第4話
第4話 節分の鬼4
着物姿の姫様は柊の枝をそっと触る。彼女は目が悪いのか?常に両目を瞼で塞いでいる。確か「二口女房」という日本の昔ばなしで、追いかける山姥の目をすすきが切って、主人公が助かった筈だが。柊は何故、鬼に忌み嫌われてるか?本当の事は何も知らなかった。
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柊鰯(ひいらぎいわし)という魔除けの縁起物を作るのに、必要な柊が届けられた。柊鰯は焼いた鰯の頭を切り落とし、柊にさして作る。それを玄関の外側に飾るのが一般的。魔除けは臭い鰯と、尖った柊で作る。 臭い匂いで追い出し尖った柊で、目を指すために。着物をきちんと着付け、届いた柊を持って目を閉じる。鬼と間違えて、姫の目を指さない様に。若しくは姫は鬼かもしれない。その尖った葉に目を刺されない様に、両目を固く閉じているのかもしれない。姫は翌日の立春まで柊鰯にする事もなく、持っていた柊を塩で清めて半紙に包みゴミ箱に捨てる。
彼女は鰯の頭の役目をしたのか?
それとも…
節分の間、閉じられていた姫の両目が開く。
そう「禁忌の証」の金色と赤色の両目が。
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姫様はかって「節分の鬼」として、命を壊されかけた経験上、節分の鬼を退治する焼いた鰯の頭の代わりになって、己の身を守った。人々に退治される鬼とならぬ様に。悪鬼化して人々を襲わぬ様に。また、己の身が鬼として覚醒しない様に。
今年、見つかった「節分の鬼」は姫を含めて合計4人。彼女達はこの儀式で退治されずに済み、此れからも生き長らえる。
「良かった」4人の娘らの無事を祈っていた姫様は、ソレがかなった事を知り、自然と呟いた。
アルビノ故に両親に壊された少女。蠱惑的な唇と豊満なバスト故に、イカれた男達に、辱しめられた娘。生まれつき生えている牛の様な角を生やしている家出少女。そして、儀式の間、静かに平和を祈り、人々の無事をも祈り続けた、両目を隠し通せた姫。
「来年以降は、もう見つかっては駄目よ」と呟いた。
節分、それは多数の人々に、見た目の少なさやソレ故に怖さに繋がり、退治する鬼とあてがわれる「不幸なモノ」も混ざる儀式。秋の実りを終えて、農地を離れる冬を終えて、農地に戻る春を迎える「農耕民族」には、大切な儀式。
だからといって「不幸なモノ」を意図して探してはならない。
本当は、恐ろしい冬という季節を追い払うだけで良いのだから。
了19.10.24.家鴨乃尾羽
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