指令1 サポ娘(こ)誕生! その名はフーリン

 ここは、あるカクヨム作家の一室。

 ここで今、異様な光景が展開されていた。


 この部屋の主、赤いタイツを着た『ヨムカクオ』とその仲間、ブラックとブルー、そしてちびオレに美女が取り囲まれていたのである。

 その美・・・いや、訂正させてもらおう。美女とお伝えしたが、見間違いだったようだ。彼女は、決して美しいとはいえないお顔。肌の色が、普通の人よりもかなり黄色い。そして、その体格は、ボンッ、ボンッ、ボンッの三拍子、風鈴体型だ。


 彼女の名前は、『りん 風子ふうこ』、あだ名は『フーリン』という。

 年齢は秘密と言いたいところだが、アラサー。カクオの彼女である


 カクオフィルターで見るフーリンの姿は、アニメに出てくる二頭身美少女そのものであった。そして、フーリンフィルターで見るカクオは、アニメによく出てくる、目が線で描かれたイケメンなのだ。


 二人は、十分すぎるほど愛しあっていたし、とても幸せだった。


 ・・・その事実だけでいいじゃあないか!

 なぜ、世の中は、見た目で判断するのか?

 なぜ、見た目が悪いと不幸になると思われているのか?

 見た目だけで、本当に幸せかどうかは、判断できまい。


 見た目がいいからと言って、あなたは幸せですか?

 いや・・・その前に、あなたは、自分の見た目がいいと言えますか・・・? 

 どうなんですか?

 えっ・・・言える? 阿蘇あそっ、ならば、この小説をここで閉じてください。

 その見た目で、勝手にPV1をゲットしてくださいなっと・・・。


 フーリンは、カクオが執筆している小説『魔法少女プリンプリンが黄色いべべ着て今日も無双します!』の主人公『プリンプリン』のモデルである。

 プリンプリンの設定どおり、みかんの食べ過ぎで、その肌は黄色くなっている。

 プリンプリンは、みかんと卵のダイエットで死んでしまい、異世界転生を果たしたが、当の本人は、かろうじて生き残ってしまったのであった。


 今日、フーリンは、カクオのお願いを聞くため・・・つまり、抱かれに来たつもりだったのだ。フーリンは、アラサー・・・乙女ではない。エロ可愛い風鈴なのだ。もちろん、カクオにとってだが・・・。

 カクオのぜつがフーリンの内側を打ちつけるたび、フーリンは風鈴のようにチリンチリンと声をあげる。それの何が悪いと言うのだ?


 だが、フーリンは、カクオの部屋に入るなり、カクオとその他の男たちに取り囲まれたのである。フーリンは、びっくりしてしまった。カクオが・・・四人もいるのだ。そして、内心ほくそ笑んだ。夢にまで見た乱交ができると・・・。


 カクオは、フーリンに簡単な説明を始めた。

 フーリンを主人公にした小説が、ちっとも読まれない。だから、そのPVを増やすため、カクオの分身を生み出し、『もんじゅトリオ』を結成したことを。

 そして、今日、フーリンを呼んだのは・・・乱交するため・・・ではなく、フーリンに『もんじゅトリオ』のサポート役をお願いするためだということを。


 カクオは、フーリンにウィンクしながら・・・その目は髪の毛よりも細いため、ウィンクしたかどうかもわからなかったが・・・言う。


「ほら、よくヒーローものに出てくるじゃん。ヒーローを支えるヒロインがさ。

 あれをフーリンにやってもらいたんだよ。」


 フーリンが、風鈴のようなチリンチリンとした声で答える。


「やるのは・・・いいけど。でも、実際、何をするの? 結局、カクオたちがするこ

 ともよくわからないし・・・ふーちゃん、何すればいいの?」


「えっ・・・えーと。そうだな、当面は、いるだけでいいや。活動する時、呼ぶから

 さ、時間があったら来てよ。それだけでいい。でも、もしかしたら、フーリンに

 しか出来ない特殊任務を課すかもしれない・・・。」


「オッケー・・・わかった。ふーちゃんも、世界中の人に、カクオの小説っていう

 か、ふーちゃんのことを知って欲しいし・・・。」


 フーリンは、ニンマリしながら、カクオの全身をなめるようにジロジロと見る。

 そして、カクオの股間をうっとりした目つきで見ながら、言葉を続けた。


「でもさ、カクオ、恥ずかしくないの? そんなの着てて?

 いくら何でも・・・モッコリしすぎじゃない? ふーちゃん、ヌイて・・・。」


「いや、フーリン。この小説は、そういう小説じゃあないんだ! 残念だけどね。」


「あら・・・そうなの? てっきり、ふーちゃん、そういう小説だと思ってた。

 ところで、ふーちゃんも活動の時、コスチュームを着ないといけないの?」


「いや、特に着る必要はないけど。でも、着たいんだったら、別に止めないよ。」


「そう、だったら、この間のコスプレの格好でもしようかなあ?」


「えっ・・・?

 あれは、やめた方がいいよ。だって、イヴの格好だろ? アダムとイヴのさ。」


「あっ、そっ! じゃあ、ふーちゃん、普通の格好でいい。でも、カクオ・・・。

 カクオ好みのエロコスチュームがあったら、すぐに言ってね!

 それ、着てあげるから!」


「わかった、フーリン。ありがとう。それじゃあ、メンバーを紹介するよ。」


 カクオは、まず、ブラックを紹介するため、ブラックを指さす。


「こいつが・・・ブラック。」


 ブラックが、フーリンに向かって手振りを始める。それを見たフーリンは、驚きの声をあげた。


「うわぁ、ブラックさん、お上手!

 ええ。出来ますよ・・・手話、こんなかんじですけど。」


 手話を交えながら、フーリンが答えた。


「フッ・・・オレより・・・上手だな。」


 ブラックは、低い声で答えた後、再び、フーリンに向かって手話を行う。

 それを見たフーリンは顔を赤らめ、恥ずかしそうになにやら手話で返す。

 ブラックは、カクオの方を見て・・・にやりと笑った。


 さ、さっきの手話は、何だったんだ?

 

「ねえ、フーリン。ブラックに手話で、なんて言われたの?」


 カクオは、たまらなくなって、フーリンに聞いてみた。


「キミは、美しいだって。プリンみたいにプルプルして、可愛いって・・・。

 今度、オレとデートしようだって・・・。」


「ええっ、それで、なんて返した?」


「うん、カクオには・・・内緒だよって。後で、ホテル行こうって!

 どうせ、ブラックさんだって、カクオじゃない。

 たまにはね・・・フーちゃん、道を外したいの! 下衆ゲスになりたいの!」


「ブラック! お前、オレの女に手を出すな!」


「フッ・・・お前の女は・・・オレの女。オレの女は・・・オレの女だ。」


 そのようにカクオに返事するブラックを、フーリンは、うっとりした熱いまなざしで見つめている。再び、ブラックが、手話でフーリンに何かを伝える。


 クソッ! 俺に手話がわかれば・・・今さらながら、カクオは、後悔していた。 

 プロローグで、『お前はニヒルキャラで、あまり話すな』などと言わなければ、こんな・・・フーリンと手話でやり取りするような事態は起こらなかったはず。


 どぎまぎしながら、フーリンを見ると、案の定、顔を真っ赤にしている。

 しかも、いやらしい目つきで、しきりに口元をもぐもぐさせている・・・。


 まあ、いいさ。

 いざとなったら、オレは、ブラックをいつでも消し去ることはできる。

 今すぐにでもな・・・。

 

 カクオは、口元を歪ませながら、憎悪に満ちた眼差しでブラックを見たが、あまりの目の細さゆえ、その憎悪が伝わったかどうかわからない。

 ブラックは、そんなカクオを見て、両肩を上げ、両手を広げてみせる。


「アイアイ、お二人! そのへんでやめるっス。話が進まないっス!」


 そう言いながら、メガネのツルを右手でつまんだブルーが、カクオとブラックの静かなる闘争に割りこんできた。 


 カクオは、冷静になるとブルーのことを指さして、フーリンに紹介する。


「あっ、フーリン・・・。こっちの眼鏡がブルー。ところで、ブルーよ。

 お前は、どうなんだ・・・フーリンのこと、どう思ってるんだ?」


「アイアイ、オレっち、女に興味はないっス・・・。

 同僚の佐藤に興味がありますけど・・・でも、あいつ・・・オレっちのこと、から

 かうだけで、ちっともオレっちの気持ちに気づいてくれないっス。」


 カクオは、この時、初めて気づいた。自分の中に眠るもう一人の自分に・・・。

 

 同僚の佐藤・・・あいつは、平凡なおっさんだが、出来る男だった。

 頭は若干薄くなってきていたが、それをカバーできるだけの眼力めぢから、濃い眉、高い鼻、きゅっと引き締まった唇。そして、書類の運搬作業で鍛え上げた浅黒い肉体美を持っていた。そう、彼はイケテル平凡男児ことイケ凡男児なのだ。

 

 そんな佐藤に、なぜか、カクオはあこがれのようなものを抱いていた。

 だが、それが・・・恋心だったとは。これが、ボーイズラブってやつか・・・。

 

 まずいな・・・今度、佐藤に会ったら、オレはどんな顔をすればいいのだろう?

 あいつに抱擁を求めるべきか、それともキスを求めるべきか、いや、それ以上のものを求めるべきか?


 カクオは、宙を見つめ、考え込んだ。

 佐藤にブルーを紹介すべきか、それともオレが佐藤に告白すべきか・・・?


 その時、フーリンのチリン、チリンという声が聞こえてきた。

 声のほうに顔を向けると、なんと、ちびオレが、フーリンのおっぱいに喰らいついているではないか。


「この子、おっぱい欲しそうな顔してたから・・・試しにあげてみたら・・・。」


 フーリンの顔は、真っ赤に染まり、トローンとした顔つきになっている。


「すごい・・・テクニシャン。アッアァ、チリン、チリン。チリチリチン・・・。」


「ちびオレ・・・離せ、このチビ、消すぞ!」


 カクオは、ちびオレをつかみ、フーリンから無理やり引き離そうとする。


「痛い、痛い・・・カクオ、乳首が伸びる!」


「ああ、ごめんごめん。コラッ! このスッポン、早く離せ!」


 ちびオレは、吸い込んでいたフーリンの乳首をようやく離した。

 フーリンの乳首は、まるで、水風船が膨らむ前みたいになってしまった。


「あーあ、こんなに伸びちゃった。まあ、いいや。」


「えっ・・・? 大丈夫なの? フーリン・・・。」


「うん、大丈夫、大丈夫。家に帰ったら、乳首がピンクになる軟膏塗るから、大丈夫 

 だよ。カクオ。」


 そういうもんなのか? と、カクオは思った。しかし、乳首がピンクになる軟膏だって・・・だから、あんなにきれいなピンク色なのか。


 カクオが、フーリンのピンク色の乳首を想像していると、誰かが、カクオの足をつつく。カクオが見下ろすと、なるほど、ちびオレが、カクオの足をボールペンで突き刺している。


「お前っ! やめろ、痛いだろッ! フーリン・・・このチビが、ちびオレ。

『もんじゅトリオ』のマスコットだよ。」


「あらぁ、おチビちゃん。また、乳首吸ってね。今度は、ヤ・サ・シ・クだぞ!」


 ちびオレが、フーリンに向かって、尻を突きだし、尻文字を書き始める。


【コ・ン・ド・ワ・イ・カ・セ・テ・・・・】


 カクオは、急いでちびオレを制止した。この小説は、そういう小説ではないのだ。

 途中で制止されたちびオレは、怒ったのであろう。

 カクオに尻を向けるなり、放屁し、尻文字を書き始める。


【ハ・ヤ・ク・シ・ネ・カ・ク・オ】


 尻文字を書き終えると、ちびオレは、ラップのリズムでひとり、盆踊りを始める。


 クソッ! もういい、今日はこのあたりで、お開きにしよう。


 カクオは、みんなに呼びかける。


「みんなッ! 位置につけ! さぁ、ポーズを取るんだ!」


 横一列に、カクオ、ブラック、ブルー、ちびオレ、フーリンの順で並ぶ。


「せーのぉッ!」


 掛け声とともに、各々ポーズを取る!


 カクオは体全体で『P』、ブラックは、床に座り、両足を開脚させて『V』、

ブルーは直立不動で『1』、そして、ちびオレが、尻文字で一生懸命『げっと』と書く。そして、フーリンは、指文字で『栗』の形を描く。


「フーリン・・・違うよ・・・栗じゃなくて、ハートだって・・・ハートマーク!

 そう、その形を維持したまま、そうそう、ひっくり返す。そうそう、オッケー!

 よしっ! あらためて・・・イクぞッ!」


 再び、掛け声とともに、各々ポーズを取る!


【PV1げっと・ハートマーク】

 これが、新メンバー『フーリン』を加えた新たなる決めポーズだった。


「よし、決まったぜ。」


 カクオは、達成感を感じながら、メンバーたちを見ると・・・ブラックとフーリンの姿がない。いったい、どこに行ったんだろうか?


「なあ、ブルー・・・ブラックとフーリンは?」


「レッドが、一生懸命『P』のポーズを取っている時、こっそり抜け出したっス。

 二人はきっと・・・ホテルに行ったス。」


 ちびオレが、両手を叩きながら、キャッキャッと笑う。

 ひとしきり笑ったちびオレは、唐突に立ち上がり、腰を陽気に振りながら、尻文字を書き始める。


【カ・ク・オ・ネ・ト・ラ・レ・ザ・マ・ア・シ・ネ】


 カクオの怒りが、ついに爆発した。

 

「クソォ! これ以上、馬鹿にされてたまるか! みんな、消えちまえェ!」


 そして・・・次回に続く。 


 彼らのPVをつかみ取る戦いが、新メンバーを加え、本格的に始まる。

 まず、目標は【PV100】。

 彼らは、無事、PVをつかみ取ることができるだろうか?


 それは、キミたち、読者さまの応援にかかっている・・・とか言いつつも、カクオの小説のPVが伸びるかどうかは、この小説の作家さまの御心次第なのだ。


 その事実に、カクオたちは、まだ気づいていない・・・。

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