第20話 助かりましたか?

「ッしゃおらぁああああ!!」


 アースの気合が入った剣戟が暗殺者を襲った。


 暗殺者は素早く、後方に剣戟を避けた。



 シュッ――、カン。



 避ける際、投げたナイフをアースが弾いた。


「相変わらず、汚いやり口だな」


「…………」


 アースがもう一度仕掛けた。


 暗殺者はゆるりと避けながら、攻撃を試みたが、アースも全て弾き返した。


「スキル、ベノムダガー」


 暗殺者の手元に禍々しい刃が数点現れた。


「スキル、空間振動」


 暗殺者から放たれた刃は、アースの前で止まり、ブルブル揺れて消えた。


「貴様……アースクエイクか……」


「懐かしい名を覚えてくれるなんて、嬉しいね」


「くっ」


「スキル! 空間波動!」


 ゴゴゴゴゴゴ――


 アースと暗殺者の周辺の目に見える程、空気の激しい揺れが現れた。


「逃がさないぜ、俺と会ったのが運の尽きだと思え」


「スキル! ダークイリュージョン!」


 暗殺者の周辺に黒い霧が発生した。


 それを見たアースが剣を大きく構えた。


「そんなまやかしなぞ、丸ごと斬ってやるよ! スキル!! 波動剣!!!」


 アースの剣が黄色に光り、空を斬ると、目に見える程の激しい揺れの波が暗殺者を襲った。


 グゴゴゴゴゴゴ――


 激しい揺れの波が暗殺者の霧を丸ごと飲み込んだ。


「ぐあああああ」


 霧が消え、そこにはさっき程五体満足だった暗殺者が色々・・ねじれていた。


「『ロキ』が関わっているとは……こんな下っ端とは言え……アレクの方は大丈夫だろうか」


 アースはそんな言葉を呟きながら、暗殺者の首を跳ねてトドメを刺した。




 ◇




「シーマくん!」


 部屋の扉を開けると中には、身体中怪我だらけのシーマがいた。


 しかし、目には勇ましい光が宿っていた。


「貴方は……リグレットさんでしたね」


「ああ、アースと共に助けに来たよ、ほら、あんたの町の人達もいるさね」


「ハリスさん!? 皆さん、ありがとうございます」


 リグレット達は急いでシーマを縛っていた器具を取り外した。


「アースが今、暗殺者と戦っているよ」


「アースさんが……そうですか……、さっきからの騒ぎは……あいつの仕業ですか?」


「ええ、君のために一生懸命になっていたよ」


「そうか……、僕は良い友達を持ちましたね」


「そうさね。友達は大切にしないとね」


 シーマは何処か悲しい表情をしていた。


 言わなくても、皆知っていた。


 きっと、ピエルの事を思っているに違いないと――。




 ◇




 部屋から逃げ出したリグレット達は元の場所に戻るとアースが待っていた。


「アース! 無事だったわね」


「アースさん、ありがとうございます」


「おお、シーマくん。こちらこそ、助けに来るのが遅れてすまなかった。リグレット達もありがとう」


「それで、アレクは?」


「ああ、外で待機している。もしかしたら追加で来られると大変だから、今のアレクならそれを止められるからね」


「そうですか……アレクはもうそんなに強くなったんですね」


「ああ、あいつ、とんでもなく強くなっているぞ」


「ははは、たった一週間見てないだけで、僕も負けてられませんね」


「ははっ、まず町に帰ったら驚く事が沢山あるだろう。楽しみにしておくといい」


 期待と不安を胸に、シーマはアース達と逃げるのであった。

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