第17話 名前

城に帰ったおれは、身支度を直して謁見の間に行く準備をさせられた。

まあ、別に王様に会わんでよかったが、ろーちゃんの件がある。

会って一言、言っておきたい。


身支度については、痴漢天使が嫌がるおれを無視して、無理矢理ドレスを着せやがった。

もちろん、着付け補助はメイドだ。

メイド服着た男じゃないからな。


着付けが終わった頃、痴漢天使、強姦魔、ストーカーが部屋に入ってきた。

トリオめ、目を丸くして驚くな。

こっち、無理矢理着付けさせられて腹が立ってんだ。


ついでに、腹も減ってるぞ。

スマホは何処だ?ああ?!さっき洗いますねってメイドが持って行った服の中だ。

ヤバい!おれはスカートをたくしあげ、トリオの横を抜けて「まて、何処へ行く?」


いけなかった。

痴漢天使に、腕を掴まれたからだ。

事情を話したら、後で持って来てくれるとの事だ。

スマホについては、説明が面倒なので❪四角い箱❫で通した。


それで謁見の間に向かうと思いきや、痴漢天使がおれの名前が知りたいと、聞いてきた。

いや、あんたら三人で三つの二つ名で呼んでるやん。

いまさらなんだけど、あ、おれもコイツら、名前で呼んだ事ないわ。

犯罪名で呼んでるな、だからっておれを❪カルト教教祖❫って呼ぶなよ。


けどなぁ、教えるのは構わんけどなぁ


「呼べない?どういう事だ?」


そうなるよな、はぁ、説明しんどい、痴漢天使が疑いの目でおれを見る。

うう、嘘じゃないよ。


「おれの名前は、桃山 源一郎だ」


「モモ▶▤ ▶◆▤□▩◆?」


「違う、違う、桃▪山▪源▪一▪郎」


「モモ▪▶▤▪▶◆▪▤□▪▩◆?」


「違ーーう!やっぱりこっちの人は、日本語が発音出来ないよ。神殿長の爺さんがそうだった」


「なら、お前の名前はモモな」


痴漢天使がいいやがった。


「いや、それはよせ!勇者がいい」


「私も、可愛い名前だと思います」


強姦魔め、裏切り者!


「私も、素晴らしいお名前と思います」


ストーカー、お前もか。



◆◆◆



謁見の間に入ると、正面に王様、王妃の年配のカップル?

王様、トランプのキングみたいな服、王妃さんもクイーンだ。

そこは、キハロス王もそうだったからな。

しかし、王はイケオジなのに王妃さんは日本の実家の隣家のオバちゃんそっくりだな。

特に、ふくよかで人畜無害そうな感じ。


おれから見て右手に、4人のキラキラ男子。

イケメンはどーでもいいわ、見飽きた。


左手に、ろーちゃんと妹ちゃんかな?ちっちゃい女の子が3人、やっぱり女の子は王様似だな。

これはイケメン王様に感謝だ、カワイイ。


赤絨毯の左右に近衛兵か、赤絨毯に赤軍服は目に痛いな。

しかし、中世ヨーロッパぽい城の謁見の間って、どこも壁まで赤反物を上から垂らして赤の乱用が多いな。

まるで、紅白幕みたいな使い方か?

(ちなみに紅白の由来は、源平合戦に赤と白の旗印に別れて戦った事が由来しているとの説が有力、 以来、対抗する2つの組を表す意味で定着したのではと言われています。 次に、めでたい、お祝い、縁起がよい、といった意味でも使用されています。この説明、役に立ちましたか?)


なんだ?こないだから○ィキペディアみたいな、どーでもいい情報が頭に浮かぶんだが?

(…)


「どうした?間もなく王の前だぞ。なにを浮かない顔をしている?」


痴漢天使が、なんか心配して聞いてきた?

珍しいな、いつも俺様なのに。


「別に、いつも通り」


「そうか、ならいい」


なんか、おれの顔をじっと見つめてくるんですが、心はトキメキ……ませんよ。



「ベルン只今、戻りました」


「うむ、よくぞ戻った。それでその者が?」


王が発言し、おれの方を見た。


「これは、実りの種を我に与え、我が国を救済した豊穣の乙女、モモと申します」


痴漢天使がクイッと、おれに振った。

は~っ、仕方ないか。


「モモと申します」


おれはカーテシーをした。

習ったわけではないが、討伐パーティの時の女性のやりようを覚えていただけだ。

おい、痴漢天使!そこまで期待してなかったみたいな顔、するな。


「ほほう、これはまた、礼儀正しく美しい良い娘だ」


「父上、このベルンがこの豊穣の乙女、モモと婚儀をあげる旨、ご報告いたします」


いやだよ、その前に逃げるよーだ。


「おお、そうか、ついに身を固めるか」


「まあ、あれほど女嫌いだったあなたが?やはり豊穣の乙女には心を奪われたのですね、母は安心しました。あなたも普通の男子だったと」


女嫌いだった?この俺様触り魔が?そんなばかな。

おい、また、おれを見つめるな、なんか、胸が熱い?


「初めてなんです。これほど欲しいと思った娘は。俺は人生の全てをかけても、モモと添い遂げたいと思っています」


はぁ?!な、何言って??


「モモさん」


「は、はいぃ?!」


う、王妃さんに呼ばれたよ。


「こんなガサツで乱暴者ですが、大の恥ずかしがり屋で、なかなか自分を見せたがらない。本当は、優しい家族思いの良い息子です。どうか、よろしくお願いいたします」


「は、はあ」


「母上、勘弁してください」


おい、なに真っ赤になって、耳まで赤い?こいつが、ここまで恥ずかしがるなんてな。

へぇ~、カワイイとこあるんだ。


「おい、何見てんだ」


「いや、お前の恥ずかしがってるとこ」


「ば、べつに恥ずかしがってない」


明後日の方、向いちゃってら。


「して、後ろのお二方は?」


王が、強姦魔とストーカーを指差した。

二人がおれの横に並ぶ。

強姦魔がおれの肩に手を乗せ、ストーカーがおれの左手を取った。

暑苦しいやい。


「モモの第二夫、キハロス王国第三王子 、ジーナス▪フォン▪キハロスです」


「モモの第三夫、メテルナ王国王太子 、ラーン▪フォン▪メテルナ です」


「なんと、これはこれは、素晴らしき事かな。湖の近隣三国の王族が、一人の女性を娶るとは、これほどの祝事があろうか。まさに、豊穣の乙女よ」


いや~、変な褒められ方されてるんだけど、おれがビッチじゃないから。

コイツらが、勝手にくっついてきたんだから。


「俺の弟達だ」


痴漢天使が、きらきら男子を紹介する。

手前から、おれの手に順番にキスをしていく。

いらんって


「第二王子ハンスです」、「第三王子ロキだ」、「第四王子ルーデウスです」


「よ、よろしく」


皆して白い歯出して爽やかに笑うな、イケメンオーラ満載や、歯みがき粉のCMにしか見えないぞ。


「お母様、モモお姉様は本当に素晴らしい女性なんです。私にも、良くしてくれて」


「まあ、六の姫、もう仲良しになったのですか」


「はい、ね、モモお姉様」


「あ、そ、そうだね」


「良かったですね、六の姫」


「はい、それでねモモお姉様、妹達を紹介したいの」


「ああ、その子達?」


「はい、ほら、お出で」


もじもじしながら五歳位の女の子、三人。

顔がそっくりだ、三つ子だな。


「この子達の母親は、産後の肥立ちが悪くて亡くなったの。だから、私とお母様で育てたのよ。はい、挨拶しなさい」


「七の姫」、「ハの姫です」、「九の姫です」


「はい、こんにちは。え~と、モモだよ。よろしくな」


「また、後で伺いますね」


ろーちゃんが妹達を連れて、席に戻っていく。

そうだ、このタイミングで言わないと!


「王様、お願があります」


「何かな、豊穣の乙女よ」


「おい?!」


痴漢天使が焦ってやがる、ここで言わないで何処で言うんだ。

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