第50話 戦場ですか?

 ヘルドさんに連れられ、僕とアイリス、そしてグニールさんという槍使いの名手のの四人で、戦場に向かっていた。


「ガハハハッ、お前らしいというか、ダークキャットの正体も知らずに飼うなんて、やるじゃねぇか」


「そんなに笑わないでくださいよ……そんな狂暴な動物だとは思わなかったんですから……」


「まさか、ダークキャットを『封印のゲージ』から外に出すやつがいるとはな、まあ、あいつもお前らを気に入ったみたいで大人しくしているしな」


「うう……ヘルドさんが本気に身構えるくらい怖いんですよね……」


 アイリスの頭の上に乗っていたダークキャットを見たヘルドさんは、真っ先に剣に手を翳して、ダークキャットについて聞いてきた。


 事情を説明すると、笑いこけてた。



 アイリスは、名前を『グレン』と名付けた。


 雄のようなので、グレンくんだね。


 それと、肉を好むけど、食べる量は少なくて助かった。


 もっとガツガツと食べると思ったら、意外と小食みたい。


 あと、物凄い頭が良い。


 人の言葉も理解出来ていた。


 ――――流石、呪いの森の災厄『ダークキャット』である。




 ◇




 馬車で揺れる事、数時間。


 僕達は意外に早くも前線に着いた。


 この馬車を引いてる馬は、普通の馬ではないらしく、ヘルドさんの愛馬のスレイプニルという馬らしい。


 普通の馬より、五倍は早かった。



 前線の空気は、一言で言えば、全員がピリピリしていた。


 王国軍がいつ撃って出るか分からなくてピリピリしているみたい。


「アレク、戦争が始まったら、お前にも少し手伝って貰うぞ」


「……いいですけど、僕はあまり人を殺めたくはないので、足止めくらいでいいですか?」


「なっ!?」


 僕の言葉にグニールさんが反応する。


 あ……やっぱり、ヘルドさんにお願いして、ライブラさんにして貰ったら良かったな……まさか、渡した豚肉でまた食って呑んで寝をしているなんて……。


「ヘルド様! 何故、このようなやる気のないやつを!」


「グニール、こいつは特別だ。気にするな。それとアレク、お前のやり方でいい。俺様を勝利に導けばなんでもいいぞ」


 グニールさんが拳を握りしめ、震えあがっている。


 そもそも、僕は戦う為に来たわけではないんだから……そんなに怒らなくても……。




 そんなやり取りをしていた時。


 遠くで、物凄い歓声があがった。


 ――――ヘルドさんは小さく、「来たか」と呟く。



 それに呼応するかのように、連邦国軍も鼓舞し始めた。




 ◇




 ◆????◆


「ねえ、例の男があっち側にいるよ?」


「ん? 例の男? 誰だ?」


「ほら、あのゴミ集めてる男」


「ああ、変な能力使うやつか」


「そうよ、どうやらヘルドと一緒みたい」


「…………それはめんどくさいな。雇用主に報告した方がいいな」


「ヘルドだけならまだしも、あんな化け物・・・も一緒だと、軍隊は壊滅だね」


「だな。あんなやつ殺すのは簡単だが、ヘルドが一緒となると先に王国軍が全滅だ」




 以前、アレクの町の近くに現れた男女は、冷静な判断を下し、また風のように消えていった。

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