第19話 料理

重い、重い、きついなぁ、完全に巻き込まれたな。

王家の責務か、たまらんな。

いずれ、ろーちゃんもそんな運命なのか?


「メリダはよく、カイエンを可愛がっていた。カイエンもメリダに懐いていた。だから、メリダへの輿入れを強硬した俺が、結婚相手を連れてきた事が許せないのだ」


こら!お前、だれが結婚相手だ!

コイツ、さらっとおれの事、流しやがったな。


ぐ~っ、あかん!もうガソリン切れだ!

ビスビスケット、食い損ねてたわ。


「只今、昼食をお持ちしました」


おお、ナイスタイミング!

メイドちゃん、サンキュー?ん???!


「メイドさん?あの、これはスープですか?」


「はい、さようですね。野草たっぷりスープです」


うむ、なるほど。

おれは出されたものは、板さんに悪いから食べないという選択肢はない。

ないんだがな、ん~っ。

と、おれが皿をみていると痴漢天使が話てくる。


「どうした?なぜ、皿を睨んでいる」


「あ、いや、思ったよりお腹、空いてないかなーっ、なんて」


ぐ~っ、おい、おれの腹!なんで今鳴る!


「腹、鳴ってるな」


「…………食う…」


おそらくシェフは、彩りで選んだのだろう。赤にこだわりがあるようだ。

スープの具材は以下の通り、ちなみに塩スープだ。


人参

赤ピーマン(おれの嫌いな奴)

トマト

スイカ(外皮無し)

スイカの種

リンゴの皮

鷹の爪(秘密結社じゃない方)


上からトマトまでは赦そう。

だが、スイカとリンゴの皮は赦せん。

なぜ、スイカの種を胡麻のように使う?

鷹の爪を主菜にするな!死ぬぞ。


「おもしろい味だな」


いや痴漢天使、これ、その評価なの?

確かにおもしろい味だろうよ。


「身体が熱くなりますね」


強姦魔、無理するな、死ぬぞ。


「刺激的な味ですね」


ストーカー、その評価は多分正しい。

だからお前も無理するな。


さて、ほかの料理はと、これはゴーヤとのあえものか?

このシェフ、かなりの辛党でトロピカルなのか?

こっちは、バナナとハバネロか、味覚が爆発だな。

これは、米か?茹でたカボチャに固い米を振りかけて、なにを目指してるんだ?

おれは、ため息をつくと米を払ってカボチャを口に入れた。

やはり、茹でただけか。


「メイドさん?シェフはこの料理のレシピをどこで学んだの?」


「なにぶん、すべての野草が初めて使うものですから、自分で考案したのだと」


そういう事か、そりゃそうだよな。

おれの世界の野菜だからな。

おれは少し考えたあと、メイドに言った。


「シェフに会いに厨房にいきたい、案内してくれる?」


「却下だ」


痴漢天使がおれを睨んで言った。


「なぜだ、厨房行くだけだぞ」


「シェフは男だ」


おい、だからなんだ?


「野草の特徴や、その野草にあったレシピを教えたいだけだぞ?」


「俺がいる時にここに呼ぶ。今後は一人で俺達以外の男に会うのは禁止だ」


なにを!くそぉ、この俺様野郎め。

しょうがない。


「メイドさん、野草の特徴とそれに合ったレシピを幾つか書き出すから、あとで筆記用具を持ってきてもらえる?」


「わかりました」


「これはこれで美味しいと思うのですが」


強姦魔よ、貴様の味覚は異常だと気づけよ。



◆◆◆



翌日、ようやく俺のところにスマホが戻った。

あれからおれは、部屋の外に出ていない。

メイドにレシピは渡せたので、次回から料理はマトモになるだろう。


今日、おれの部屋のベッドが、ばかでかいトリプルベッドに変えられた。

恐怖しか感じない。

奴ら、今日からおれの部屋、いっしょのベッドで寝るつもりなのか?!

ヤバい、早く逃げ出さないとヤられる!


ピロンッ、お、久方ぶりにスマホがなったな!


「おい、聞こえるか?助けてくれ!」


(どうしたのだ、特に危険は感じないが?)


「は?、なんで頭の中に返事がくるんだ?!」


(具現化する力がなくなったのだ、もはやスマホだったか?この中のみでしか存在できん)


ん、?前に長ったらしいいらん情報が頭に流れた事があったが、あれも、コイツのせいじゃないだろうな!?


(そうだ。試験的にスマホとお前の脳を繋いだ。電波だったか?お前の世界の知識を借りて、お前の魔力を使って似た形のものを構築した。)


「おい?!おれの考えを読めるのか?ヤメロ」


(安心しろ、お前が言葉にしようとする表層の意識しか読み取れん。それも、スマホにお前の魔力を充電だったか?その間だけ繋がりが持てる)


「わかった、なら、おれは、ここから逃げたいんだ。どこか、安全に隠れて暮らせる場所はないか?それと、ここから逃げる方法を探してくれ」


(なぜだ?三人ともお前との相性は抜群だぞ)


「なんの話しだ?」


(まあいい、残念だがお前にとってもっとも安全な場所は、彼らとここにいる事だ)


「おい、おれにはここが、もっとも危険なんだが!」


(豊穣の乙女だったか、近隣諸国はお前を求めて動き始めているぞ。捕まれば、国によっては奴隷のように使われる恐れがある。そうなってはお前の命が危険に晒される。やっとの思いで呼び寄せたお前を、むざむざ失いたくはない)


「痴漢天使のせいか!くそ、もういい」


こうなったら、男装でもなんでもして姿を眩ますしかない。

まずは、この部屋から出ねばなるまい。

おれは、ドアノブを捻ったが施錠されている。

くそ、窓はどうだ?


「どちらかにお出かけですか?」


「うわああっ???!」


ま、まただ、また突如、背後にストーカーが現れた?!


「き、貴様、どこから湧いてでた?!ドアは施錠されてるだろう!まさか、お前は本当に霊なのか?」


うう、もしコイツが背後霊ならもう逃げられない。


「霊?言っている意味はわかりませんが、私の名前はラーンです」


「だから、どこからこの部屋に入ったんだ?」


「ああ、それなら」


おもむろに奴は、壁際の1枚の絵を上に上げた。


ガコンッ、音がして登り階段が現れた?は?


「私の部屋は三階ですが、隠し階段ですぐこの部屋に駆けつけられるのです」


なんだと?!


「まさか、ほかの二人も?」


「はい、ほら、このように左右の部屋とも隠し扉で繋がっております」


ガコンッ、ガコンッ、は?左右の壁の一部がスライドして扉が現れた?!


「毎晩、私達は貴女の寝顔を見ながら警護しているのです」


「…………………は?」


「間もなく夫婦になるのです。出来るだけ貴女の癖や仕草を事前に知っておきたいし、万が一があります。何処ぞの不心得者が貴女を襲う為に、この部屋に侵入するかもしれない。その為の隠し通路なのです」


「ど」


「ど?」


「何処ぞの不心得者は貴様だーっ!!」

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