第39話 大団円?
◆五年後
今日は、メリダさんとアーノルドさんの結婚式だ。
今、おれの前には高さ3メートルはあるウエディングケーキがある。
ケーキは、シフォンケーキだ。
本当はクリームたっぷりの豪華なやつを考えていたが、残念ながら冷却方法がない。
魔力があるからチートで魔法で冷蔵庫をつくれないか、いろいろやったが無理だった。
この三年でおれは、現代知識を駆使してバター、チーズ、化粧品などさまざまな乳製品、お菓子類、料理などを作り上げた。
その集大成がこの結婚式であり、また、付随する商品化と流通関連は、リンレイさんの実家が❪食と叡知の女神商会❫を立ち上げてくれて、いまではカイオスの大きな資金源に成りつつある。
それと、おれの野菜が流通するようになってから、キハロス、カイオス、メテルナでの女性の死亡率が減って男性とたいして変わらなくなった。
原因ははっきりしないが、もし、魔力がウイルスとしたら、おれの野菜には僅かなおれの魔力が残っているはずだ。
それを発症前から食すことで、魔力に対する抗体のようなものが出来ているのかも知れない。
なんにしても、これで女性の地位が上がり日本のように、自由に街中を歩ける日がくるだろう。
話しが変わるが、なぜ、メリダさんの結婚式が今になったのか。
メリダさんは、アーノルドさんと相思相愛だったがメリダさんは、自分が足が不自由な事でアーノルドさんの負担になると考えていたそうだ。
だが、おれが設計した義足やゴム車輪の新型車椅子のお陰で、前向きに考えられるようになり、ある事がきっかけで今日の結婚になったのだ。
「ふう、初めてだから何かと大変だな」
「いや、これは、何時までたっても慣れないよ」
メリダさんとおれは、二人で大きな腹を抱えてため息をついた。
そこに、金髪の4歳になるうちの子が駆けてくる。
「お母様、メイねえさまからお花の王冠をもらったの」
「おお、よかったな。マリー、メイお姉さんにありがと言ったか?」
「言ってない、メグちゃんに取られそうだから走ってきちゃった」
「ちゃんと言わないと駄目だぞ、メグ、マリーのを横取りしちゃいけないだろ。お前、自分の貰ってるじゃないか」
おれは、あとから来た銀髪のうちの子に言った。
「だってマリーの方が、お花の色が綺麗なんだもん」
「あら、メグちゃん。王冠ならまだまだ沢山つくったから、あっちで一緒に遊びましょう。サリーちゃんが待ってるわ。マリーちゃんもおいで」
「「はーい」」
「すまないね、メイちゃん。子供達の面倒を任せて」
末っ子三姉妹の1人だったメイちゃん、いまではくりくり巻き毛茶髪の可愛いお姉ちゃんだ。
「大丈夫ですよ、マイもユメもいますから。モモ御姉様は身重なんですから、無理はなさらないで下さい」
「ありがとう」
遠くの中庭では、マイちゃんとユメちゃんに挟まれて、黒髪のサリーが手を振っていた。
ちなみにリンゴちゃんは、おれの結婚式に来ていたキハロスのカイン第二王子に一目惚れ。
翌年には婚約し、今はキハロスにいる。
結局あの子、年の離れた年上が好きだったみたい。
そこに、ガルガに挨拶にでていた息子と夫達が帰ってきた。
茶髪の青い目、可愛い顔だち、将来は間違いなくイケメンだ。
「母上、ただいま父上達と戻りました」
「おお、ジーク。初めての馬車で腰は大丈夫か?」
「はい、母上のゴム車輪と板バネ付き馬車のお陰で快適でした」
「そうか、試作馬車で行ったのだな。好評なら、そろそろ量産化を」
「こら、モモ!また、何か始めて俺達から逃げる気だろ」
「こまります。勇者モモ様、また、貴女との時間が減ってしまう」
「精霊モモどの、どうか私と愛を語り合う時間を」
「お前ら、おれを、またこんな腹にしてよく言うわ。もう、跡取りの息子はいるし、三人の可愛い娘達がいるんだ。もう、充分だろって言ってたら、また、強姦しやがってどんだけおれに子供を生ませる気だ?!」
「ご、強姦?!母上?!」
ああ、いかん。
この子は、4歳にして聡明だった。
「ジーク、向こうで妹達が呼んでるから行ってきなさい」
「は?はい。それでは母上、また、少ししたら参ります」
ふう、ジークは行ったな。
ジークが行くと、三匹がおれを抱き込んできた。
ベルンが言った。
「さっきの回答だが、俺達はお前との子はいくらでも欲しい。だから、諦めろ」
「そうですよ、勇者モモ様。私はまだまだ愛が足りません」
「精霊モモどの、どうか、私に貴女の愛を下さい」
勇者として召喚され、TS事故で三国の王妃になったおれ。
どうやら、おれの憂鬱な日々はまだまだ続くようだ。
END?
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