第2話
第2話 節分の鬼2
彼女は蠱惑的な唇と、豊満なバストが、ちらちら気になる襟具りの深い衣類を着ていた。そのアングルが官能的でいけない。
誘っている様に見えるから。
もう少し、清楚な衣類を着るべきだと思った。
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豊満なバストを隠す方法はないかしら? 私は貧乏生活の為に、衣類を新調出来ないでいる。
優れた体型の為に「嫌がらせ」という名の「痴漢」に困っている。まぁ「痴漢」は「苛め」として警察に被害届を出せばよいのだが、一重の小さい眼差しで鼻ぺちゃの私は、美女でない為に「痴漢の被害者」扱いされにくい。複数からあれやこれやとされる。凍った声は悲鳴とはならない。だから「エロい」格好した私が「誘っている」と、誤解されて今に至る。被害届を出そうにも、何時、誰が、何処で、何を、どのように行ったか?を、何も説明出来ないでいる。だから「頭を整理して」出直してと、女刑事に怒鳴られる。それが出来ないから困っているのだ。そんな悔しい日々を送っていたある日、いつもの女刑事に「証拠の提示」を求められた。相手に逆に「訴えられない様に」とも忠告された。だから私は行った。証拠を残す行為を。豊満なバストにカメラ(食費を切り詰めて買った小さな小さなカメラ)を仕込むという形で。
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それは電車の中だった。
何人かの男性に取り囲まれた彼女は、悲鳴の代わりにシャッター音を連写させた。今日はいっそう胸元が開いているなと思ったら隠しカメラを仕込んでいたらしい。勝ち誇った彼女に「信じられない」言葉が聞かされた。 「恋人とまちがえた」と。その男性は、胸元が開いた服を着た別の女性の背中に隠れた。
「デートしてる暇が無いからさ」通勤中に、ラブシーンをしてるのだと、開きなおった。
本当の事なのか?
とっさに庇ってもらったのか?はわからないが、背中に男性を匿った女性は、正々堂々と私の彼が「貴女に」何かしたかしらと大声で威嚇した。
女刑事に怒鳴られるのと同じくらい怖い思いをした彼女は、それでも、立ち向かい、彼女の背中に隠れた男性から、直属の上司の連絡先を、手に入れて、逃げるかの様に、電車を降りて、走っていった。
それから数ヶ月後、慰謝料をもらった彼女の一帳羅は、ハイネックのモノへと変わっていた。
助けてあげる勇気と知恵がなくて「ごめんなさい」と、謝ったら、何となく友達になれ、何故、胸元の開いた一帳羅を着ていたか教えてくれた。
「衣服は父の形見で、丈夫な作りだし、なけなしのお金は」食費にあてていたからだとの。
了19.10.24.家鴨乃尾羽
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