自主企画sample 第9章 短編集9 節分の鬼(マグネットマクロリンクより)

宝希☆/無空★むあき☆なお/みさと★なり

第1話

第1話 節分の鬼1

彼女はミルクティー色に染めた髪をツインテールの三つ編みにしていた。目立つのは左目の眼帯の飾り花。紙ではなさそうだ。フェルトで作られている。

眼帯に小さくあしらわれた2つのハートも、同じく首に巻かれた包帯の飾りとなっている。

眼帯に包帯、ハロウィーンの仮装かな?右目が綺麗なルビー色をしていると思った。


▼△


私は色素が薄い。アルビノというヤツだ。そういった知識の無い両親は、私を忌み子として嫌っている。総白髪では「可愛く」見えないと思った私は髪をミルクティー色に染めた。ヤンキー色を落とす為に「三つ編みのツインテール」にした。殴られた痕を隠すために外せない眼帯には、畏怖感を落とす為に、花飾りを付けた。そして見える目はアルビノ独特の赤色をしている。カラコンをつける気にはならなかったが、面倒くさいのでカラコンを「つけている」事にしている。「首を絞められた」痕を隠すために首にも包帯を巻いている。包帯の畏怖感を落とす為にハートマークを付けた。これなら誰にも両親から虐待をうけているとは、気づかない筈だ。

そんな母親はたまに私を言葉でも傷つける。「色が無いなんて何て不吉なの」まるで昔話に出てくる鬼ね(笑)と…

「鬼退治をしなくちゃ」と左目の眼帯を奪われる。殴られた傷痕があらわになる。空気が触れて痛い。うづく左目をぐりぐり指で弄ろうとした母は「恐怖に心身とも耐えられない」私が、むちゃくちゃに暴れたキックが決まって壁に頭をぶつけたかと思うと思うと、血を流し床に崩れ落ちた。壁から床に血の跡が着いていった。母の最後の甲高い叫び声に、気がついた父が、応接間にずかずか入ってくる。私は怖かったから、気絶してるフリをした。亡くなった母をゆさぶり、悲しみをあげる父が怖くて涙が頬を伝った。父が救急車を呼んで、母の事切れた姿に寄り添い、一緒に病院に向かう。そんな中、救急隊員に発見された私は別の救急車で、別の病院に搬送された。

悲鳴を殺す訓練はしていた。

だから…

それがはじめての通院だった。


▼△


救急車のサイレンが近い。眼帯を付けたあの娘が、何時か入って行くのを、確認した家から、救急車が、2台発進した。

近所の人達は「家庭内暴力かしら」と、噂する。


それを「ハロウィーンじゃないんだ」と、見ていた。




了19.10.24.家鴨乃尾羽

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