第37話 肉、肉、肉、レモン、あれ?
モウーッ、おっと、久しぶりの牛さんの幻覚だ。
また、牛丼お手玉か?ん?おい、そ、それは松阪牛の特撰ギフト五万円セットだと?
く、おれが元の世界でも食った事がない松阪牛、それの特撰だと!
き、貴様、それをどうするつもりだ?!
は?牛がニッコリと笑い、おれの方に向けてそのセットを渡してきた。
ま、まさか、おれにそれをくれるのか?
牛は、なぜか○ンダイのエプロンをしていたが、おれは気づかない振りをした。
それよりも、おれは、かつて夢にまで見た松阪牛を夢の中とはいえ、食えるのだ?
なんか変だが、とにかく味わいたい。
おれは、ギフトセットのフタを開けた。
中は大輔だった。
大輔1cmフィギュア、5万個特撰ギフトセット。
図ったな、
牛は、君がいけないのだよ的な顔をして、消えていった。
チクセウ
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「は?!」
翌朝、おれは左に金髪筋肉、右に銀髪筋肉に押し潰されていた。
いや、肉は肉でも筋肉はいらん。
おかしい?!確かに寝る時は1人だったのに、ドアに鍵を掛けたのに、この半裸の二匹の強姦魔はどうやって中に入ったのか。
おれのネグリジェがヨレヨレで、あられもない姿になっていた。
そうか!失念していた。
この城も、ガルガと同じく隠し通路だらけだったということを!
ぬかったわ。
おれは、二匹をベッドから蹴りだすと、すぐにリンレイさんの部屋に向かった。
「お肉、ですか?そうですねぇ、この国の食べ物は食と叡知の女神様のお野菜しかありませんですものね。ですが、お肉の取れる動物は北部の山にいかないと手に入らないのです」
「北部の山、そこにいけば肉が手に入るのか?」
「モウモウが山にいるので、皆はこれを捕まえて食しています」
「モウモウ?」
「角があって、そうですねぇ、大人三人分くらいの大きさでしょうか。毛むくじゃらですね」
それは、ほぼ牛では?
「この国からですと、馬車で60回日が昇りますと着きますね」
馬車で2ヶ月って、おれ、尻が石になる自信がある。
だめか、肉は遠いや。
「干し肉なら、商会で扱ってますが」
「それだ!やった、やっとベジタリアンを止められる!」
「ベジたりあん??」
「い、いや、それでリンレイさん、商会から取り寄せお願いしたいんだけど」
「はい、わかりました。また、新しい食を神託されるのですね」
いや、リンレイさん、女神信仰止めません?
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「モモ、その、なんだな、そのレーモンだったか、お前、よく丸ごと食べられるな?」
「ん、なんか、最近、食味が変わったというか?無性にこれが欲しくなるんだよね」
あれから、リンレイさんが干し肉を三日で調達してくれたので、早速、試食会を開いたのだ。
メンバーは、王妃さん、メリダさん、リンゴちゃん、リンレイさん、七の姫だったメイちゃん、八の姫だったマイちゃん、九の姫だったユメちゃん。
当然、今回の料理は肉入りカレーだ。
やはり、カレーは肉入りでしょ。
それで、皆に試食をふるまって、結論から言うと大好評だった。
王妃さん、なんか泣いて喜んでたし、末っ子三姉妹はおかわりしてました。
やっぱり、肉は皆、久しぶりだったんだね。
干し肉だから、ちょと固かったけど元がビーフジャーキーみたいで、煮込んだらそれなりに柔らかかったから三姉妹も大喜びだった。
ただ、ガルガでも干し肉は貴重だったので、流通改革が必要だね。
やはり、どこかで産地に行きたいな。
現地でステーキを、じゅる、い、いや、モウモウをこの国に連れてきて、モウモウ牧場を作れないかとか、干し肉の加工方法の改善とか、いろいろ提案したい。
試食会は果物盛り合わせで終わったんだけど、メギウスがレモンを丸ごと入れて不評だったので、勿体無いからおれが回収したんだ。
それで、メリダさんとお茶しながら、お茶受けがわりに食べていたら、結構いけるんだな、これが。
それと、好物の肉入りカレーだったが試食中は、なんか、すぐお腹が空かなくなったのであまり、食べていない。
だからか、自分でも不思議なくらい身体がレモンを欲しているのだ。
「モモ、その辺にしないか。見ていてこっちまで口が酸っぱくなりそうなんだが」
「ん~っ、なんでだ?自分でも好物ってわけでもないんだが、食べられちゃうんだな、う、?!」
なんだ?急に吐き気がする?!
「おい?どうした?!口を押さえて?モモ?、モモ?!!」
おれの視界は、そのまま暗転した。
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