第2話
次の日の昼休みにうちの学園はアニメみたいに屋上が開けていないから談話室で一人黙々と義妹の作ってくれた弁当を食べる。
雅也はいつも付き合っている彼女の一人と食べ、八都寧は生徒会と風紀委員の仕事で俺は一人で過ごすことが多い。
しかもこの談話室には高そうなソファーがあるからそのまま寝れる。
(さ、寂しくなんかねぇぞ)
「お、お邪魔します、、、って戸神くんがなんでいるの?」
扉が開き、そっちを見ると東崎だった。
「いやそりゃあ、俺はいつもここで昼休み過ごしてるからな」
「あ、そう。前座るわよ?」
「どうぞ?」
宣言通り東崎は俺の前の席に座ると五段のお重を取り出した。
「なに?」
「い、いや、すげぇなと思ってさ。お重を持ってくるやつなんてアニメでしか見た事ねぇ」
「えっ?」
「はっ?」
「お父様はこれが高校では普通って」
「んなわけあるかぁぁ!それが普通だったらヤベぇわ。俺の弁当ぐらいが普通だわ」
堂々と二段の一般的な弁当を見せる。
「へ、へぇ、、メイドに伝えとくわ」
「そういや、お嬢様だったな。東崎って」
「ええ、ここに入ったのも学園長からの推薦よ。ちゃんと編入試験は受けてるけど」
「そりゃあ羨ましい」
「そう?別にお嬢様と言ってもお父様やお爺様が創り上げた結果の産物よ。別に私が凄い訳でもないわ」
「ちゃんとそういうところは分かってるんだな。てっきりお嬢様ってみんな、私はお嬢様よおほほほみたいな感じだと認識してた」
「それこそアニメの世界だけでしょ」
少し笑うと東崎もつられて微笑む。
「お前の笑顔初めて見たかも」
「う、うるさいわね、ばかっ」
「男嫌いだと聞いてたんだけどそんなことないんだな」
「男は嫌いよ。でもあんたは他の男とは違う」
「そりゃあ、俺が男として見れないということか」
「そうじゃないわ。あんたは私のことを顔とか見た目で判断しないのねってそう思ったのよ」
「見た目が全てじゃないからな人は」
「お父様が気に入るのもわかるわ(小声)」
何か東崎が言ったが聞き取れずに聞き返す。
「なんか言ったか?」
「なんでもないわ、独り言よ。そ、それでなんだけど、戸神」
「ん?」
「戸神が良かったらでいいんだけど友達になってくれない?」
「え、友達じゃなかったのか?てっきり友達だったと思ってたんだが」
「そ、そうだったわね。友達よ」
東崎は少し嬉しそうな顔をしていた。
「あれ、珍しい組み合わせ。響也くんと東崎さんだなんて。いつもは響也くんぼっちだし」
遅れて八都寧が談話室へ入ってきた。
「ぼっちで悪かったな」
「私は嬉しいよ、響也くんがちゃんと他の人と昼休み過ごせてて」
「お前は俺のおかんか!」
「東崎さん、これからも響也くんをよろしくね」
「え、ええ」
「だからお前は俺のおかんか!」
「それも悪くない」
「悪くねぇのかよ」
いつものように会話していると東崎が笑った。
しかしどこか寂しそうな顔もしていた。
「仲良いのね、二人は」
「まぁな、十年くらいの腐れ縁だしな」
「羨ましいわね」
「そうか?八都寧は昔な、、」
「ちょっ、響也くん何を言おうとしてるのっ!?」
慌てて八都寧が俺の口を塞ぐ。
「完璧美少女と呼ばれてるお前の理想像を壊してやろうかと」
「え、なんで?」
「いつかのお返しだ」
「あー思い出した。昔、戸神くんがやらかしたあれのこと?」
「覚えててくれて何よりだ」
「冗談なのに、まだ根持ってるの〜?」
「おっと悪い、東崎。こっちの会話分からないのに聞かせて」
「そうだ、東崎さん。今度の土曜日一緒に買い物行かない?」
「えっ?いいの?」
「うん、多い方が楽しいし」
「待て待て、多い方ってなんだ?そりゃあ、まるで俺が参加してる前提だなおい」
「当たり前だよ、君は強制参加」
八都寧が悪魔みたいな微笑みをした。
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