第38話 結婚式

おれが目覚めたのは、翌朝の事だった。

おれが目覚めると、半裸の強姦魔1号ベルンがおれを抱き込んで寝ていた。


身動きが出来ないので、強姦魔1号ベルンの胸を叩いていたら、余計に抱き込まれた。

頭にきたので、そのまま二度寝して気づいたら、半裸の強姦魔が三匹になっていた。


おれは、三匹をベッドから蹴りだすと、メリダさんの部屋に向かった。

メリダさんの部屋には、リンゴちゃんが来ていた。


「おお、モモ!目覚めたのか。急に倒れた時は肝が冷えたぞ」


「ああ、モモお姉さま!ついに私の願いを聞き届けてくれたのですね!うれしいです」


部屋に入るなり、リンゴちゃんに抱きつかれたが、願いを聞き届けた?ってなんだ??


おれが頭にクエスチョンマークを増やしていると、リンゴちゃんがおれの下腹を触りだした?!


「り、リンゴちゃん?!」


「モモお姉さま、きっとよい子が生まれますわ。私に、お姉さまの次に抱かせて下さいませ」


「え~と?」


おれは状況がわからず、メリダさんに目で助けを求めた。

メリダさんは、ため息をつくとおれに言った。


「モモ。お前は妊娠している」


にんじん?人参?隣人?鰊?


メリダさん、頭を左右に振って額に手を置きながら、もう一度言った。


「分かってないようだから今一度言うが、お前の腹に子どもがいる」


「………………は?!」

子どもが腹にいる…だと?!!


「心当たりはあるだろう?ベルンや他の夫達に会って、聞いてないのか?」


三匹は、有無を言わさず蹴りだしたが、心当たりは……………あるな。

え、ここにいるのか?

おれの子

「………………」


「モモお姉さま、おめでとうございます。妊娠 三の月3ヶ月ですよ」


おれが無言で腹をさすっていると、リンゴちゃんがおれの手に手を添えて言った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「モモ、でかした」

「勇者モモ様、私はうれしいです」

「精霊モモどの、あなたはますます愛しい」


なんやかんやあって、強姦魔達に嬉しくない祝福を受けて腹が立った。


いや、子どもを授かった事自体には、嬉しくないわけではない。

問題なのは

「お前らのせいで、誰の子か分からんじゃないか!」


「大丈夫だ。生まれれば判るし、俺たち全員で育てるから問題ない」

「勇者モモ様、貴女から生まれる子は間違いなく私達の子です」

「精霊モモどの、貴女の子は間違いなくカイオス、キハロス、メテルナの王族ですぞ」


待て、待て、待て、おれが気にしてるのは、そういうことではない。


「おれが気にしているのは、おれが勘違いでお前らを誘って、お前らも誤解したまま、おれの意思を無視して出来ちゃったってとこ!愛がなくて出来たって、子どもに申し訳ない!!」


ベルンが、驚いた顔でおれに言った。

「そうなのか?まだ、愛が足らなかったか?」


「え」


ジーナスが、おれの右手を触りながら言った。

「勇者モモ様、それはいけませんね。子ども達の為にも、もっと愛を育みませんと」


「はいぃ?」


ラーンが、おれの左手を触りながら言った。

「精霊モモどの、私に全てを任して下さい」


「ま、ま、待て、待って、違?!!」


「「「大丈夫だ、お腹の子に障りが出ないように、優しくする」」」



「違ーーーーーーーーーーーーっ!!!!」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



また、おれは七日間、ベッドから出れなかった。

優しくするって言ったのは、何処のドイツだ、袖ケ浦か?嘘つきめ。

所詮、奴らは何処までいっても強姦魔だ。



◇◇◇



「結婚式?」


三匹が、口を揃えて言ってきた。


強姦魔1号「そうだ、三国合同になる」

強姦魔2号「三国の国境中心、湖の小島で行います」

強姦魔3号「数隻の帆船で島を囲みます」


「い、いや、そんな慌ててやらなくても」


強姦魔1号「腹がでかくなってから、やりたいか?」


強姦魔1号が、ニヤケながら言ってきた。


そんなまさに出来ちゃた婚みたいなマネ、出来るわけねーわ。

こんちくしょーっ!



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



結局、一週間後におれがよく歌を唄っていた、あの岩礁の小島で結婚式が行われた。


キハロスの神殿長の爺さんが神事を執り行い、警備がメテルナの帆船部隊。


そして周辺国からは、さまざまな貢ぎ物がとどいたが、おれが涙を流して感動したのはガルガからの貢ぎ物だ。


なんと、モウモウのつがい、二十組である。

しかも、モウモウはおれの予想通り、ほとんど牛クリソツな動物であった。


これで肉もだが、牛乳など乳製品の生産が可能になるだろう。

リンレイさんの親父さんの入れ知恵だろうが、ほんと有難い。


しかし、おれが女になって男三人と結婚。

さらに、妊娠かぁ、正直、勇者として召喚された事自体、いまだに現実感が薄いのに…………はぁ、万が一、ここで元の世界に帰ったらおれ、なんて家族に説明するんだ?


兄ちゃん、結婚したんだ。

ほら、旦那が三人でお腹に旦那達の子がいるの、家族が一気に増えるから宜しくね?

え、良い奥さんもらって兄ちゃんが一家の大黒柱になって、結婚式に呼んでくれるって言ってたよね?

しょうがないじゃん、兄ちゃんが奥さんになっちゃったから。

これから、出産、育児に家事に頑張るからね?

とりあえず兄ちゃん、区役所に母子健康手帳を受け取りにいかないと、は!その為にはまずはこっちで医療機関に行って医師の診断を

受けないといけないよね?

あ、健康保険証はどうすればいいんだ?

そもそも性別変わってるから、戸籍を直さないといけないし、本人と立証する事ってできるのか?

それに、旦那たちパスポートないから出入国管理法に引っ掛かるやん。

難民認定してもらうか?

おい、あの世界に存在しない国名で難民認定できるのか?

不味い、おれ、旦那たちと捕まるじゃん。


なんだ、おれ、もう社会的にも向こうに戻れないんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る