第51話 ゴミ流星群です

 ドンドンー


 太鼓の音が戦場に鳴り響いた。


 王国軍の進軍の合図だ。


 王国軍総勢約一千人が押し寄せてくる。


 連邦国はダレン将軍という人が軍を率いていた。


 ヘルドさんの隣領の領主兼将軍らしい。


 ダレン将軍は速やかに反撃の攻勢に出た。


 お互いに制御出来ない大人数がぶつかり合う。


 怒声。


 罵声。


 悲声ひせい


 恨声えんせい


 戦場には、あらゆる人の声が響いていた。


 僕はヘルドさんの隣から静かに戦場を見下ろしている。


 王国には良い思い出がない。


 だからと言って、王国軍にむざむざ死んでほしいとは思わない。


 勿論、連邦国軍もだ。


 何故、両国は戦争を起こし続けるのだろうか……。




「そんなの決まっているだろう。皆、自分が可愛くて、他人を踏みつけたい欲望の為だろう」




 ヘルドさんが、僕の独り言に反応してくれた。


 屋敷で暮らしていた頃。


 お父様もそうであった。


 いつも何かに追われているように、ピリピリして、他人を見下していた。


 僕は……そういう風にはなりたくないね。



「アレク。お前の力で、向こうの軍にちょっかいは出せるか?」


 ヘルドさんが指さした場所には、王国軍の第二陣が待機している陣営だった。


「えっと、距離が遠いので、回収・・は出来ませんが、届かせる事は出来ます」


「そうか、ならやってくれ」


 ヘルドさんの指示に大きく頷き、僕は王国軍第二陣に向かって、両手を上空に突き出した。




「スキル! ゴミ召喚! ゴミ流星群!」




 僕から見て遥か空に、それ・・は現れた。


 大量のそれ・・は、着地点に目掛け、上空から真っすぐ飛んで行く。


 そして――――数十秒後、それ・・は王国軍第二陣を優しく包んだ。




 遥か遠くだけど、第二陣がパニック状態に陥ったのが良く分かる。


 そりゃそうか……いきなりの激臭が襲ってきたら、普通の人々では対応も出来ないだろう。


 因みに、鼻を止めても、口から吸っても分かるくらいには激臭だからね。


 うんうん。


 皆、慌てて戦場から逃げ出した。


「グハハハハッ! やっぱお前は面白いな! 何だあの力は!」


 ヘルドさんも遠目で王国軍第二陣を眺めながら、大笑いしている。


「僕は元々『賢者』になりたかったんですけどね、なれなかったので、『賢者』様の最強魔法『メテオ・ストライク』を真似て作ったスキルなんですよ」


「『メテオ・ストライク』だ!? グハハハハッ! あんなもん、メテオよりたちが悪いわ!」


 これは、今の僕の必殺技。


 ゴミ流星群だ。


 特殊召喚により、挙動を決められるので、あんなに遠くまで飛ばす事が出来るのだ。


 ただね……遠すぎて、残念ながら回収はできないので、僕が行くまで、あの地は凄い事になっているはずだ。



「さーて、そろそろ本番が始まるかな?」


 ヘルドさんの言葉と共に、王国軍の遥か後ろから轟音が響いた。


 ――――そして、真っ黒い炎の爆炎が戦場を飲み込み、そのまま連邦国軍とダレン将軍を飲み込んだ。




「ああ~ダレンくん、終了だな~」

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