第3話
第3話 節分の鬼3
鬼がいた。正確には「牛の様な角を2本はやした少女」だ。まだまだハロウィーンは続くので、コスプレイヤーだと思ったが、錯覚だろう。にしても「リアルな角」だったな。
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僕は白髪から2本のしっかりした角を生やしている。生まれつきらしいのだが、日に日に大きくなってゆくソレに恐怖感をおぼえた家族から逃げるかの様に、家出した。家族達は「実験体」として売れる医療機関を探していたからだ。
「そんなのごめんだ」
昔「花嫁資金」にと貯えられていた微々たる通帳を持って家を出た。 遠くの街に出た。ソレからは「コスプレイヤー」だけど働かせてくれるコンビニで、フルタイムでバイトをして生計を立てている。僕は目立つ白髪と角を「コンビニ」ていう人目の多い目立つ空間にわざとおいた。 「家族」から逃げているのだから、目立たない様に、すれば良いのに、と思われるだろう。最初は大抵のお客さんは驚くが「タレントを目指したコスプレです」と言いはったら、みんな理解してくれた。フルタイムで、コンビニでバイトしているのに「嘘つき」と言われたら「天涯孤独」だから、生活費を稼いでると説明したら、コンビニのリピーターに「頑張れ」と応援された。嬉しかった。
試しに角を削れるかとサンドペーパーで磨いてみた。
「痛かった」この角は爪や髪の毛より神経や血が通っているのがわかった。知らなかった時は、ノコギリで爪の様にカットしようと思っていたから、この事を知ってなお煩わしいソレだった。「角生やしてるんすか?」本物っすか?と客に絡まれる時もある。そんな時は「これは本物さ。ヒトには内緒で頼む」とあっけらかんとしていたから「ちっコスプレか」と僕の柔らかい心に杭を打って、以後相手にされなくなる。
良いんだけどね。計算して話しているからと、満足してるふりをしている。バレたくないのに、バレてないことが、何故か、悲しかった。つまり僕の存在は大切でもなんでもなくて、角が「不思議」なモノでなければ、どうでもいい位の信じてくれないヒト達に、作戦とは言え「本音」を明かしているのだから。
▼△
日帰り旅をしていたら、あの娘に出会った。
コンビニでフルタイムで働いているタレント志望の素人さんと、他の店員から聞いた。嗚呼だからハロウィーンのコスプレみたいな括弧をしているんだと納得した。家出をしたのは将来の夢を叶える為に、きっと邪魔されない様に、真剣に悩んだ末だろう。
「その願い叶うと良いね」と、
了19.10.24.家鴨乃尾羽
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