第四章 昼寝好きなドリーマー 4

 「む……むむむ」


 ヒビキはうめき声を上げながら目を覚ます。悪夢から目覚めたのだ。


 「よお」


 近くに座っているアズマが、軽く声をかける。そしてにやにやしながらヒビキに言う。


 「昼寝はもういいか、ドリーマー」

 「うん、ごめん」

 「からかってんだから謝んなって」

 「意識干渉をしたのね。普通血液型が違うと、血がなじむまで時間が掛かるらしいけど、ずいぶん速かったわね」


 ふふんと鼻を鳴らし、得意げに言う。


 「俺はO型だからな」

 O型は他の血液型にも輸血できるように、他の血に馴染みやすい。トランスセクシャル・バスターズは他の人の血液を入れたところで死なないが、馴染みやすさで即効性は変わってくる。


 「ヒビキ、俺が倒した怪異は一匹だけだ。だからまだ残ってる」

 「わかった。今すぐ向かうわ」

 「おう、一緒に行こ――」


 アズマは立ち上がろうとする。


 「う⁉ ううううう……」


 その場でうずくまり、壊れた機械みたいな細く高い声が漏れる。


 「アズマ?」


 ヒビキはアズマの体に触れる。怪我をしてるのかと体をまさぐる。


 「おいおい、ヒビキさんよ。腐っても俺は乙女なんだぜ。急に体を触られたらびっくりしちゃうぜ」

 「なにいってるの馬鹿! 大怪我してるじゃない!」

 アズマは重体だった。


 肋骨は三本折れ、ふくらはぎは肉離れ、左肩は脱臼。血はあまり出ていなかったが、見ればわかる怪我で、それを一目でわからなかったヒビキは少し罪悪感を感じた。


 「アズマはここでじっとしてて! 私あと一人を倒しておくから」

 「お前一人で行って負けたんだろ」


 脱臼してない方の手をぶらぶらと振って、ため息をついた。


 「大丈夫」


 状況に見合わない、自信のある声と素振りだ。


 「もう負けないから」

 「ほんとにぃ~?」


 信じ切れないアズマはうねりのある声を出す。

 ヒビキは何も言わず、アズマを見つめる。


 「わーったよ。わかったわかった。どうせ俺も動けねえしな、俺はここに居る人を保護しに来る救助隊に説明しとくから、行ってこい」

 「うん、よろしく」

 「行ってら」

 「行ってき」

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