第1話 ここは何処ですか?

 ※この作品はこの先、ずっと『ゴミ』を連呼します。『ゴミ』という言葉にトラウマがある方や妊婦さんにはおすすめ出来ませんので、ご注意ください。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 追放されてから、どれくらいの日にちが過ぎたのだろうか……。


 僕は、何やら布袋に入れられ――――


 何処かに運ばれていた。


 流石に、あのお父様とはいえ、最後の情けくらいはあって、殺したりしないだろうけど……。



 あ~、お腹空いた…………。


 誰かご飯を……って、僕はもう捨てられたんだからご飯なんてないか。



 それから数時間、馬車の揺れが止まると、僕が入っていた布袋の上部から光が差し込んで来た。


 お――――。


 この布袋から出られるのか!


 と思った矢先、一つの黒いパンが投げられた。


 そしてまた、真っ暗になってしまった。



 あっ、はい。


 飢え死にはさせないのね。


 取り敢えず、お腹が空いていたので、今まで食べた事もなかった固い黒パンを食べた。


 う~ん。


 まあ、固いけど、腹に入ればみんな一緒だ。


 うん。


 美味し――――くはないな。




 ◇




 あれから暫く、黒パン生活が続いた。


 三十回程投げられたから、僕が馬車で運ばれて十日くらいなるのだろうか。


 おっと、また馬車が止まった。


 そろそろ、ご飯の時間か?



 ――――と思っていた時、僕の身体が誰かに担がれた。


 そして、地面にそのまま落とされ、布袋が開いた。



 ああ――――久々の外だな~。



 外に出ると、そこには二人の男がいた。


 見た事ない人達だ。


「よう、坊ちゃん。長旅ご苦労さん」


「ゲホゲホ、こちらこそ……ありがとうございました」


 そんな僕を見つめながら二人が大笑いをしていた。

 


「まあ、俺らを恨むんなら実家を恨めよ」


「え? いえいえ、恨むだなんて、そんな事しませんよ」


「ほう、自分はどんな状況なのかも分からないのか……後ろを見てみな」


 そう言われて、僕は後ろを振り向いた。


 そこにあったのは――――




 綺麗な――――――――ではなく、物凄い『ゴミ』の山だ!!!!




 えええええ!?


 ここは何処!?


「ここはな、世界の『ゴミ』が集まってくる町『ヴァレン』という町だ」


「『ヴァレン』ですか……随分と遠い所まで来ましたね」


 ヴァレン町は世界で最も有名な町の一つだ。


 その理由は、世界で処理しきれない『ゴミ』がこの町に送られるからだ。



 『ゴミ』は火魔法で燃やせば一瞬で消えるのだが……、


 火魔法が使える魔法使いはみんな『ゴミ燃やし』仕事を嫌う。


 それもそうだよね。


 だって物凄く臭いし、汚いからね。



「坊ちゃんはこの町に捨てられた訳だ、あとはどう生きようが自由だろうけど、間違ってもハイリンス家には近づかない事だ」


 その言葉を残し、彼らは来た道を戻って行った。




 さて……どうしようか。


 まあ、悩んでも仕方ないから、取り敢えずあの町に行ってみるか。




 ◇




 うん。


 右を見ても、左を見ても、前を見ても、そこには――ゴミ、ゴミ、ゴミ。


 見事に『ゴミ』しかないね。



 『ゴミ』に気を取られていると、前方からヨレヨレのお爺さんが近づいて来た。


「ふむ、お前さん。捨てられたんじゃろ?」


 お爺さんが尋ねてきた。


「はい……。さっき辿り着いたばかりです」


「そうかの……、さて、行く宛もないじゃろ、どうじゃ、わしんとこに来るかえ?」


「え!? いいんですか!?」


「おう、但し、わしの孫に手は出さないようにの! そりゃ~別嬪さんだからの~」


 どうやら、お爺さんの家にはお孫さんも一緒みたいだ。


 そんな家に僕を連れてっても良いのだろうか?


「かかか~、お前さんみたいなひょろい男なんぞ、連れてっても大した事もあるまい、それにわしはこう見えても人を見る目は確かじゃ、お前さんがそんな輩ではない事くらいお見通しじゃ」


 そんなお爺さんに連れられ、僕は初めて、自分が生まれた屋敷以外の新たな家に向かった。




 ◇




「ただいまじゃー」


「お帰り~じいじぃ~」


 それはもうボロボロな家で、壁や扉もあったもんじゃなかった。

 

 そして中に入ると、中々の別嬪・・さんがいた。


「ん? じいじぃ、今度は人間拾ってきたの?」


「おう、てられておっての」


「ふ~ん」


 彼女は僕を下から上までじーっと眺めた。


「あんた、名前は?」


「僕はアレクだよ」


「ふ~ん、歳は?」


「十歳~」


「ふ~ん、ギフトは?」


「えっと……笑わない?」


「ん? 笑う訳ないじゃない」


 彼女はキョトンとした表情でそう答えた。


 うん、これから一緒に暮らすんだし、答えておこうか。


「僕のギフトは――――『ゴミ箱』だよ」



 それを聞いた彼女は、一時間くらいずっと笑いこけていた。


 人って信じちゃいけないって学びました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る