しかしちょっと拍子抜けですね。
「フーレリア殿! 賢者の石の使い方が判明しましたぞ!」
「え、本当ですか、スロイス先生!?」
「暗号のひとつに隠されておりましたが、なんとかインプくんとふたりで解きました。いやあ難敵でしたなあ」
「それで、賢者の石の使い方は?」
賢者の石は無限に魔力を内包しており、その魔力を使用者が好きに引き出せるという代物でした。
基本はネックレスなどのアクセサリに加工し、身につけるようです。
私は金鎖と一緒に賢者の石を錬金釜に投入して、ネックレスに加工しました。
身につけて、錬金術を使う時にネックレスから魔力を引き出せば?
なるほど、まったく魔力を消耗せずに賢者の石から魔力を融通できることが分かりました。
しかしちょっと拍子抜けですね。
卑金属を黄金に変えるという伝説のアイテムだったのですが、伝説は所詮、伝説だったというわけですか。
とはいえ魔力を無限に使えるというのは面白いですね。
これ、何かの動力に使えませんかね……。
* * *
「本体! 幸運にも不死鳥の羽根が宝箱から出てきましたよ! それも二枚!」
「なんと。これでエリクサーの素材が揃いましたね」
賢者の石はひとつあれば十分そうなので、エリクサーを錬成することにしました。
賢者の石があるので、魔力は使いたい放題です。
ただ腕の疲労だけはなんともなりませんが。
エリクサーを八本錬成して、合計で十二本のエリクサーを所持していることになりました。
万が一、私がエリクサーを必要とする状況に陥った歳のために、ホルトルーデとドッペルゲンガーたちのストレージに一本ずつ渡しておきます。
とりあえず当初の目標は達成できましたね。
とはいえ一号たち三人にはこれからも資金調達のためにダンジョンに潜ってもらい、ふたりのドッペルゲンガーたちには〈加速の魔法陣〉を量産してもらいます。
スロイス先生とインプには古代語の書物の暗号解読を依頼しておきます。
私は、風耐性の紙を量産したり、ホルトルーデのお菓子の量産を手伝ったり、古代語の書物の読書を楽しんだりと、日常に戻ります。
たまにやってくるセバスチャン。
そして私たちの様子を見に来るようになったクリス。
日常はささやかに変化をしながら、気がつけば迷宮都市に随分と馴染んだものだな、と感慨にふけります。
しかしこれが束の間の日常であるなどとは、思ってもみませんでした。
聖女殺害が引き金になって、私の生活は一変することになるのです。
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