第127話 事件処理
レイとリディーナ、イヴの三人は、迎賓館の離れにある会議室に来ていた。
会議室には、この国の六人の代表達とゼンを含めた衛士達、手錠に繋がれた『魔戦斧隊』の生き残りとリディーナとイヴの装備をくすねた女冒険者の二人、それとジェニーがいた。
「「「なんでジェニーがここに?」」」
「レイさ~ん、リディーナさ~ん、お会いしたかったですぅ~」
「「「……」」」
二、三日で戻ると言われていたレイ達が、森から戻ってきたのはジェニーが捕まってから一週間後だった。その間、暇を持て余したジェニーは、酒を飲みまくり、今現在も酒が抜けておらず、酔っていた。
「レイ殿、一連の事件の詳細がわかったので、報告致します」
白髪白髭のニコラが、酔ってレイ達に手を振るジェニーを無視して口を開いた。
一連の事件の発端は、リディーナ達に絡んだ冒険者達に便乗した『魔戦斧隊』の責任者、ギル・アクス・メルギドの逆恨みによる暴走だった。
ギルは、先代の急死により、若くして代表の座に座ったものの、職人としての実績も、『魔戦斧隊』の一戦力としても特筆した実績がなかったことで、代表達から下に見られ、そのことで功を焦っていたのだという。どこの世界でもありがちな話だったが、地下の古代遺跡を利用して、「力」を得ようとしたことが、代表達の間で問題視された。
地下にある古代遺跡は、二百年前の『勇者』達により、既に攻略され、探索し尽くされており、当時に残された資料によると、そこで「力」を得た『勇者』達は、それを以て、二百年前の『炎古龍バルガン』を討伐したとういうのだ。その「力」というのが何なのかは今も分かっておらず、謎に包まれているということだったが、アクス家に残された資料には「贄を捧げて力を得た」との記述が残っていたらしい。
その資料が本当なら、過去の『勇者』は
「生贄ね……。どうもしっくりこないな…… 」
「どうかしたの?」
レイの呟きにリディーナが尋ねる。
「あの遺跡は軍事施設だ。大方、あの部屋で修行でもして単に力を付けただけなんじゃないか?」
「でも、「贄」を捧げてって記録があるんでしょう?」
「うーん、なんかそんな儀式めいた雰囲気は無かったんだよな……。まあ単なる感想だけど。それに、再度潜ってみたが、別にあの後も何も起こらなかっただろ?」
「そうよね~」
「「「「「……」」」」」
レイ達は、この一週間。森での鍛錬の他に、地下の遺跡にも再度潜っていた。何かお宝でもあるかもしれないと、探索ついでだったのだが、特に何か貴重な品があったわけでもなく、最下層の部屋でも延々と魔物が出現するだけだった。
メルギドの代表達からすれば、二百年前の『勇者』が攻略した遺跡を、簡単に探索してみせたレイ達に驚愕の思いだったが、これまでのレイの実績を考えると、それも当然かと納得もしていた。
「まあ、俺からすれば、遺跡どうこうはどうでもいい。リディーナとイヴを生贄にしようとしたことだけが許せんだけだ。そのきっかけとなった、そこの冒険者についてもどうでもいい。経緯を聞いたが、衛士達に止められなければ、どうせリディーナに始末されてたろうしな」
「「ッ!」」
女冒険者の二人がそれを聞いて青褪める。どこかのお嬢様と思っていたリディーナが、「A等級」以上の冒険者と牢屋で聞かされ、あの場で殺されててもおかしくなかったと、今更ながらに後悔していた。
「そうねぇ。私の
「いやらしい目を向けられました」
リディーナとイヴが二人の女冒険者を見る。
「「ヒッ!」」
「男の方は殺しといたからまあいいだろう。女の方は、この国の法律で裁いてもらって構わない。そこの兵士達もだ。どうせ、命令通りに動いてただけだろう。……ただし」
レイが殺意を乗せた魔力を部屋に放ち、急激に部屋の空気が重くなる。
最近覚えた『闇魔法』の一種で、魔力に感情や意思を込めて周囲や対象に放つ魔法だ。
『魔戦斧隊』の隊員達と、女冒険者が震えて縮こまる。
「次は無い」
「「「「「―――ッ!」」」」」
…
『魔戦斧隊』と女冒険者二人が会議室から連れ出されていった。『魔戦斧隊』は解体。女二人は、地下の炭鉱で一年間の強制労働の刑が下った。
人間の女にはかなり過酷な労働らしいが、殺されるよりはマシだと言えた。レイやリディーナからすれば、あの場で殺しても良かったのだが、ここはドワーフ達の面子を立てた。
それと、ジェニーと言えば、立ったまま寝ていた。
「こいつ、なんでここにいるんだ?」
「「さあ?」」
寝ていたジェニーをとりあえず別室に連れて行き、寝かせておいた。何故ここにいるのか分からなかったが、後で起きたら事情を聞くことにした。
衛士隊のゼンに聞いたところ、なにやらジェニーは俺達を探していたらしい。怪しんだ衛士が捕まえて、今まで牢に入れられていたようだ。俺に確認するまで、自由にすることも出来ずにいたらしいが、地球なら人権侵害もいいとこだ。また何かあればヤバイとでも思ったのだろう、ジェニーが悲惨な待遇だったら何かしら思う所もあったかもしれないが、あの様子を見れば、特に何も言うことはない。
「レイ殿、新しい装備がようやく出来上がったので、これから確認して頂きたいのじゃが」
ニコラの言葉に、俺達三人と代表達は、場所を迎賓館に移した。
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