第8話 野菜野菜野菜、え?

その日、おれは口を開けたまま大樹に戻り、日課のビスケットをスマホから数枚、叩いて出してそのまま寝た。


次の日、おれは日課のビスケットをスマホから数枚、叩いて出してからカウチして湖に行き、日課の顔を洗ってから服を脱いで身体を拭いた。


ザワザワザワ


そして、大樹に戻りカウチして日課のビスケットをスマホから数枚、叩いて出してそのまま寝た。


ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ


ツギノ日、オレハ日課ノ、ビスケットヲ、スマホヲタタイテダシテソノママ寝タ。


ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ

ザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワザワ

(注: 文字数稼ぎではありません、いや、稼ぎです、ごめんなさい)


「………さて、大樹の扉が開けずらくなったな、そろそろ引っ越しを考えるかな」


ピロンッ、おれがそう呟いた時、おれのスマホの音がした。

見るとまた、この国の文字で何故か意味が判るのだが、表示が出た。


「なになに?毎日、健康の為に野菜を食べましょう。野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維など体にとって不可欠な栄養素が豊富に含まれております。実はそれだけではなく、数多くの成分が抗酸化作用を持ち、様々な病気を予防することができます。また、野菜に含まれる食物繊維は 便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかになっています。美容と健康のため、1日3食とりましょう。だと?」


なんだ?農林水産省の回し者か?


「なお、有機栽培農法により化学肥料や農薬等は一切使用しておりません。安心安全がモットーです。ご安心してお召し上がりください?」


おれが撒いた種から出来た野菜だろ、おれが使用しておりませんが?ってこの世界に化学肥料も農薬もないだろ!そーゆう事じゃなくて!


おれは大樹のドアの隙間から、外を見た。

大樹の周りは、あの耕作地から伸びてきたと思われるカボチャや絹さやエンドウ豆など、つるもの野菜が縦横無尽に生え絡まっていた。


「現実に異常成長する野菜なんか、気持ち悪くて食えるか!」


桃太郎は食ったけど、それを見る前だったし、それを言ったらスマホから出るビスケットだって飢餓状態でなかったら食わんかったな。


ピロンッ、また、なんか出た。


「貴女のせいです??」


なにが?

意味判らん、そもそもこのスマホの向こうにだれがいるんだ?

農林水産大臣か?


ピロンッ「農林水産大臣ではありません、だと?!」


こいつ、おれの考えている事が判るのか?!

まさかな、おれはじっとスマホを見た。

画面が汗をかいている。

おい、観念しろ。


ポンッ、「うわっ!?」


スマホからなんか出た、なんだ?光の玉?お化けだ?!!

おれはスマホを置いて、壁際に逃げた。

だが、光はおれを追いかけてきた。


「ひぃ!く、くるな、おれは、お化けとピーマンは苦手なんだ!」


光はおれの顔近くにくると、点滅しながら話しだした。


「ピーマン嫌い、もったいない、好き嫌いはいかん、いかん、だから大きくなれない」


「ほっとけ!なんで異世界にまで来て、お化けに馬鹿にされなきゃならない?!」


おれは涙目で答えた。


「我はお化けではない、神の残滓なり」


「か、神?」


「神の残滓、そなたを呼び寄せた者達に力を貸したものなり」


今、なんて言った?!呼び寄せた者って!

それって、この国の王や神殿の連中の事だ?!


「お前がおれがここに来た、諸悪の根元か!!おれを元の世界に帰せ!」


「悪ではない、それと我にそなたを元の世界に帰す力はない」


何?帰す力がない、なら帰す方法を


「帰す方法もない。いかなる神であっても世界の摂理を曲げて上位世界に帰す法は存在しない」


「上位世界?」


「様々な時空は川の流れの如く、上位から下位へ時間と空間、エネルギーの流れの中にある。その流れを遡って物質や生命体を帰す力は例え、神が万全の状態にあったとしても捻出する事は不可能」


何を言っているのか、全く理解出来ない。

おれは、急に怒りが沸き上がるのを止められなかった。


「おれは被害者だ!おれは家族がいて、その家族の生活を支えなければならない。今すぐおれを戻せ!お前はおれを元の世界に戻す責任が有るはずだ」


「我は神ではない。神はそなたを呼び寄せる為、ほとんどの力を使い果たし1000年の眠りについた」


「眠りについた!?じゃあお前は?」


「そなたのサポートとして、神が残した力の一部。神の残滓」


「帰れない?!!だと!」


なら、おれは、おれは、どうすればいい?最初から帰る方法がなかったのか?!

じゃあ、おれはこの先、なにを支えに生きて行けばいいんだ?

すまない、親父おやじ、正彦、由利、兄ちゃんはもう二度と逢えない。

おれは膝をついて、座り込んだ。

ああ、急に視界が歪みだした。

なんでだ、おれはこんなに泣き虫じゃなかったはずだ。


おれはその日、1日泣いて過ごした。



◆◆◆



「おれの力?」


翌日、改めて光の玉と話した。


おれには、強い魔力があるらしい。

おれには使う事は出来ないが、身体から常時溢れているのだ。

その為、おれは無意識に種に魔力を与えていたらしい。

それで異常な成長促進状態に、なってしまったようだ。


なんだ、魔力が有るのに魔法が使えないとは、なんとも中途半端だ。

それと、おれが女になった理由はわからないらしい。

そもそも、暗黒竜が異世界から流れついたやつらしく、詳しい事がわからない。

だから、その病も無くす事が出来なかったのだ。ん?


「暗黒竜を倒したのに、病が無くならない?じゃあ」


「いずれ人間だけでなく、全ての生き物で病が進行する」


「止める方法はないのか?」


「対応策しか取れない」


「対応策?それはどんな事だ?」


「すでに実行し、経過は良好だ」


「?それは良かったな」


光の玉は急におれの方に寄ってきた、なんだ?


「次は貴女の番」


「なんの話だ??」


「異世界の病に対抗できるのは、異世界のものだけ、貴女には本当に申し訳ない」


ズイっと光の玉がおれの近くに、さらに寄ってくる。


「だ、だからなんの話って?!」





「貴女の世界の言葉で表現するなら、貴女にはこの世界の❪イブイヴ❫としての役目をお願いしたい」

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