33. 影を生きる“獣”

 少女がたじろいだ隙を、男の狡猾な視線は見逃さなかった。

 壁際に少女が身を引くと同時に、またじりりと距離を詰める。


 丸メガネの少女は明らかにおびえているが、モヒカン頭の男性はにやにやした顔を近づけた。


「そう、緊張しないでよぉ。俺ら、下心なんてこれっぽっちもないんだからさぁ。君みたいに一人で困っている女の子を、ほっとけないってわけよ」


 その言葉は実に薄っぺらい。

 どれだけ笑顔を作ろうとしても、心の奥底が表情へと染み出し、みにくく歪める。


 世間知らずな少女とて、男が危険であるということだけは分かっている。


 逃げなくては――そう思ってはいても、体がすくんでしまい、走り出すことができない。


 それは、目の前にいるモヒカン頭の男が放つ“圧”だけではない。

 彼の背後に控える二人の巨漢が放つ威圧感が、小さな体に容赦なく突き刺さり、その判断を鈍らせる。


 無知な旅行客を必死に口説くモヒカン男の背後で、巨漢二人は声を潜め、言葉を交わした。


「なあ。毎度思ってはいたんだが、兄貴の好み、ちょっとかたよってねえか?」

「まぁ、な。とはいえ、こういう幼稚に見える方が、意外と客受けは良いっていうんだから、バックされる金額もでかいらしいぜ」

「ほぉ、世の中には好き者がいるってことか。こんな“イモい女”より、もっと派手な美人の方が良いがね、俺ぁ」


 下世話な会話をしつつ、男達はモヒカン頭こと“兄貴”の攻防を見守る。

 とはいえ、もはやこうなっては少女の運命は決まったようなものであった。

 

 モヒカン頭の男は「ふふん」と笑い、とどめの一言を投げる。


「まぁ、こんな路地裏でお話しするのもなんでしょう? 俺ら、近くに車、止めてんのよ。そりゃあもう、ハイクラスな外車よ! ちょっと近くのカフェまでいって、もっと快適なところでお話ししたいわけよぉ」


 少女の言葉など聞く気もなく、彼女の震える体に手を伸ばした。

 このまま強引に、無遠慮に、彼女を車へと連れ込むつもりだ。


 そこまで持っていければ、あとは煮るなり焼くなりである。

 あの手この手、手練手管であとはこちらの世界に引きずり込み、“沈める”のみだ。


 向かってくるその男の手にすら、もはや恐怖に縛られた少女は何もできない。

 声を上げるという自由すら奪われ、視線すら足元に落としてしまう。


 好みはあれど、着実に“ノルマ”を果たそうとしている兄貴分の姿に、同様に下卑げびた笑みを浮かべる巨漢二人。


 その背後から、快活な声が響く。


「おーおー、またやってらぁ。仕事熱心っていうか、暇人っていうか。とにかく、相変わらずくだらないことやってんねぇ、“トサカ先輩”」


 目を見開くモヒカンの男。

 巨漢二人。

 そして少女。

 

 四人が一斉に振り返る。

 いつの間にか路地の入口に立っている三人の影に、息をのんだ。


 誰よりも先に声を上げたのは、モヒカン頭の兄貴分であった。


「て、てめえは……!」


 見覚えのあるその姿に、巨漢ら二人も気付く。

 先頭に立つ団子髪の“探偵”は、久々に再会した男達を見て、肩の力を抜いて笑っている。


「どもども、おひさ~。あれからどうしてるかと思ってたけど、まるで凝りてないのねぇ、“トサカ先輩”ってば」

 

 にやにやと笑いながら、遠慮なく距離を詰めるナデシコ。

 そんな彼女にアイリス、そしてミハルも続く。


 突然の乱入者達に、男達だけでなく少女までも言葉を失っていた。

 そんな彼女を見つめ、探偵は優しく笑う。


「こんなところに、一人で踏み込むべきじゃあないよ。こういう大人な空間は、もう少ししてから、ね?」


 語り掛けてくるナデシコの姿を、少女はただ口を開いたまま、じっと見つめていた。

 その姿は数日前――思えばこんな裏路地で、同じようなシチュエーションに巻き込まれていた、アイリスのそれに似ていて、苦笑してしまう。


 しばし呆気に取られていた男達だったが、ようやく我に返る。

 今までのへらへらした態度からは一変、明らかな敵意をむき出しにし、えた。


「てめぇ……あの時の女じゃねえか。それにそっちの“チビ”も……のこのこと現れるたぁ、どういうつもりだ。ああ?」


 その高圧的な態度にひるんだのは、壁際に追い詰められていた少女だけだった。

 ナデシコとアイリス、加えてミハルまでも、男らの言葉を意に介さず、真っすぐこちらを見つめている。


 先頭に立つナデシコは後ろ頭をかきながら、あくまでにこやかに説明した。


「いやあ。もちろん、出来れば二度と会いたくないなとは思ってたんだけどさ。ちょっと事情が事情なんでね。“トサカ先輩”にも、ご協力願えないかなぁって」

「ご協力、だあ? なめてんのか、てめえ」

「なめるだなんて、そんなそんな! ただ、ちょっとばかし、色々と教えてほしいんだよ。あんたらが詳しい“闇社会”のあれこれを、ね――トサカ先輩?」


 一歩踏みだし、臨戦態勢を固める男達。

 巨漢二人がまずは立ちはだかり、威嚇いかくする。


 その背後で、モヒカン頭の男は吠えた。


「その名前で呼ぶんじゃあねえよ! なめ腐りやがって……前と同じようにいくと思うなよ!」


 男の言葉をきっかけに、巨漢二人は懐から明らかな“武器”を取り出した。

 一人はメリケンサック、一人はスパナを手に持ち、こちらを睨みつける。


 凶器の登場に、背後の少女が悲鳴を上げそうになった。

 しかしなおも、ナデシコらはまるでたじろがない。


 有無を言わせず突進してくる巨漢二人。

 武器を振り上げた二人を見上げたまま、ナデシコはゆっくりとポケットから手を抜いた。


 前と同じ、ねえ――二人の男が武器を振り上げた瞬間、“風”がナデシコの背後から、駆け抜ける。


 飛び出した影が、メリケンサックが振り下ろされるよりも早く、巨漢の胴体に肘鉄を叩き込む。

 その一撃が知覚されるよりも遥か前に、スパナの男の顎を後ろ蹴りがかちあげた。


 刹那――打撃音の連弾の後、巨漢二人は地に崩れ落ちる。


 言葉を失うモヒカン頭の男と少女。

 先程まで武器をたずさえ憤りをあらわにしていた部下二人は、一瞬で戦闘不能になってしまった。


 一人は呼吸ができず腹部を押さえてうずくまり、一人は仰向けに気絶している。

 そんな二人のすぐ真横に立つ、彼女が吠えた。


 あまりにも刺々しい笑みを浮かべ、“雷帝”ことミハルは言い放つ。


「なんだ、随分ともろいんだなぁ、んん? なるほどなるほど、群れなければ無抵抗な少女一人襲うことのできない、烏合うごうの衆ということか。すまんな、加減できなかったこと、謝るぞ?」


 ぎらりと笑うその姿に、たじろぐモヒカン頭。

 相変わらずの圧倒的実力を前に、見惚みとれてしまうアイリスと、苦笑するナデシコ。


 たしかに、“前”とは違うわな――おかしくなってしまうナデシコの前で、なおも残された男は事態が飲み込めず、身動きを取ることができない。


 そんな探偵のすぐ脇を、つかつかとアイリスが歩いていく。

 彼女は真っすぐモヒカン頭の男に近付き、語り掛けた。


 かつて自分を騙し、“闇社会”に引きずり込もうとした彼に、真っすぐ対峙する。


「お願いがあるの。私達、やらなきゃいけないことがあるんだ。だから、協力してほしい」


 真っすぐ言い放ったアイリスの姿に、ナデシコはどこか驚いてしまう。

 よく見れば、少女は両拳をしっかり握りしめ、湧き上がってくる恐怖に耐えていた。

 その戸惑いを押し殺し、彼女は自らかつての“災厄”に立ち向かうことを決めている。


 モヒカン頭の男はしばし呆然としていたが、やはり我を取り戻し、眉間にしわを寄せる。

 拳を持ち上げ、素早く身構えた。


「わ、わっけ分かんねえ! なんだ、なんなんだよ! どいつもこいつも、ふざけやがって――」


 男が拳を持ち上げた瞬間、真っ先に動いたのはアイリスだった。

 

 少女の手が、男の手首をしっかりと掴む。

 そのあまりにも自然で、殺気のない動作に、男は反応することができなかった。


 息をのむ男、そしてナデシコとミハル。

 誰もが一拍遅れる中で、アイリスは歯を食いしばり、前を向く。


 意を決し、迷いを断ち切る。

 小さな体の奥底で燃える心を頼りに、己が手に力を込めた。


 瞬間、万力のような力が男の手首を締め上げ、きしませる。

 その異次元の感触に男は言葉を失い、伝わってくる激痛に呼吸すら止めてしまった。


 ぐいとひねりこむと、男は足元から崩れ、尻もちをついてしまった。

 少女の握力によって、完全に男の肉体が制御を奪われてしまっている。


「お……おい……なんだ……これ……?」

「私達、ふざけるつもりなんてない。どれだけ危険でも、知らなきゃいけないことがあるの」


 言い放った少女の眼差しは、強かった。

 その決意の焔を体現するかのように、握力はどんどんとその出力を増していく。


 また一つ、がくんと男の身体が沈んだ。

 痛みは電流の様に全身へと駆けめぐり、足腰の自由すら奪う。


 全く動けない――抵抗することは、きっといくらでもできたのだろう。

 だが、伝わってくる手首の痛みから、確実に理解できることがある。

 目の前に立つ黒薔薇のドレスを着た少女の姿から、言わずとも分かることがある。


 もし抵抗すれば、砕き折られる。


「お願い、教えてほしいの。あなたの知っていること、全部――」


 ついに男の喉元から、悲鳴が上がった。

 

 男を自身の力で制圧したアイリスの姿に、ナデシコとミハルは言葉を失ってしまう。

 数日前の彼女からは、想像もできない姿だ。

 

 それだけ、彼女が変わったという証なのかもしれない。

 事件に巻き込まれ、狼狽うろたえ、戸惑いながらも今日までしたたかに歩んできた彼女の決意が、その姿を成し遂げている。


 改めてナデシコは、かつての怨敵に立ち向かう少女の姿に、ため息が漏れる。


 強くなったね、随分と――いつしか壁際で身をすくませていた少女も、男に立ち向かうアイリスの姿に目を奪われていた。

 

 背丈も、線の細さも、気弱な部分もそっくりな二人の少女。

 その姿はまるで、この路地裏で出会ったかつての少女の“過去”と“今”を照らし合わせているような、奇妙な光景だった。




 ***




 ジャズ音楽が流れる中、マスターはいつも通り、慣れた手つきでコーヒーをれる。

 出来上がった一杯は会心の出来だったが、あいにく今は離れたテーブルに座る奇妙な取り合わせの四人組に目が奪われ、集中できない。


 窓際、階下の大通りが一望できる眺めの良い席で、男は声を張り上げた。


「な、なんだと? お前ら……“マフィア”を調べ上げてる、だと?」


 物騒な言葉よりなにより、男の無遠慮な一言に、周囲の客達が一斉に振り返った。

 たまらず、対面に座るナデシコがため息をつく。


「お静かに、トサカ先輩。ほら、お客さん達が怖がってるじゃあないのさ。ただでさえ、そのトサカが目立つっていうのに」

「うるせえ、これは俺のトレードマークだ。トサカ呼びすんじゃあねえ! そ、それよりも、冗談だろう。お前らみたいな素人が、なんのために“マフィア”なんかと」

「それがこっちも、色々あんのよねぇ。本当なら厄介事はごめんだけど、どうやらそうも言ってられないみたいでさぁ。まったく、参っちゃうよねえ」

 

 うろたえる男を前にして、あくまでナデシコはマイペースに笑う。

 その隣にはアイリスが座り、ショートケーキを黙々と口に運びながら、それでも男を睨みつけていた。


 さすがに“尋問”をするには、ちょっと場違いだったか――お目当ての人物の確保には成功したもの、どうにも“先輩”のその身なりは、このカフェにマッチしていない。

 浮きに浮いているモヒカン頭の男は、椅子にどかりと腰かけなおし、ため息をつく。


「なにが目的かは知らねえが、馬鹿げてる。第一、『はいそうですか』って、べらべらと知ってるあれこれを喋ると思うのか?」

「だからこそ、こうしてお願いしてるんじゃあないか。ねえねえ、お願いだよ、トサカ先輩。ちょっとしたことで良いんだよ。『製薬会社・ヤドリギ』の奴と、つるんでるメンバーとかいなかった?」

「知らないね、まったく。それに俺ぁ、“トサカ先輩”なんて名前じゃねえ。モンジュって立派な名前があんだよ。なめんじゃあねえぜ」


 むすっとしたまま、トサカ頭のチンピラ・モンジュはまたもや大きく、わざとらしいため息をついて見せた。

 右手首には、アイリスの怪力がつけたあざがいまだに痛々しく残っている。


 しかし、あくまで口を割らないモンジュの隣に座る“小説家”が打って出た。


「随分と堂々とした態度ですねぇ。さすが“マフィア”の端くれ。肝が据わってるんですねぇ」

「あったりめえよ。こう見えても、色々と修羅場くぐってきてるわけ。がきんちょには分かんねえだろうがな」

「へええ。でも、それじゃあこの後、大変ですねぇ」


 思いがけない言葉に、モンジュは「なにぃ?」と顔をしかめる。

 ミハルはどこかわざとらしく、自身の手帳を眺めながら続けた。


「だって聞いたところによると、あなた方がやってたことって、いわゆる“淫行勧誘罪”ってのにあたりますし、警察に伝えたら一発でお縄ですよねえ。で、それが終わったら、そこを皮切りにあなたが所属している“組織”にも調査の手が入るわけですから、あなたのお偉いさん方、きっとすごく怒るんじゃあないですかねぇ?」


 この一言に目を丸くしたのは、ナデシコとアイリスも同じだった。

 とりわけ大きく取り乱しつつも、モンジュはあくまで動揺を悟られないよう、振舞う。


「はっ、んな簡単に事が進むかよ。警察なんざ、とんだ役立たずだぜ。そもそも“マフィア”相手に、大真面目に取り組もうとするやつなんざ、まずいねえよ。どいつもこいつも、心の中では分かっていながら手を出さねえんだ。それほどまでに“マフィア”ってのは、この街や政治ってやつとずぶずぶなんだよ」

 

 奇しくもその言葉は、探偵を生業なりわいとして生きてきたナデシコには、痛いほどに分かってしまう。


 警察という“白組織”と、マフィアという“黒組織”。

 健全な世界で生きてきた人間であれば、黒は白に飲み込まれ、駆逐されるのが世の道理――そう、考えるのかもしれない。


 だがそれは、世界が作り上げた“錯覚”であると、ナデシコは考えてしまう。


 白には白の意味があるように、黒には黒の意味合いがある。

 光があれば必ず影があるように、それぞれの異なる組織は互いに反発し、しかし時にどこかで密接に絡み合いながら“社会”というものを創り上げてきた。


 ふっとナデシコの脳裏に、かつておもむいた“国防”の本部ビルでの邂逅かいこうが、思い出されていた。

 

 あの“太い男”――フドウという堅牢な人物のその横で、なまめかしい瞳を向ける、製薬会社・ヤドリギの新社長・マエジマ。

 どちらもナデシコらにとっては、限りなく“白”の側にいる人間だ。

 だがそれでいて、ミハルの“ストーカー事件”を乗り越えた身としては、あの二人の関係性に薄ら寒いものを感じてしまう。


 社会の中において、実は“白”も“黒”も、そう重要なことではないのだ。

 問題は、それらが社会の中で、どのような“役割”を担うのか。

 そうやって今日まで、このワンドゥという“灰色”の都市は成長してきた。


 モヒカン頭の男・モンジュの言葉を聞き、ミハルは「そうかぁ」と考える。

 一瞬、モンジュは不敵な笑みを浮かべたが、なおも小説家の言葉は止まらない。


「じゃあ、警察に通報しても無駄かぁ。なら、しょうがないですねぇ。ナデシコさんのお知り合いに、直接頼むしかないですかねぇ」


 その提案に、モンジュだけでなく対面に座るナデシコ、アイリスも目を丸くする。

 アイリスはケーキを喉に詰まらせてしまい、慌てて紅茶で流し込んだ。

 少女を横目に、ナデシコは首を傾げながら問いかける。


「知り合い、って……え、それってねえさんのこと?」

「そうですよっ。ユカリさんに直接、調査してもらうんですよぉ。ほら、それなら面倒くさいこと抜きに、動きやすいじゃあないですか。雑用は私達がやれば、きっと効率が良いですしねぇ。私の事件の時にも、ユカリさんが“刑事”として優秀だっていうのは、証明済みですからぁ」


 ニコニコと告げるミハルを、ナデシコらは少し呆けたまま見つめていた。

 だが一方で、モンジュの顔がどこか引きつっていく。


「刑事……なんだと、お前らまさか、直接警察と繋がってるのか?」

「そうですよぉ。ユカリさんは物凄い優秀な刑事で、警察の色々な部分にも顔が利くエリートさんなんですよっ。その上、腕っぷしも強くて、この前もナデシコさん達を襲った悪い人達を数十人、たった一人で撃退しちゃったんですからぁ。ねぇ?」


 こちらに視線を投げかけられ、反応に困ってしまう。

 おそらくそれは、ナデシコとアイリスがかつて、海浜公園にて悪漢達に取り囲まれた際、ユカリに助けられた過去を指しているのだろう。

 おおむね間違っていないことに、ひとまずナデシコは「そうだね」と頷く。


 ミハルのこの何気ないやり取りが、思わぬところで男を追い詰めていく。


 モンジュは明らかに“刑事”という言葉を出して以降、動揺の色を見せていた。

 彼のおかしな様子と、ミハルの余裕綽々な態度に、いち早く“探偵”は気付く。


 ナデシコもまた意地悪に笑い、そして自身の携帯端末を取り出した。


「あー、まー、しょうがないかぁ~。やっぱりぃ、私達みたいなのじゃあ“マフィア”に立ち向かうなんて、夢のまた夢かぁ。ここは素直に、姐さんに頼ったほうが良いよなぁ」


 言いながらも、ナデシコは親指で端末の画面を操作する。

 しかし、すぐ隣で覗き込むアイリスだけが、それがただの“見せかけ”であることに気付き、息をのんだ。

 少女に横目で合図しつつ、再びその照準は目の前に座る男に向けられる。


「姐さん、確か“国防”とも繋がってるみたいだから、そっちにも動いてもらおうか。なにせ姐さん、元海外の特殊部隊の人間だから、そっちの“つて”も色々あるだろうしさぁ~」


 どこか白々しく、それでいて大げさに言葉を吐き捨てるナデシコ。

 無論、そのどれもこれもが“嘘”である。

 ユカリの過去など知りはしないが、少なくとも“国防”だの“特殊部隊”だのとの繋がりはないはずだ。


 そのナデシコのわざとらしい言葉の数々に、それでもモンジュが食いつき、動き出す。


「お、おい、待てよ! ちょっと待て!」

「ええ、どうしてぇ?」


 男が狼狽ろうばいする理由を、いまいちアイリスだけは理解できていない。

 仕掛けたミハル、そしてそのバトンを受け取ったナデシコだけが、男の心中を察する。


「えっと……んん~、まぁ~……概要だけなら、教えてやれねえこともねえ、が」

「本当に? 助かるよぉ、先輩!」


 にこにこと笑うナデシコ、そしてにやにやとほくそ笑むミハル。

 いまだなお、アイリスはその展開の理由を理解できないままでいた。


 結局、彼としても怖いのだ――どれだけ“マフィア”が強固な土台を持っているところで、そこに調査のメスが入れば、組織とて無傷ではいられない。

 下手を打てば、その“きっかけ”を作った人間は法によって罰せられるだけでなく、戻ってきてからも組織から“制裁”を受けることになる。


 もしナデシコの言葉通り、女刑事を経由して警察が動き出してしまえば、そのきっかけとなったモンジュの身の安全は、保障できない。


 彼としてはもはや、どちらにせよ“詰み”なのだ。

 この喫茶店に足を踏み入れたあの瞬間から、どちらの“王手”を選ぶのか、それだけだったのである。


 自身がきっかけとなって動き出すのが、“警察”という白組織なのか。

 はたまた“探偵”という脆弱な三人組なのか。


 観念したように、モンジュは大きなため息を漏らす。

 目の前の生温いコーヒーをやけくそで飲み干し、どかりと椅子にもたれかかった。


「ったく、末恐ろしい嬢ちゃん達だぜ。んで? 何が聞きたいわけよ」


 男が堕ちたことを確認し、ナデシコらも改めて椅子に腰かけなおす。

 コーヒーのお代わりを注文しつつ、速やかに本題に切り込んだ。


「ならまず、いまの“裏社会情勢”についてでも、教えてほしいかな。この街にいるマフィアの内、大きな規模のものをいくつか、知ってる?」

「ああ、知ってるぜ。ただ、そもそも“いくつ”も存在してねえよ。今この街はほぼ、一つのでかい組が取り仕切ってるわけ」

「へえ、なるほど。なら話が早いね。なんて名前の?」


 一瞬、男は一同の顔を流し見た。

 だが、どうあがいたところでこのシチュエーションをひっくり返すこともできず、観念して続ける。


「『ベスティア・ファミリー』――ワンドゥ一帯を押さえているマフィアだ。ショバ代や興行費、企業の人間とのパイプなんかで金を吸い上げ、一気にでかくなったのさ」


 核心を突く名前の登場に、息をのむ三人。

 ナデシコは「ふむ」と唸った。


「なるほど、ねえ。企業の人間とのパイプ――って言ったけど、そこに“製薬会社”なんてのも含まれてるのかな?」

「そこまでは分かんねえよ。なにせ、俺らみたいなのは『ベスティア・ファミリー』の端の端の端……情けないくらい弱っちい末端グループだからな。やつらはこの街にいる半グレや不良、無法者を片っ端から抱え込んで、手足としても使ってるんだ。実際、俺も組織の人間とは数回しか、会ったことがないわけよ」


 どうやら嘘はついていないらしい。

 隣に座るミハルも、メモを取りながら質問した。


「ってことは、そういう繋がりだとかの情報を握ってるのは、やっぱり“幹部”クラスの人達になるんですかねぇ?」

「だろうな。といっても、『ベスティア・ファミリー』は精鋭組織だ。幹部って言われる人間も、かなり限られてるわけだ。そう易々と出会えるもんでもねえだろうぜ」


 少し残念な返答ではあったが、この程度で諦めはしない。

 アイリスも負けじと、二人に続いた。


「じゃ、じゃあ、あの洋食屋さんに来ていた人が、その“幹部”の人なのかな?」

「さあ、な。そもそも、そういう組織外の人間とのやり取りなんてのは、俺らみたいなのが言伝をするってパターンも多いわけ。だから必ずしも、毎度毎度、幹部の人間が出て来るってことでもないだろうさ」


 なんとも煮え切らない答えである。

 マフィア「ベスティア・ファミリー」がワンドゥに深く、広い根を生やしているということは、容易に想像できる。

 だが、まだ今の段階では、組織が企業と――特にくだんの製薬会社と関係性があるのか、確証を持てない。


 聞き出した情報に頭を悩ませるナデシコ達。

 しかし、ここで思いがけず、モンジュ自身が語り始めた。


「ただ……“製薬会社”って言ったか? だとすりゃあ、もしかすると――」

「ん? どうしたの、心当たりあるの?」

「いや。ただの思い過ごしかもしれねえが……」


 いまいち歯切れの悪い男を、じっと見つめるナデシコ達。

 言い淀む彼に、アイリスが真正面から問いかけた。


「あ、あの……何でも良いんです。何か知ってるなら、教えてください。お願い……します」


 か細く、か弱いその言葉に、男は少しだけ驚き少女を見つめた。

 未だにアイリスは、男に対する恐怖を完全に消し切れていない。

 だがそれでもなお、彼女は恐れを振り払い、前を向き続けている。


 彼女のその姿が、男の心に何か作用したのかもしれない。

 モンジュはどこか観念したように、ため息をついて言葉を続けた。


「いや、なに……これは噂ではあるんだが、最近どうも組織の運営自体、うまくいってねえみたいだ。どうやら、組織の誰かしらが“麻薬”を売りさばいている、ってことらしい」


 これまた物騒な言葉が登場し、息をのむ三人。

 モンジュはいつの間にか前のめりになり、語りだした。


「マフィアといっても、一つの組織だからな。つまり、そこにはある程度の“ルール”があるわけだ。『ベスティア・ファミリー』がでかくなったのは、その“鉄の掟”ってやつに、一本の芯が通っている……ってところに、惹かれた奴が多いって部分もあるみたいでな。その中に、『薬だけは売りさばかない』って信条があるのさ」

「へえ、マフィアだっていうのに“薬”を嫌ってるわけか。確かにちょっと珍しいなぁ」

「どうやら、トップ――つまり“ボス”の思想らしい。“人間自然主義”だったか? とにかく、生き物にとって不純物となるものは、悪とする文化があるのさ。組織にとって最も尊ばれるのは自然――すなわち、生き物としての“本能”に根付いたもの、ってことらしい」


 マフィアという言葉に気圧けおされていたが、どうも話を聞けば聞くほど、想像していたものと実態は随分異なっているようだ。

 こうして考えると、どうにも「ベスティア・ファミリー」には、どこか一本、しっかりと通った“芯”があるようである。


 本能――すなわちそれは、人間という一つの“獣”の本質を尊ぶ文化、ということらしい。


 ナデシコは運ばれてきたお代わりのコーヒーを受け取りつつ、考えた。


「ふむ、確かにそうなると妙だね。“薬”を良しとしない組織であるにもかかわらず、その組織の人間が堂々と“麻薬”を売りさばいているとなれば、これは明らかな“掟破り”だ」

「ああ。どうやら、組織の中でも“ボス”の思想に反発するやつらが、いくらかいるらしいぜ。そういったやつらが、好き勝手に自分らで新たな“シノギ”を求めて、動き出しているらしい」


 この言葉に、ミハルもメモを取る手を止めた。


「なら、あの店に来ていたのは、その“掟破り”をやろうとしている、組織に反発するメンバーってことですか」

「ありえるね。んで、その反発してるやつらと、例の仏さん――シヴヤは何かしら繋がっていた。“製薬会社”の人間が、“麻薬”を売り払うやつらと隠れてこそこそ出会っていた。偶然とはどうにも思い難いね」


 なんとなく確証こそないものの、事の概要が見えてきた気がする。

 アイリスは手元のコーヒーには手を付けず、どこか悲しそうに呟いた。


「あの人は――シヴヤって人は、悪い人だった……のかな……?」


 人にはいくつもの顔がある。

 どれだけ見た目が純朴そうでも、どれだけ誠実な人間に見えても、それはただの“仮面”に過ぎない。

 どこまで目を凝らしたところで、人間はあくまでその人の“外郭”しか、見据えることはできないのだ。


 そんな当たり前の現実に、アイリスもとっくの昔に気付いている。

 だが一方で、それを信じたくない自分がちらほらと現れ、葛藤してしまう。


 どこか非情だと分かっていても、ナデシコはあえてはっきりと告げた。

 感情論ではなく、毅然とした論理的な思考で、事件に立ち向かうために。


「どうやら、そうみたいだね。まだ推測でしかないが、シヴヤってやつは製薬会社に務めながらも、マフィアと手を組んでいた。もちろん、ただ仲が良いからランチを一緒に――なんてことじゃあないだろうさ。そこには、お互いが得するための“なにか”があったんだろう」


 何一つ確証はないが、そう仮定すると色々とつじつまが合う。

 繁華街から離れた路地裏にある、隠れた洋食屋。

 そこに集っていた製薬会社のエースと、マフィアの面々。

 

 そこで交わされていた“なにか”まではまだ見えてこないが、それでも今までよりぐっと、一同は事の“根幹”に近付いた気がした。


 どかりと背もたれに体重を預けつつ、モンジュはため息をつく。


「俺が知ってるのは、本当にその程度なわけ。まっ、お前達が何を探りたいのかはさっぱりだが、手を出さないのが身のためだぜ。『ベスティア・ファミリー』は、さっきも言ったがこの街随一の“黒組織”だ。普通に生きている分には無害だろうが、手を出せば最後、何があるか分かったもんじゃねえ。だからこうして俺らも、自分らなりに“シノギ”を上げて、それのおこぼれを貰う程度しかできねえわけさ」


 どこか自身を卑下ひげしながら、男は笑う。

 きっとナデシコらが思っているより遥かに「ベスティア・ファミリー」という組織は強大で、底が見えないのだろう。


 思わず言葉に詰まってしまう一同。

 だがやはり、ここまで来て立ち止まるという選択だけは、取るつもりはない。

 ナデシコは腕組みしたまま、前を向く。


「なるほどなるほど。ありがとうね、先輩! 助かったよ。そういうことなら、これ以上はまた、こっちで調べるからさ」

「おい、まじかよ。お前ら、本気で『ベスティア・ファミリー』にちょっかいかけるつもりか?」

「ちょっかいだなんて、そんな。こっちはただ、はっきりしたことが知りたいだけさ。なにせこっちも、色々と巻き込まれちゃってる部分がある。確かにマフィアは怖いけど、だからといって“泣き寝入り”だけは、ごめんなんでね」


 最後の最後まで不敵に笑うナデシコ。

 そのあっけらかんとした姿に、もはやモンジュは何も返すことができない。

 男は「やれやれ」と肩の力を抜き、だらしなく椅子に腰かける。


 目の前のコーヒーをまたも飲み干し、男は諦めたように一同を流し見た。


「物好きなお嬢ちゃんだこった。まっ、好きにしな。そっちがどうなろうが、俺としてはあくまで無関係なわけだからな」


 その言葉を捨て台詞に、彼は立ち去ろうとしたのだろう。

 減らず口を叩く男に、ナデシコらは苦笑を浮かべていた。


 だが、立ち上がろうとした彼を、少女の言葉が引き留めた。


「あの……」


 か細い声に、男は「ああん?」と切り返す。

 モンジュだけでなく、ナデシコ、ミハルもまた声の主を見つめる。

 

 アイリスは椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばしたまま、男に向かって問いかけた。


「あなたはなんで……あんなことを、してるんですか?」

「あんなこと?」

「その、えっと……何も知らない、旅行客の人に声をかけて……あんな風に、その……」


 どこか言い淀む少女が問いたいことを、それを投げかけられている本人が真っ先に察する。

 モンジュは「ああ」と声を上げ、後ろ頭をかいた。


「言いたいことは分かるぜ、嬢ちゃん。世間知らずそうな女を勧誘して、あれこれ裏の店へと斡旋――俺らの“常套手段”だ。簡単だよ、それが一番楽に稼げて、“シノギ”になるからさ」


 シノギ――すなわち、組織に収める上納金を生む手段。

 男達にとってはそれが、無知で無垢な旅行客の女性に声をかけ、様々な“夜の店”のキャストとして引きずり込むことだった。

 

 他ならぬアイリス自身、一度はその毒牙にかかりそうになったのである。

 改めて聞いても、あまり気持ちの良いものではない。

 

「えっと……なんでわざわざ、そんなことを? もっと他に……世の中にはいろんな仕事があって……お金を稼ぐことだって、いくらでもできるのに……」


 たどたどしい少女の言葉で、一同は彼女の抱いた疑問の本質をくみ取る。

 誰よりも先にそれに反応したのは、やはり言葉を投げかけられているモンジュだった。


 モヒカン頭の男は少しだけ、笑った。

 だがそれは決して痛快なものではなく、どこか皮肉とさげすみを込めた、後ろめたい色をしている。


「なるほど、ねえ。こんだけ世の中には“真っ当”に金稼ぎができる人間がいるのに、なんでまたあえて、そんな犯罪まがいの稼ぎ方しかできねえのか、ってか。いかにも“綺麗な世界”の考え方だぜ」


 アイリスは思わず、「綺麗な世界」と繰り返す。

 モンジュは腰を据え、アイリスを真っすぐと見つめ、答えた。


「俺はな、お嬢ちゃん。10歳のガキの時から天涯孤独なわけよ。元々、親父が酒乱なせいで、毎日暴言、暴力の糞みてえな一家だった。その上、おふくろが交通事故で死んで、その後に親父も頭いかれちまって、首吊って死んだんだ」


 アイリスの喉元から「えっ」という言葉が漏れる。

 ナデシコ、ミハルもまた、男の語る“過去”の重みに、たじろいでしまう。


「ゴミ溜めみてえな世界を、泥まみれ、血まみれになりながら転がってきて、気が付いたらここまで来ちまった。俺だって理解してるわけよ。俺のいる居場所が、社会からすりゃ“間違っている”ってことくらいはな。けどよ、その上で分かってるんだ。今更、お嬢ちゃん達がいるような明るい場所には戻れねえ――ってことをな」


 それはきっと、男が今日まで歩んできた人生の中で、悟ってしまったことなのだろう。

 ナデシコやアイリス、ミハルが生きてきた世界と、彼の見てきたそれは、まるで違う。


 だからこそ、男にだってアイリスの疑問は、痛いほど理解できていた。

 それを不快だとも、間違っているとも思わない。


 ただ純粋に、何故かその言葉を少女に伝えていた。


「やり直せる、だとか。頑張ればきっと、だとか。世の中の奴はそんな言葉を、軽く口にしやがる。けどな、一度、影の中を歩いちまったら、それはしっかりと焼き付いて離れなくなるんだ。どんなに抜け出そうとしても、魂そのものに、その色が染み付いちまうんだ。そうなっちまったら、もう駄目さ。そんな生き物にとって、お嬢ちゃん達が生きる社会ってのは、眩しすぎるんだ」


 どんなに間違っていても、どこまで汚れていても、これもまた彼の人生の結果だ。

 生きるためにあらゆることを許容し、時には奪い、時には暴力を振るった。

 手に入れた力に酔う内に、どんどんと自身の魂に取り返しのつかない“けがれ”は染みついていく。


 自身が歩んできた道の暗さを、しっかり覚えている。

 だからこそ、自身が犯してきた罪の数だって、嫌というほど理解できる。


 彼らが“白”の世界に来るには、その足元は“黒”過ぎるのだ。


「きっと『ベスティア・ファミリー』は、俺みたいな野郎――影の世界でしか生きられない“獣”みてえなのを、集めてるんだ。世間から見りゃおかしな連中かもしれねえが、お嬢ちゃん達の世界に法があって“正義”が救いになるように、俺らにも――“悪”にもそれ相応の救いが存在するのさ」


 その言葉は、今のアイリス達にはあまりにも難解で、理解しがたい内容だった。

 表の世界で生きてきた三人にとって、どこまでいってもマフィアは“悪”であり、間違ったものと定義されてしまう。

 

 だが男の言葉を聞いた今、それはどこか一方向のみを見た、浅い見解にすら思えた。

 それを“悪”だと決めつけたい自身と、どこか許容しようとする自分とが、激しく葛藤を始めている。


 うろたえ、視線を落とすアイリス。

 その少女の横顔を、ナデシコはため息混じりに見つめる。


 外の世界を知らないアイリスにとって、これから立ち向かおうとしている相手は、あまりにも強大で、凶悪で、そして――複雑なのだ。


 言葉を詰まらせる一同の前で、ようやくモンジュは立ち上がる。

 彼は財布の中から数枚の札を取り出し、テーブルの上に置いた。


 おごりだ――と言わんばかりのその態度に、慌てて断ろうとするナデシコ。

 だが、こちらを見下ろす男の悲しげな瞳に、何も返すことができなかった。


「じゃあな、お嬢ちゃん。悪いことは言わねえから、身を引きな。俺らみたいな“影”の世界に来るには、お前達は綺麗すぎる」


 それだけ言い残し、男はずかずかと、周りの目も気にすることなく店から出て行った。

 取り残された三人はしばし何も言えず、座したまま思いを巡らせてしまう。

 

 いつしかアイリスはテーブルの下で、己の拳を握りしめていた。

 

 恐れおののき、願わくば二度と出会いたくない怨敵のはずだった。

 そんな彼が最後に見せたあの瞳に、なんだか心が締め付けられてしまう。


 何一つ、知らなかった――彼がなぜ、あの場所にいるのか。

 彼がどうして、あんなことをしているのか。


 彼の背負ってきた“影”と向き合い、ただただ、悲しみだけが心を締め上げる。

 自身が見てきた世界の像が、いかにかたより、綺麗事ばかりだったのかを痛感した。

 

 微かに残ったコーヒーの表面に、アイリスの悔し気な表情が浮かぶ。

 少女は黙ったまま、ただ自身の美しい唇を噛みしめていた。

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