最適化された広告

 20××年。肥大し続けた広告業界はついにパーソナルスペースまで犯すようになった。


 外を出歩けば、町中に広告のための機械が設置されている。機械は町行く人々の容姿、年齢、行動パターンを分析し、長年蓄積したデータから判断して、その人当人にもっとも効果のある特別な広告を打つ。


 孫の手を引いたおばあちゃんには新発売のゲーム機器を、子犬を連れて散歩している主婦には今季売り出し中の子役アイドルを、爽やかな青年には海外からの指摘で姿を消しつつあるロリコン向け青年誌を。


 一見しては常人には測り得ない趣味でさえも、機械は正確に判断する。


 それがあまりにも正確なので、ある人などはプライバシーの侵害だ! などと訴えたこともあったようだが、企業側は統計による判断との立場を翻さない。


 結局、訴えた側の人間はいつの間にか姿を見せなくなった。無駄だと悟ったのか、それとも……。


 今のご時世、広告から逃れる術はない。目にする広告すべてを消そうと考えると、庶民には少し手が届かない料金の月額料金を、広告会社のアライアンスに徴収されることになるし(広告税などと揶揄されている)それを払ったとしても古来から続くアナログな広告は依然としてそこに存在し続ける。


 もうそれすら嫌なら『耳と目を閉じ、口を噤んだ人間』になるしかない。


 そういえば、来月発射予定の長距離探査宇宙船にも、外装には広告がぎっしりと詰まっていた。


 宇宙人にでも見せるつもりなんだろうか? 


 資本主義の奇形児と化した広告ロケットが宇宙へと飛び出す。


 これだけ聞くとなんだか愉快に聴こえるものだが、改めて考えるとずいぶんおかしな世界になったものだ。

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