緊急指令!! PV1をつかみ取れ!

@Ak_MoriMori

プロローグ

 ここは、あるカクヨム作家の一室。

 彼の名前は、『ヨムカクオ』。


 カクオは、目の前のノートPCを髪の毛よりも細い目で見つめ、ブラウザの更新アイコンを一秒ごとにクリックしている。

 

 PC画面には、カクヨムのワークスペースが表示されている。

 カクオの小説が、一つだけ表示されているが、PVはゼロだった。

 カクオは、ため息をつきながら、ラップのリズムに乗りながらクリックを続ける。


 だが、PVは増えない。こうしたことを、すでに何日も続けている。

 朝起きると、まず確認。

 仕事中も、スマホ片手に確認。

 そして、夢を見ながらもPCで確認。もしかしたら、夢遊病なのかもしれない。


 それでも、PVはゼロのままだった。


 カクオは、唇をかみしめる。

 なぜだ・・・なぜ・・・俺の・・・魔法少女、異世界転生ものが読まれないのだ。

 タイトルがまずいのだろうか?

 『魔法少女プリンプリンが黄色いべべ着て今日も無双します!』

 なんて、かわいいタイトルだ・・・なのに、なぜ見向きもされないのか?


 それとも、キャッチコピーがまずいのか?

 『プリンプリンはアラサー魔法少女。黄色いプルプル肌が最高です!』 

 ああ、俺のプリンプリン、熟女でありながらも、魔法少女。

 しかも、黄疸で、ぽっちゃり系なんだぜ。最高じゃあないか・・・。


 あらすじがまずいのか?

 『プリンプリンは、アラサー魔法少女。みかんと卵のダイエットに失敗してしまい、若い・・・といってもアラサーであるが・・・の人生を終わらせてしまった。

 しかし、彼女は、異世界に転生した。魔法少女プリンプリンとして・・・。

 異世界「ジュエルランド」を魔王「しゃれこうべ」から守るため、彼女は今日も「しゃれこうべ」の手下たちにお仕置きをするのだ。

 プリン・カラメル・トロトロトロリーン! 甘にがいわヨ!(変身のことば)』 

 どうだ・・・面白そうじゃないか? これを読まないなんて、読者さまは、なんて頭がおかしいんだ。


 しかし、PVはゼロのまま。ピクリとも動かないのは、事実なのだ。

 だから、その貧弱な脳みそをバターのようになるまで回すと、ついに素晴らしい考えが閃いたのだった。


 そうだ! 三人寄れば文殊の知恵というではないか?

 あれを実践するのだ。

 俺が・・・三人寄れば・・・。


 カクオは、目に見えない速さで早九字を結ぶと、意識を集中する。

 しばらくして、カクオの体に変化が表れ始めた。

 カクオの姿が、ゆらゆらと陽炎かげろうのようにゆらめいている。

 その陽炎からひとつ、黒い炎が飛び出た。

 続けて、陽炎からまたひとつ、青い炎が飛び出る。

 さらに、陽炎からまたひとつ、小さい赤い炎が飛び出た。


 最初の炎は、黒い全身タイツを着たカクオの姿になった。

 二番目の炎は、青い全身タイツを着たカクオの姿になった。

 三番目の炎は、オムツ姿の赤子のカクオになった。


 カクオは、黒いカクオと青いカクオを見ると、言葉をかける。

 

「やあ、二人の俺よ。お前たちは、この俺を救うために呼び出された。

 俺たちは、これから『もんじゅトリオ』として、俺の小説のPVを稼ぐ活動を行 

 う。三人寄れば文殊の知恵というからな。俺が三人寄れば、奇抜なアイディアが浮

 かぶに決まってる。」


 カクオは、黒いカクオを見て、

 

「よし、お前は、『ブラック』だ。まんまだが、それでいいだろ?

 ブラックと言えば、ニヒルキャラだ。あまりしゃべるなよ。だが、頭はよく回る 

 タイプだ。俺のことをしっかり支えてくれよ。頼んだぜ!」


 ブラックは、何も言わず、手で「わかった」の合図をした。


 カクオは、青いカクオを見て、


「よし、お前は、『ブルー』だ。まんまだが、かまわないよな?

 ブルーと言えば、何キャラかわからんが、とりあえず、発明得意系でも演じてく

 れ。奇抜な発明をして、俺をサポートしてくれ!」


 ブルーは、「アイアイ! ところで、カクオ君。キミのことを何て呼べば?」


 カクオは、即答する。


「俺のことは、『レッド』と呼んでくれ。または、『リーダー』でもいい。

 活動するときは、この赤タイツを着るからよ。よいしょっと、あれ、サイズ間

 違ったかな。ちッ、股間が目立ちすぎて、ちょっと、恥ずかしいぜ・・・。

 さてと・・・」


 と言ったところで、カクオは、視線を感じた。


 誰かが、カクオのことを見ている。

 カクオは、今まで無視し続けていたのだが、仕方なく、相手をすることにした。

 

 カクオは、赤子のカクオに向かって言う。


「お前、すまない。俺が、勘定を間違ったばかりに、変な姿で生んでしまった。

 お前は、必要のないカクオだった。もともと、三人のつもりだった。だが、自分を

 含めるのをすっかり忘れていたんだ。だから、ひとり余分に生んでしまった。

 すまない、お前、消えてくれ!」


 赤子のカクオが、泣きそうな顔をする。

 カクオは、赤子のカクオがかわいそうになってしまった。

 彼の不手際で生まれた命を、一方的に消していいものか?

 トリオのメンバーとしては不要だが・・・マスコットとしてなら、使えるかもしれ

ない。そうだ、マスコット扱いにすればいい。


 カクオは、赤子のカクオに向かって、ニンマリと笑う。


「お前、よし、お前は『ちびオレ』だ! ちびオレ、お前は『もんじゅトリオ』のマ 

 スコットして、トリオを盛り上げてくれ!」


 ちびオレは、カクオに自分の尻を向けると、自分の尻を振り始める。

 どうやら、尻で文字を書いているようだ。


【カ・ク・オ・シ・ネ】


 ちびオレは、尻文字を書き終えると、へらへらと天使の笑顔をカクオに振りまく。


 カクオは、ちびオレを消し去りたい衝動にかられた。

 なあに、俺は、コイツをいつでも消すことができる。気にするな。気にするな。


 ちびオレが、こちらを見て、何か言いたげそうな顔をしている。

 その目に邪悪なものを感じたのは、カクオの気のせいだろうか?

 もしかしたら、返り討ちにされるのではないか?

 カクオの頭にそんな思いが浮かぶ。


 だが、今は、そんなことは置いておこう。

 いまから、俺たち『もんじゅトリオ』のPVを稼ぐための活動が始まるのだ。


 カクオは、ブラックとブルー、そして、ちびオレに声をかける。


「よしっ! みんな、今から『もんじゅトリオ』の活動を開始する!

 みんなッ! 位置につけ! さぁ、ポーズを取るんだ!」


 それは、奇跡だった。打ち合わせなどしていない。

 だが、奇跡的に、彼らは『もんじゅトリオ』の決めポーズを取っていたのである。


 カクオは体全体で『P』、ブラックは、床に座り、両足を開脚させて『V』、

ブルーは直立不動で『1』、そして、ちびオレが、尻文字で一生懸命『げっと』と書いている。


 【PV1げっと】 それが、彼らの決めポーズだった。


 彼らのPVをつかみ取る戦いは、今、始まったばかり・・・。

 まず、目標は【PV100】。

 彼らは、無事、PVをつかみ取ることができるだろうか?


 それは、キミたち、読者さまの応援にかかっている・・・とか言いつつも、カクオの小説のPVが伸びるかどうかは、この小説の作家さまの御心次第なのだ。


 その事実に、カクオたちは、まったく気づいていない・・・。

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