第4話 湖
神殿からの逃亡から多分、二日目の朝を迎えたはずだ。
正直、逃げ出してきたものの、どこかに伝が有るわけではない。
また、地理にも疎いわけで、全くもって不甲斐ない。
そんな訳でおれが判るのは、討伐行程での道というか、街道というか、湖までの道程ということになる。
なんとか、湖までたどり着ければ暗黒竜の影響で、湖畔に人は住んでいない。
釣りなり、湖畔の森で木の実などを採取すれば、それなりに生活することは可能だろう。
こうみえても、子供時代はボーイスカウトのキャンプ体験でサバイバルは経験者だ。
縄紐の八の字縛りと、飯ごう炊きはできるぞ。
米も飯ごうも、この国にはないが。
しかし、今、湖までの中間の町を歩いているが、なんかやたら視線を感じるのだが?
たしかにすれ違う住民は背の高い男ばかり、おれのようなチビは珍しいのかもな。
まあいい、夜通し歩いてくたくただ。
そろそろ宿を取って休みたい。
幸い、これも討伐のおかげだが、金の使い方は教わり済みだ。
「宿は空いているか?」
ひょうきんそうな宿屋の店主に声をかけたが、店主の目が何故かおれの頭と足元を往復している。
「あ~、空いている。これが鍵だ」
とりあえず、本日の野宿は回避だ。
いまのこの国の季節は、日本の春から夏といったところか。
だから、野宿でも苦にならないがやはり寝るならベットだろう。
部屋に入って鍵をかけ、ベットに飛びこむ。
ち、固いではないか。
城のベットが恋しい、あ、いかんいかん。
おれはなにを思ってるんだ。
とりあえず、今日は疲れた。
あとは、明日にしよう。
おやすみなさい。 ガタッ
ん?なんだ、人がこれから寝ようとしてるのにドアの前でうるさくする奴は?
ガチャッ
!おい、鍵の音だろ、それ!
おれはすかさず机のローブをひったくると、ベットの下に潜りこんだ。
ギィッ、「勇者様?おいでですか」
変態、いや強姦魔の声じゃん?!なぜ、バレた?
「……店主、誰もいないようだが」
「ありゃ?間違って他の部屋に案内したかもしれやせん。こっちでさ」
パタッ、パタッ、バタン
「……………」
店主も町の連中もグルか、道理でおれをじろじろ見ていた訳だ。
まあ、討伐時に立ち寄った町だ。
バレるのは当たり前か。
おれは窓から飛び降りると、町の外に向かって走りだす。
ヤられてたまるか!
それからおれは、街道は使わず、町にも寄らずにただひたすら林や森を湖の方角に歩いた。
そしてついに、湖にたどり着いたのである。
「湖は広いな、大きいな、行ってみたいな、よその国~って改めて見ると本当にでかいな。」
グウ~ッ、うう、気を紛らそうと思ったが駄目だな、余計に腹が減った。
腹と背中がくっつきそうだ。
もう、三日も食事をしていない。
喉もからからだ、でるもんもでない。
これも強姦魔のせいで、町に寄れないからだ。
ヤバい、牛がエプロン着けて牛丼でお手玉してる幻覚が見える。
ところで、○野家と○屋と○き家、あなたが好きなのはどの牛丼?アホか!飢餓状態に選べるか!
しっかし、なんか採取出来ると高を括て森の散策コースでここまで来たが、木の実も無いし動物もいない。
どうなってる?暗黒竜のせいで生態系にも影響があったのか?
うう、弱り目に祟り目とはこの事か、餓死したら本当に祟ってやる!強姦魔め!
とにかく、湖まで行って水を飲みます。
がぶ飲みしたら、お腹いっぱいになるでしょう?牛丼?興味ない、ない、大丈夫、牛さん警戒しないで?取ったりしませんから、え、信用できない?やだな~おれは定食派だから牛丼は頼まないですよ、はい?嘘?いつも特盛頼んでる?御新香とトン汁も?そんなこと
シュパッ、おれの手が牛丼を捉えた、かに見えたが牛があかんべーして消えた。
ちくせう。
とにかく、おれは湖の水でひと息ついたのである。
水腹だよ、タプッタプッ
落ち着いたおれは辺りを見回したが、湖と森だな、鳥もいないし、実が生るような木も見当たらない。
魚は?やたら澄んだ湖だ、結構、湖底まで見えるが魚影は見当たらない。
暗黒竜、お前は何を食って生きてたんだ?霞か?霞が関か?東京2020終わったぞ。
おれは寝転んだ。
「詰んだ~っ」カサッ
ん?なんだ、スマホを入れたズボンのポケットから音がするが?
「なんだこれ?」
取り出したスマホは何故か、電源が入っており画面に魔法陣みたいな待ち受け映像、おまけにいくらボタンを押しても電源が落ちない。
ついにスマホも壊れたか、おれも直ぐ後を追うことになるだろう。
いや、餓死より恥辱を選べば生きられるか。
仕方ない、痛いのは最初だけって、まてまて、やっぱりだめだ。
奴だけじゃないんだ。
しかも皆、絶倫だ。
それで毎晩、3P、4Pって、それに夜だけじゃないかも?!24時間3P、4P………………
同じじゃん!死ぬの同じじゃん!
ガサッ、あれ?スマホが入っていたポケットからまだ音がする??
おれはポケットの中に手を入れる、なんかパラパラしたものが出てきた。
「割れたビスケット?」
おお、天の助け、おれはとにかく口に放り込んだ。
「ああ、生きてて良かった。うまい、うますぎる、埼玉銘菓だ」
いや、本当に美味しい。
飢餓状態で何食っても旨いのかも知れないが、とにかく旨い。
ところで、おれ、ビスケットなんかポケットに入れたっけ?そもそも、いまおれが着ている服はこの国で貰った服だし、この国にビスケットなんか見たことなかったよね?
カラッ
なんだ?今、間違ってスマホを叩いたら乾いた音がしたが?
「ビスケット?」
スマホの側に何故かビスケットが!勿論、速攻で喰ったが。
「まさかな?!」
スマホを叩くとビスケットは一つ、も一つ叩くとビスケットは二つ、こーんな不思議なスマホが欲しい、こーんな不思議なスマホが欲しい?!ってなんじゃこりゃ?
おれはとにかく、ビスケットを全部口に入れてから、考えた。
魔法、魔法だよね?正直、この世界に来て魔法なんて話しに出るだけで一度もそれらしいの見た事なかったんだよね。
ま、いっか。
わからない事でいつまでも悩んでも時間の無駄、前向きに考えよう。
これでとりあえず、食料問題はなんとかなりそうだ。
あとは住居か。
DIY頑張るぞー!
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