ガルガ王国 編

第22話 ガルガ王国

その後、ベッド下の隠し扉から一階の客間に移動できたおれとカイエンは、さらに、別の隠し扉から地下通路を通って、城の外壁の外に出ることが出来た。やったぜ!


「脱出成功!万歳!カイエンちゃん、愛してるーっ!」


「ば、ばか?!!だ、抱きつくな!、なにを浮かれている?まだ、1つ目の城壁を出れただけだぞ」


お、真っ赤になっちゃって、うぶだね~っ、まだまだ、お子ちゃまだよ。


「はは~ん、赤くなってるーっ、可愛いーんだねって、1つ目?」


「そうだ、3つあるうちの1つだ。なんだ?入城する時に見ただろう。なんで知らないんだ?」


「ああ、それは、お前の兄貴やストーカー、あと強姦魔に囲まれて」


「ストーカー?はわからないが、強姦魔?!そんな奴に囲まれていただと??!兄上は何をしていたんだ?ソイツの名前はなんて名なんだ?」


「あ~、なまえ、名前か?」


あれ?強姦が名字で魔が名前だ???


「ま?」


「ま???」


「あ?いや、王子?」


「オウジ?それがソイツの名前か」


「たぶん?」


「なんで疑問系なんだ?!」



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◆ベルン視点


ベルン執務室

「すまない、二人とも」


「いえ、ベルン殿。これは、あまりにも相手が、悪過ぎます」


「ガルガ王国ですか、キハロスでもよく難癖を付けられたものです。兄上が言っていました?、くしゅん!」


「ジーナス、風邪か?」


「いえ、おかしいな?大丈夫です」


俺は、二人を巻き込む為に全てを明かした。

この二人は同じモモの夫になる者、しかも湖を囲む二国の王太子と第三王子だ。

一国で対処出来なくとも、三国ならあの国に対抗できる。

正直、もしガルガ王国がこのカイオス王国に戦争を仕掛けてきたら、成す術もなく飲み込まれるだろう。

すでに、そこまでの国力差がある。


「ベルン、我々を頼って下さい。ガルガ王国がモモを狙っているのなら、同じ夫として全力で妻を守ります」


「私とて同じ、メテルナ王国としてもモモは国母、ガルガの魔の手から妻を守るのは夫として当然です」


「すまない、二人とも。それで今後の予定だが」


トントン、「殿下?アーノルドです。宜しいでしょうか?」


「どうした?まだ、会議の途中だが」


「それが、お茶の時間にメイドが乙女の部屋を尋ねたのですが、ドアに施錠してあるのに乙女の姿が部屋に見当たらないのです」


「「「?!!」」」


俺達は、顔を見合わせて、慌てて豊穣の乙女の部屋に向かった。



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「なあ?何時までここに居るんだ?」


キラキラ睨み男子カイエンとおれは、二つ目の城壁を越えたところで立ち往生している。

理由は、三つ目の城壁の隠し通路に向かう途中で、急に沢山の兵士達が現れたからだ。

今は、二つ目の城壁の隠し通路出口付近で身を潜めている。


「これは、バレたか?!」


「ええーっ、困るよ!また、お前の兄貴に仕置きされる!」


「し、仕置き?一体どんな仕置きを!?」


パカンッ、「あ、痛?!」


おれは、ジャンプしてキラキラ睨み男子の頭を叩いてやった。

背が高いんだよ、全く!


「こら!子供が変な想像するんじゃない」


「子供?子供じゃない!ガキのお前が言うな!」


「アホッ、高校生の癖に生意気いうな」


パカンッ「痛?!コーコーセイ??ってなんだ?!」


兵士「人の声が聞こえた!?誰かいるのか?」


「ヤバ!……………」、「………………」


兵士「気のせいか?」


ザッ、ザッ、ザッ………


『ふぅっ、どうやら行ったらしい』


おれは、隠し扉から頭だけだして確認した。


『お前のせいで、見つかるとこだったじゃないか!』


『大声を上げたのはそっち、ほら、兵士が居なくなったよ。行こ!』


おれ達はついに、三つ目の城壁下の隠し通路入り口に辿りついた。



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◆ベルン視点


「床が動いた形跡があります。このベッド下の隠し扉が動いたのは、ほぼ、間違いないかと」


アーノルド、流石だ。

部屋に入って直ぐに、床の違和感に気づくとは。

モモが部屋から出たルートが知れたが、これをモモが見つけられる事は考えにくい。


「これは、手引きした者がいるな」


「さようですね、この隠し扉は我々でも把握していない扉、余程、城の構造に精通していなければ知り得ない場所です」


本来、隠し通路は王族脱出用、王族以外知り得ない隠し扉も多い。

ここは、その内の一つだ。


「取り敢えず、兵士を全ての城壁に出し不審な人間は全部捕まえさせよ」


「は、ただちに手配いたします」


モモ、逃がさん。



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「これは?」


「ローブだ、いつまでもドレスで居るわけにいかないだろ」


「なら、ズボンと上着もくれ。できれば男用がいい」


「はぁ?ガキが着れるサイズが有るわけないだろう?!」


おれは、キラキラ睨み男子に連れられて、城から少し離れたところにある屋敷にいる。

最後の隠し通路の終点が、この屋敷だったのだ。

キラキラ睨み男子の話では、ここでガルガ王国に手引きしてくれる人物と会う予定になってるとの事だ。


「仕方ない、ローブで我慢してやる。それで?手引きしてくれる人は何時くるんだ?」


「間もなくだ。今日中に国を出る」


「随分、手際がいいんだな」


「逃げたいんだろ?余計な事は考えるな」


「………」


ま、いいや。

ちょっと心配だが、危なそうなら途中で逃げればいいし。


ヒヒィーンッ、ガラガラガラ


「馬車が到着したようだ、行くぞ」


「ああ」


ローブを深く被り直して屋敷の玄関に向かうと、玄関にデップリとしたチョビひげのこの世界では珍しい背が低めのおやじが立っていた。



「おお、その娘が豊穣の乙女ですかな。カイエン第五王子どの」

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