第38話 聖騎士

 ――『聖騎士ホーリーナイト』の能力スキル――


 その能力は桐生隼人の『勇者』と似た能力で、白金に輝く聖剣と聖鎧、聖盾を能力で生みだせるものの、聖魔法や聖剣技は使えない。聖剣や聖鎧においても、勇者のそれとは性能は劣る。しかし聖盾に関しては、高い魔法防御と物理防御性能を誇る。


 生徒達からは、そんな能力を陰で『勇者の下位互換』と揶揄されながらも、クラスの副担任教師、伊集院力也イジュウインリキヤはその能力に満足し、『聖騎士』という役割ロールに酔っていた。


 …


 オブライオン王国の騎士団と、教会の神殿騎士達の中からした騎士達を引き連れ、伊集院は王都から辺境の村々へ向けて街道を進んでいた。


「お待ちください!」


 後方から、一騎の騎士が伊集院達に近づいてくる。


「お待ちください、伊集院様!」


「んー?」


「ようやく追いつきました。王宮より手紙をお持ちしました」


 教会の神殿騎士が、手紙の入った筒を手に伊集院に近づく。


「わざわざご苦労なことだな。ここまで届けに来るとは……」


「ザック宰相が直接教会に届けられた手紙とのことです。必ず伊集院様にお届けするようにと」


 伊集院は、受け取った親書の封蝋を解いて手紙を読む。


「……この俺に、桐生達の捜索をしろだと?」


 伊集院は静かに腰の剣を抜く。自らの能力で生み出した白金の剣、本人は聖剣と謳っているが『勇者』のそれとは輝きが一段落ちる。


「ふざけるなぁ!」


「ぎゃあああああ」


 いきなり斬りつけられた神殿騎士は、落馬し傷口を抑えて蹲り、伊集院を困惑の表情で見る。


「な、なぜ……?」


「おい、お前達。この男はここへは来なかった。俺達とも会っていない。いいな?」


「「「はっ!」」」


「この手紙と一緒に神殿騎士コイツを燃やしておけ」


「「「了解です、隊長」」」


「なっ…… ちょっ ……やめ ……ぎゃああああああ」


 騎士達の一人が炎の魔法で、親書を届けた神殿騎士に火を放つ。他の騎士達も、当然と言わんばかりでこの異常な行為に何とも思っていないようだ。


「まったく、これから楽しいだというのに、くだらんものを寄越しおって」


「伊集院隊長、今回のは如何いたしますか?」


「うむ。今回も魔物の出現でいいだろう。小鬼ゴブリンの群れが現れた、で行くぞ」


「「「はっ了解です!」」」


 …

 ……

 ………

 

「貴様が村長か?」


「は、はい。騎士様、このような村に一体何の御用でしょうか……?」


「なあに、このあたりに小鬼の群れが出て、村が被害に遭っていると聞いてな。巡回しておるのだ」


「は、はあ。小鬼の群れ……ですか?」


 村の村長は突然現れた騎士達に困惑していた。騎士達はそれぞれ豪華な鎧を纏い、先頭の黒髪の騎士は、眩い白金の鎧に身を包んでいる。とてもこんな辺境の村に小鬼程度の討伐で出てくるような身分ではないであろうと容易に想像できた。


 魔物の討伐と言えば冒険者が中心だ。大規模な討伐には兵士や騎士が出張ることもあるが、そのような大掛かりな魔物の出現は聞いていない。ましてや小鬼程度で騎士が村に巡回なんて聞いたことが無い。


 兵士や騎士などが出てきた場合は、その滞在費用は村の負担となる。その場で負担できない場合は、翌年の税に反映されてしまうのだ。突然ということもあるが、騎士の訪れは村にとってあまり歓迎できるものでは無かった。



「今日はこの村に泊まることとする」


「え? この村にですか?」

 

「何か問題でもあるのか?」


「い、いえ、突然のことで何もご用意がありません。騎士様には失礼になってしまうかと……」


「気にするな。宿として貴様の屋敷を提供しろ。それで構わん。それと、子供達を集めろ。少し教育をしてやる。見込みがあれば王都へ連れて行ってもいい」


「教育?」


「何をしている、早く集めてこい」


「は、はい。畏まりました」


 困惑している村長を他所に、伊集院を含めた騎士達は、ニヤついた表情で村の住人達を見ていた。


 …

 

「ふむ、お前とお前、あとお前だ。これから色々手解きしてやろう」


 伊集院は集められた子供達の中から三人の少年少女を選んで村長宅に連れていく。少年達の親は不安そうにしているが、騎士に逆らえるはずもない。それに聖騎士様から学べる機会などそうあるものではないと自らを言い聞かせて見送った。



 翌朝。


「では、次の村へ向かうということで」


「うむ。この村はハズレだったからな。次に期待しよう」


 伊集院と騎士達が今後の予定を話しながら村長宅から出てきた。


 昨晩、村長宅から子供達が戻らず、朝から子供の両親達が村長宅へ訪れ、不安そうに騎士達を見ている。


「あの……騎士様、子供達は……」


 村長が恐る恐る伊集院に尋ねる。


「ん? ああ、奴らは試練に耐えられなかった。残念だ」


「へ? そ、それは一体どう言う……」



 両親達が慌てて村長宅に駆け込んでいく。


「いやあああああああああぁぁぁ!」

「うわぁあああ!」

「そ、そんな……」


 村長宅から両親達の悲鳴が聞こえる。村長が慌てて中に入ると、血と糞尿に塗れた寝具と、猿轡をされ全裸で息絶えた子供達がいた。身体のあちこちに痣があり、股間は夥しい血と糞尿で汚れている。死に至るまで凌辱され、暴行を受けた子供達。両親達は側で崩れ落ち、泣き叫び嗚咽を漏らしている。


「ちっ、ギャーギャー煩いな……。まったく、一晩も持たんガキ共などどうでもいい。行くぞっ!」


 伊集院は騎士達を引き連れ、村を出ようとする。


「お、お待ち下さい!」


 村長が慌てて伊集院達を呼び止める。


「こ、このような鬼畜な所業、領主様に報告いたしますぞっ!」


「報告だと? そんなものは必要ない。おい、お前達! この村は間に合わなかったようだ。いいな?」


「「「はっ! 了解であります!」」」


 騎士達の顔が下卑た笑みに染まる。騎馬した騎士達が一斉に剣を抜き、村人達に襲い掛かった。


 騎士達は愉悦に浸りながら村人達を屠る。剣や槍で斬りつけ、女子供を犯している者もいる。村は一瞬にして泣き叫ぶ声と悲鳴に包まれ、地獄と化した。


「一体何が…… なんでこんなことを……」


 呆然と立ちすくむ村長。その前には伊集院が剣を手に立っていた。


「この村は小鬼どもに襲われ、我々が来た時にはもう村は全滅していた。そういう設定だよ」


 伊集院は村長の頭から真っ直ぐ聖剣を振り下ろし、村長を両断した。


「最高だ! まったくこの世界は最高だよっ! アッーハッハッハッハッ!」


 伊集院が、騎士団や教会の神殿騎士からのした人間を集めて作った『聖騎士隊』。


 魔物の脅威から守る体で、対価として女子供を要求する一連の行為を、伊集院は「ツアー」と称して度々行ってきた。今回のように反抗された場合は、魔物の所為にして皆殺しにするのも楽しみの一つだった。



 伊集院力也は、高給に釣られ今の学園に雇われたが、副担任とは名ばかりで、ただの警備員扱いだった。柔道で日本代表の強化選手だった伊集院だが、学園には伊集院よりも実績のある教師が既に何人もおり、実績の無い伊集院は小間使いのような扱いだった。生徒からも脳筋と馬鹿にされ、ストレスは溜まる一方だった。夜な夜な繁華街で不良をぶちのめし、不良の女を犯したりしていたが、鬱憤は解消できなかった。


 そんな折にこの世界に召喚され、力を得た。『聖騎士』という能力は、教会を後ろ盾にして、好き勝手できた。自分と同じ性癖をもつ同志も得て、伊集院はこの世界を楽しんでいた。


 子供を犯し、剣で人を斬り殺すことで伊集院は己の欲求を満たしていた。


「クックックッ なんて素晴らしい世界なんだ…… 男でも女でもいい、小さい子をたっぷり犯したい……」

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