第8話 発声ですか?
今、僕の前には、無数の町民達が並んでいる。
何故かって?
僕の新しいスキル『クリーン』が大反響だからだよ!
ピエルくんとシーマくんが滅茶苦茶綺麗になって、それが物凄い速度で噂が広まった。
その日のうちに、自分にも使ってくれと数人が来た。
あまりにも来るもんだから、アイリスちゃんが怒って、仕事終わってから一時間だけ、順番通りに! と勝手に決められた。
なので、僕は毎日、食材探しを終えると、ゴミ収集の仕事を終え、更にクリーン仕事も行うのであった。
しかし――――。
初日から、僕は大きな壁にぶつかっていた。
それは――――、なんと!!
「スキルとクリーンを言い続けて、喉が痛いんですぅうううう!!!!!」
実は、スキルを使用する際の詠唱(?)は、普通に言うだけでは発動しないのだ。
こう――腹から声出せよ~! みたいな感じで言わないと、発動してくれないのだ。
だから戦士系統の人とか、「スキル!!! 粉砕撃!!!!」みたいに気合いを入れて叫ぶのだ。
しかも、この気合いを入れないと発動してくれないスキルは、気合いを入れれば入れる程、強くなるという裏仕様があった。
声でかい人が得じゃねぇかよ!?
中には、このスキルを大きく発声するために、発声練習をしている人もいるとかいないとか。
僕も……発声練習しなくちゃいけないのかな?
◇
僕の喉が限界だったので、これからは毎日十人だけと決まった。
スキル『ゴミ収集』は一度唱えれば、ずっと発動し続けるから、とても優秀なスキルだ。
『クリーン』もな――――効果は素晴らしいのに……大声で唱えるのがな~。
それと『クリーン』をかけた町民達はとても良い匂いがするのだ。
このゴミの町で、良い匂いって、それはとても複雑な思いだ。
まあ、数日もすると、すぐに元通りに戻るんだけどね~。
あれからまた毎日、ゴミ収集とクリーンを使い続ける日々が続いた。
ヴァレン町のゴミの山も、目に見えて減ってきていた。
『デッドゴミ』さえ無くなれば、割とゴミは処分出来るし、今では古代機械とかいうのと同じくらい僕が処分しているしね。
ただ、僕の『ゴミ収集』は大型ゴミは収集出来ないので、大型は基本的に古代機械に任せていた。
小型の人が持てるくらいのサイズは一か所にどんどん集めて、僕が一瞬で収集して消していった。
毎日アイリスちゃん達と食材を探して、ゴミ収集とクリーン……何だか充実した生活になってきた。
そんな中、僕達に大きな悲劇が起きた。
それは『クリーン』が始まって、一か月後の事だった。
「じいじぃ!!!!」
アイリスちゃんの悲痛な叫びが町に響いた。
――――――他でもない、僕達の拠り所だったマイケル爺さんが倒れたのだった。
あれからアイリスちゃんはマイケル爺さんの看病に専念するようになった。
「なあ、アレク」
「ん?」
いつもの食材探しも、最近では元気もなく続けていた。
「マイケル爺さんを助ける方法はないか?」
「ん……、あったら……もう助けているよ」
「そりゃそっか……」
僕とピエルくんが大きく溜息を吐いた。
それを聞いていたシーマくんが口を開けた。
「実は……僕、一つだけ、方法があるんだ」
「え!? マジ!? なんでそれを早く言わなかった!!」
僕とピエルくんはシーマくんの肩を掴み、藁にも縋る思いで、彼の目を覗いた。
「ごめんね、二人とも……でも、僕一人じゃ出来ないし……マイケル爺さんから秘密にするように言われていたから……」
「シーマくん、マイケル爺さんは僕の大恩人なんだ。僕に出来る事なら何でもする。秘密なら一生守る。だから何でも言ってくれ」
僕はシーマくんの手を握り、頼み込んだ。
「分かったよ。僕もマイケル爺さんには死んで欲しくないから――、二人とも、今から言う事は――――――」
シーマくんの言葉に望みをかけ、僕達はすぐさま行動に移るのであった。
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