テンション高いですねえ、スロイス先生。

「こ、この分厚い古代語の書物をひとりで解読していたのでありますか!?」




「いいえ、インプも手伝ってくれていますよ」




「よう新入り、よろしくな」




 スロイス先生とインプの強力を得て、暗号解読をします。


 スロイス先生のことはホルトルーデにも説明してありますが、目を丸くして「お姉さまはときどきよく分からないことをなさいますね」と呆れていました。




 一号たちはスロイス先生のことを知っているので、「本当、何を考えているんだか……」と肩をすくめていました。


 いや、あなたたちは私なのですから何を考えているかくらいお見通しでしょうに。




 ただ暗号解読要員として活用したいだけですよ!




「そうだスロイス先生。せっかくなので私の復活させた時空魔法を習得しておきませんか。ミスのあった〈テレポート〉は私が修正した〈テレポート〉で上書きしてもらって――」




「おおおお、是非ともお願いします!!」




「お、おう。では魔導書を用意しますね」




 私が用意した数々の魔導書を見て、スロイス先生は愕然とした顔になります。




「な、なんと! これほどの時空魔法を復活させていたのでありますか!?」




「ええ、そうですよ。それじゃあ〈ストレージ〉から順番にいきましょう」




「〈ストレージ〉! くぅ、なんとも凄まじい魔法から入りますな!」




 スロイス先生は次々に魔導書から時空魔法を習得していきました。


 これで時空魔法に関しては私たちと同水準になりましたね。




「〈ディメンション・ゲート〉は素晴らしい魔法でありますな。小生の〈テレポート〉よりも格段に使いやすくなっている模様」




「はい、そちらは先生の〈テレポート〉を元に作った魔法ですね」




「なんと! フーレリア嬢は小生の何歩先を行っているやら。死んだ後もこうしてフーレリア嬢の研究の手伝いができるのは幸せでありますな!」




 テンション高いですねえ、スロイス先生。




 適度になだめながら、暗号文の解説から始めていきます。




 * * *




「悪魔召喚……エリクサーの錬成……フーレリア嬢は一体どれだけの偉業を為しているのか。小生、フーレリア嬢の配下になれて恐悦至極でございますぞ」




 書物の解読がてら今までの成果を聞かせたら、スロイス先生はわなわな震えながらそんなことを言い出しました。


 私だったら誰かの配下になるだなんてまっぴら御免なんですけどね。


 貴族然としておらず学者肌のスロイス先生の精神性はその辺、貴族的ではないのでしょう。




 スペクターになったスロイス先生は常時空中を浮遊しており、食べることも眠ることもしません。


 インプは食べることもできますが、食べる必要はないし、眠る必要もないそうです。


 なので一日中、インプとスロイス先生は書物に首ったけです。




 三人寄ればなんとやら、私とインプ、そしてスロイス先生が揃った今、ふたつの暗号が解かれました。




 ひとつ目は無属性魔法〈クリエイト・ファミリア〉です。


 いわゆる使い魔を作成する魔法で、現在は失伝している魔法の中では有名なもののひとつです。


 使い魔は人造の生命体で、一見すると小動物にしか見えません。


 しかし視覚同調、聴覚同調、そして魔法の起点となるなどの特殊な能力を備えています。




 ふたつ目は闇属性魔法〈スティール・メモリ〉です。


 相手のもつ任意の記憶を奪い取るという強力なもので、相手からは該当する記憶が失われてしまうという邪悪な魔法です。


 使い所はさておき、闇属性の上級魔法のようですから一応、習得しておきましょうかね。




 さてさて、魔導書をしたためてふたつの魔法を習得します。


 〈クリエイト・ファミリア〉には素材として魔力の籠もった粘土が必要になりますから、錬成してしなければなりません。




 ちょっくら市場へ出向いて粘土を購入してきますね。

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