そう」

会長のアメリアが直接来るか、あの設計図だけであれの重要性が理解できるとは、流石だな。


「あの、❪こんぷれっさー❫って何なんですか?」

「空気を圧縮する機械、様々な動力にも使える。今ある蒸気機関の次の為の物さ」

「はぁ?」

そう、いつかは欲しい冷蔵庫、エアコン開発の布石。

なら、次は冷媒開発か。


ドガガガンッ

その時、激しい音と振動がおれ達の部屋に響く。

「な、何だ?!」

「はひ?!一体なんでしょう?」


塔の下から聞こえたが、この国には地震はないはずだ。

「どっかの馬鹿が、車でも突っ込んだか?」

「見てきましょうか?」

「いや、その為の護衛がいるだろ。対処できなければ、連絡があるはずだ。状況がわからない中で、動くのは危険だ」

「分かりました」


バガンッ

「「?!」」

突然、激しく開く部屋のドア。


そこには、長い黒髪黒服の男が立っていた。

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