第9話 野草

いぶ?胃部?医部?って何?

わからん??


「竜王の?」


「それは、羽生だ」


「噛まれると死ぬ?」


「それはハブだ」


「158kの速球?」


「それは、伊良部だ。1文字増えてるぞ。まあいい、相手もあることだしな」


??????


「我はしばらく眠る。ビスケットと種は出る様にしておく」


「待ってくれ?!まだ、いろいろ聞きたい事が!」


「本来、我は残滓。普通ならとうに消えておる。消えずにいられるのは、そのスマホとかいう箱のお陰よ」


光の玉はスゥーッとスマホに近づく。


「それではな」


スマホの画面に、吸い込まれる様に消えて行った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「やってくれたな、討伐成功で各国から討伐支援物資の打ち切り連絡が来ているぞ」


ベンツェン兄上が何故か顔を真っ赤にして怒っている?一体、どうしたというのか?


「ベンツェン兄上、如何されたのです?勇者様のお陰でようやく暗黒竜が討伐され、世界が討伐成功の祭事の最中です。討伐が成功したからには支援物資の打ち切りは至極当然の事ではないですか?」


ベンツェン兄上は、私に書類を投げて寄越してきた。

国の各地の農業生産に関する、直近の情報資料だ。


「暗黒竜が倒されてすでに三の月3ヶ月。国家の食糧自給率は改善するどころか、悪化の一途をたどっている。頼みの綱の支援物資がなくなれば、食糧は高騰し悪くすれば内乱になるぞ!カイン」


私の名前は、カイン▪フォン▪キハロス。

このキハロス王国の第二王子だ。

キハロス王国は世界で唯一、暗黒竜を討伐した勇者様を召喚した国として、各国から称賛を受けており私は鼻が高い。


だが、この国の次期王になるベンツェン兄上が今日は朝から機嫌が悪い。

一体何事かと来てみれば、支援物資の打ち切りと食糧自給率の低下?国はいつからこんな状態だったのか?


正直、ベンツェン兄上の補佐役だったジーナスが国内視察と称して非公式に勇者様と旅に出て以来、私が代わりに補佐役を務めているが、いきなりの問題事で先行きは厳しい。


「こんな事なら勇者など、召喚するのではなかった。とんだ厄災だ」


「兄上?!それは言い過ぎでは?」


「言い過ぎなものか、これで我が国はまた他国に物資を分けて貰う代わりに、成人女性を差し出さなければならん。こんな事なら、勇者が女だったら良かったのだ。勇者一人で済んだのにな」


我ら、召喚に立ち会って勇者が男性であることは確認済み、まあ、暴走したジーナスのお陰でもあるが。


しかし、本当に勇者様は女の様に華奢で顔立ちも女顔だったな。

まあ、歳が私より9歳も上だったし、よく見たらそれ相応な肌、ツヤだったし。


と、私は資料の中である一枚の資料が目に止まった。

暗黒竜が住み着いていた湖に近い、辺境の町イデア。

暗黒竜が住み着つく前までは、森と湖の狩猟を主な生業とした町だったところだ。

暗黒竜のせいかどうかわからんが、暗黒竜が湖に住み着いてから、狩猟対象の動植物が居なくなりすっかり錆びれてしまったと聞いていた。

討伐後も変化はなかったと聞いていたが、これはどういう事だろう?


「兄上?辺境の町イデアの資料、ご覧になりましたか」


「なんだ?知らんな、何かあったのか?」


「森での野草の採取で、取り引き量が一気に増えております。前月がほとんど取り引き量が0だったのに、です」


「?!それは」


兄上は私から資料を引ったくると、食い入るように資料に釘付けになっていた。

だが、思いついたように立ち上がると、


「イデアだ、馬だ、馬を引け!」


「あ、兄上?」


「ただちにイデアに向かう!お前には留守を頼む」




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ジーナス視点


かつて勇者様と暗黒竜討伐途中で立ち寄った町や村を周り、勇者様の情報を探して回ったが、湖近くのイデアの町以来、勇者様の消息が途絶えてしまった。


とりあえず城には、まだ勇者様の失踪を伝えられないと、勇者様は自分と国内の視察旅行をしていると嘘の報告を行っている。


勇者様は異世界から来られて、こちらの地理に疎いはず、そう思って討伐工程をなぞって捜してきたが、もっと他の地域も捜し方が良いのだろうか。


勇者様、あんまりです。

これ程に、あなた様をお慕い申し上げているのに。

許せない、私の気持ちを弄ぶなんて。

もし、あなた様を見つける事ができましたら、二度と離れられないように首輪と鎖を付けましょう。


通行人A「おい、イデアから大量の野草が入荷したんだが、みんな見た事のない野草なんだ」


通行人B「へぇ、じゃあ、不味いんじゃないか?」


通行人A「それが、めちゃくちゃ美味で、種類も豊富。いろんな味も楽しめるらしい」


通行人B「へぇ、ならすぐ買いに行かなくちゃ?!」



イデア? 




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ブルッ、「あれ?なんか寒気がしたが風邪でもひいたかな?少し用心して今日は早く寝ようかな」


そう言いながら、地面のつるを引っ張れば、たちまちでてくるサツマイモ、おお、紅はるか、じゃん。

まさに、イモズル式。

甘いよね、でも、そだて易く安定の収穫量を誇り、ほどほどな味は、紅あずま、だよ。

一番、家庭菜園向けのサツマイモさ。


おれは、大樹のまん前にある大量な各、野菜を少しずつ収穫して、大樹の中に仕舞う。


「凄いよ、何故か、サトウキビまで生えてるだよ。砂糖が手に入ったじゃん」


本当、春、夏、秋、冬、関係なく各、季節野菜などが同じ場所に出鱈目に生えてるんだ。

光の玉曰く、おれの魔力のせいらしいけど。


「まずはサツマイモ▪スイーツかな」


あれからおれは、元の世界への帰還は完全に諦めた。


だが、だからこそ自分らしく生きる為に一生、女である事は隠していく。

この世界では女は、子供を産ませる為の道具でしかない。



誰が監禁人生を望むものか。

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