第403話 女神の話③
「話は大体分かった。他にも色々聞きたいことは山ほどあるが、先に実務だ。奴等を始末するのに効果的な武器かなんかはないのか? アンタに余裕が無いのは理解したが、せめて地球の武器や兵器を持って来れればもう少し楽に仕事ができたんだぞ?」
『武器、ですか……』
「
『幸三さん達は、空間ごと転移させましたので、身に着けていた武器や周辺の物資もそのままこの世界に持ち込むかたちになっただけです。決してサービスではないのですが……レイさんの場合は肉体から離れた魂を拾い上げたかたちでしたので……それに、武器なら既にお持ちでは?』
「ちっ、……じゃあ『神力』は? 天使化できる時間、エネルギー量が限られてるのを何とかできないのか? 使い切ったら昇天しちまうなんて御免だぞ」
『神力は物質界で容易に生み出せるものではありません。高濃度の魔素で代替できるのもほんの僅かです。先程言いましたように、私にも余裕がない状況ですので……』
「つかえ……ゲフン。……そもそも『神力』って何なんだ?」
『知的生命体の『魂』が輪廻に還り、新たな生命に宿る。その際に発生するエネルギーが『神力』です。物質世界でそれを発生させるのは非常に困難です』
「勇者共はともかく、あのザリオンって天使は、俺が天使化しないと対処は無理だ。奴との闘いでこちらが消耗したら、残りの勇者への対処が後手になる。前の様にガキになっちまったら九条どころじゃなくなるぞ」
『天使ザリオンの対処は問題無いはずです。貴方の鞄に入っている物で無力化できるでしょう』
「鞄の中?」
レイは魔法の鞄の中身を思い浮かべるが、女神が何のことを言っているかが分からなかった。
『伊集院力也から回収した『封天の宝玉』です。現世に顕現した天使を強制的に回収する為の神器でしたが、レイさんを封印する為にザリオンが持ち出し伊集院に渡した物です』
「そういえばそんなことがあったな。何も起こらなかったが」
『そこの始龍のおかげで封印されずに済んだようです。遺憾ながら……』
アリアはレイの腰にある黒刀『魔刃メルギド』、クヅリを見る。
『わっちがいなかったらレイはここにいなかったでありんす。この駄女神』
『くっ!』
『まったく情けないでありんすね~ わっちの方が全然役に立っていんす』
『アナタの方こそ、随分情けない姿ですね。復活しないのですか? ああ、そうでした、復活したらおバカさんになってしまいますからね。さっさと幻界に戻られては?』
『余計なお世話でありんす』
(こいつら知り合いなのか?)
「確かに、女神よりお前の方が役に立ってるな……」
『ほ~ら、わっちの方がそこの駄女神より――』
「だが、それと俺の身体に何かしたのは別問題だ」
『そ、そうです! 私の最高傑作になんてことを――』
「お前は役に立ってないんだから文句を言う資格は無い。いくら余裕が無くったって服ぐらいは用意できたはずだぞ? 素っ裸の無一文で放り出されて素直に仕事に取り掛かっただけでも有難いと思え!」
『うっ!』
『駄女神w』
「お前も煽るな! ったく、どいつもこいつも情報を出し惜しみして俺に後手を踏ませてる自覚あんのか?」
『『……』』
「お前らがどんな関係か知らんが、ちっとは協力して俺の役に立つような
レイ、我慢していたイライラがついに爆発する。
『『ど、どうし――』』
「女神だか始龍だか知らねーが、こっちがちまちま騙し騙しでやり繰りしてんのが分からねーのか? おい、女神! 人に殺しの依頼をするならもっと情報を提供すんのが普通だろーが! 顔と名前だけとか舐めてんのか? なんだあの地図は? 俺が知りてーのは標的の居場所であって、自分がどこにいるかも分からねー世界地図じゃねーんだよ!」
『すみま――』
「それに、クヅリ! あの黒い弓はどうした? あれがありゃ、勇者も一発で消し炭にできたんだぞ? 身体に融合させました? 天使化すれば使えます? 意味ねーよ! なんでいっつも事が終わった後に報告すんだよ!」
『で、でもあれを生身で使えば寿命が――』
「んなモン、どっかのクズに代わりに撃たせりゃいいだろうが!」
『『(……ヒドイ)』』
「天使はあの玉でなんとかできるって話だが、悪魔はどーすんだ?
『レイさんは本来、天使の身体なので『聖剣』を含め、天使の武装を扱えるはずだったのですが……そこの駄龍の所為で……』
「どういうことだ? 聖剣?」
『レイさんの身体は龍の因子を組み込んだ所為で、純粋な天使ではなくなってしまったのです。当初は悪魔の出現など想定してませんでしたので、予定にはありませんでしたが、万一の際には徐々に肉体の封印を解いて『聖剣』をはじめ、天使の武装を発現できたはずなのですが……』
『わっちがいれば聖剣なんていりんせん。レイはわっちのおかげで聖属性と暗黒属性の両方を扱えるんでありんすよ? まあ、どっちも中途半端で純粋な天使や悪魔にはちょっと力不足でありんすが』
「テメー、ブッ殺すぞ?」
…
……
………
「ふーーー 頭が痛くなってきた……」
『大丈夫でありんすか?』
『大丈夫ですか?』
「お前等……まあいい、話を戻す。先ずは悪魔についてだが――」
『申し訳ありません。そろそろ限界の様です。
その言葉を最後に、女神アリアの声は途切れ、意識を失った志摩恭子は床に倒れた。
「あの
『やはり駄女神でありんす』
「駄龍は黙ってろ」
(悪魔の因子? ちっ、志摩恭子には九条が何か仕掛けてやがったのか……それに弓聖が何だ? くそっ、この女から女神の知識を聞き出すまでこいつの始末はできな……ん? 女神の知識? ……まさか、またズレてる知識じゃねーだろーな……どうも、人外の価値観ってヤツは人間とズレてるみたいだからな……)
「……少し頭を冷やすか」
『頭が暑いでありんすか?』
「それがズレてるって言ってんだ」
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