第7話
僕の頭の中は、寝ても覚めても由樹ちゃんで飽和状態だった。が、暫くの間、セックスから遠ざかっていた僕は、性欲の塊だった。その日は、どうしてもセックスがしたくてたまらなかった。ネットで風俗情報を漁っていると吉原の「L」というソープランドが目に留まった。そこの美佐という女の子が気になった。そして、電話で美佐という女を予約してしまった。夕方の六時に。
約束通り鶯谷の駅前で待っていると、黒塗りの車が、僕を迎えに来た。その後、店の待合室で少し待っていると、僕の番号札の番号が呼ばれて美佐と対面した。写真通り、小麦色の肌をしたスレンダーな体のギャル系の女の子だった。僕は、溜まっていた欲のすべてを美佐に放出した。僕の身体は、浄化され、気分が晴れ晴れとしてきた。その後、渋谷に出るか新宿にするか迷った挙句新宿に行くことにした。歌舞伎町の居酒屋で、軽く飲んで食べた。身体に入る全てのものが五臓六腑に染み渡り、何だか調子が出てきたのでキャバクラに行くことにした。スマートフォンで、あれこれ調べて「P」という店に行くことにした。そこで、愛という女の子を写真指名し、中へ通された。僕は、その時かなりハイテンションだったので愛という女に饒舌に対応していた。そこに、二時間いて店を出た。財布の中が、かなりヤバい状態だったので。牛丼の並を一杯食べて、家路についた。僕は、久しぶりに楽しい時間を過ごせたことに対して感謝の念を抱いた。
その年の夏は、酷く暑かった。冷房をつけて、部屋でごろごろして過ごすことが多かった。その頃の僕は、由樹ちゃんのことをあまり考えなくなっていた。
そんな時、僕はあの近所のファミレスで由樹ちゃんをまた見つけてしまった。ちょうどお盆の時期だったので、東京に戻っていたのかもしれない。僕は一人でかき氷を食べていた。由樹ちゃんは、またあの頭のよさそうな男と楽しそうに食事をしていた。由樹ちゃんは、僕を一瞥したけど何食わぬ顔で男と食事を楽しんでいた。
次第に僕は、由樹ちゃんと食事をしている男が誰なのか問い詰めたくなった。前回、ここで楽しそうに食事をしている二人を発見したときは、僕は何もしなかったが、今回は問い詰めてやろうという気持ちに段々となってきた。はっきりさせれば僕は由樹ちゃんをきっぱりと諦められるかもしれない。そのように僕が思ったのは、相手の男が九分九厘由樹ちゃんの彼氏だと決めつけていたからである。
僕は、由樹ちゃんたちがいるテーブルのほうへ歩いて行った。
「由樹ちゃん、久しぶり」
「あー、こんにちはリョウちゃん」
「この方誰か教えてよ」
僕は、勇気を出して聞いてみた。
「知りたい?どーして知りたいの?」
「……」
「なんでそんなこと聞くのよー!」
「はっきりさせたいから」
「何をはっきりさせたいの?」
「……」
この時、僕は心の中で由樹ちゃんをきっぱりと諦めるためと呟いた。
「じゃー言うわよ、大事な人よ!」
「やっぱりそうだったんだ。お幸せに」
僕は、肩を落としてレジへと向かった。その時、由樹ちゃんの大きな声が店内に響いた。
「弟よ!」
みんなが僕たちの方を見ている。
「それ、マジかよ」
「嘘ついて、どうするのよ!」
「じゃー訊きたいことがあるんだけど」
「何をよー!」
「どうして黙って長崎に行っちゃうんだよー」
「別に、リョウちゃんには関係ないことなんだからいいじゃない」
「関係ない? 冷たいなー」
この後、二人は見つめ合ったまま黙っていた。そして、由樹ちゃんは店を出て行ってしまった。
僕は、呆気にとられていた。
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