第4話 ホムンクルスと生中継(中編)

 (ギュイン、グオッ、グオッ、グオッ、グオッ)


─地下駐車場に、爆音が響く。


「情報屋がな、来たんだよ。朝っぱらから」


─本日、午前8時30分。帝都湾岸線第10ポータル内にテロ予告あり。─


政府のお偉いさんだよ。差出人。

今時、伝書鳩だなんて古臭い趣味だよ。でも信頼は出来るから良いがな。


タマに様子を見に行かせてよかったよ。どうやら餓鬼が4体居るらしい。そろそろ始まるかもな。


「純ちゃん、撮蟲カメラ私につけて。バイクに並走させたいから。かわいいドゥカティちゃん、綺麗に撮ってくれよな。」


純が、掌を揃えた。そこに息をそっと吹き掛けると、

大きな蜂が次々湧いた。


「3体ほど同行させます。先生、タマはポインター持ってます?戦闘範囲が分かれば、エリア隔離発動させますので。」


「持ってる。タマを中心に半径1キロで隔離かけていいよ。上には言ってあるから、純ちゃんのタイミングでお願い。じゃあ先に行く。ユウ、ちょっとこい。」


手招きされて、俺は顔を近づけた。


─ぶちゅう。物凄いキスをされた。一瞬俺は昇天した。口の中に何かが入ってきた気がしたが、なんだろう。


「んんっ、いきなり、なんだよ!!」


「おまじないだよー。」


僕は、高鳴る胸の鼓動に言い訳を考えることで精一杯だった。


よし、ユウ、純ちゃんの言う事、聞くんだぞいいか。

(グオン、グオン、グオン.......)


「西村さーん!!出るぞ!!ゲート開けてー!!!」


八千代さんが叫ぶと、駐車場の明かりが消えた。守衛所の爺さんが指でカウントしている。パトランプが回る。


「配信開始5秒前。」純がノートPCを見つめカウントする。


4、3、2、1、


グオン、グオッ、グオッーッグオッーッ......


鼓膜が破れるかと思った。電光石火の如く、八千代さんは、ゲートから飛び出して行った。


─おはようございます!今朝の帝都は晴れています。

朝から、ちょっと気になるニュースがありましたが....



速報です。スタジオに戻します。

「只今、政府から緊急避難命令が発動されました。」

「速やかに、南天門通りを通行中の車両は、路肩に停車して下さい。繰り返します。路肩に停車して下さい。」


以上、速報でした。お天気にお返しします!


─はい、こちらお天気情報に戻ります。。。えっ

何かが来る......


(ゥーッ..ウーーーギュゥユーーーンーーーー....)


真っ赤な、ドゥカティに股がるピンク色のツインテール。後ろ姿を時速300キロで追いかける、異形の蜂。

お天気カメラには、一瞬しか映らない。


どちらもどうかしてる。たったの一日で、世界が変わった。俺は今、何を見てるんだ?


「私達も、行きますよ。乗って下さい。」


純は、装甲車の開放されたバックドアに飛び乗った。

車内には、沢山のモニターが配置され、電子基盤が虹色に発光している。

正面の大型モニターには、帝都を爆走する八千代さんが映ってる。


俺達も、パトランプの光からゲートを突き抜ける。守衛所から、白髪の西村さんが笑顔で手を振っている。


「なあ、この車って自動運転なのか?」


「いえ、私が操作しています。実際には蟲が回路に侵入して動かしています。先程、見たでしょ、私はむしを操る。蟲使むしつかいです。」


「それにしても、こんなにハチャメチャやって大丈夫なのか?八千代さんだって一応、民間人だろ?」


この帝都は、我等の拠点です。至るところに戦闘用のギミックを施してあります。大戦の遺産を先生が買い取り、ちょっとした使用変更をしてます。


民間人も多く市街地での戦闘は絶体に避ける。これは、先生が国王と交わした誓約書の絶体条項です。


先生は本来、国際神社庁の官僚です。だからといって傍若無人な振る舞いが許されるわけではありません。

それでも.......


「オペレーション、応答願います。こちらタマ。」


地図上に赤いマークがある。これがタマの現在地だろう。立体画面に切り替わると、そこにタマがいた。


「目標確認。」


「餓鬼が動きます。至急、エリア隔離願います。同時に補給箱転送も宜しく。」


「了解。補給箱は転送済だ。エリア隔離発動。」


空中映像から、タマを中心にドーム状に光が広がる様子が見える。


「エリア隔離成功。生命反応オールクリア。戦闘システム起動完了。先生もエリアに入った。」



歩道橋の上に、1匹。南天門の左右に2匹。背後に1匹か。


自動販売機の横に、[武器]と、表記された箱が置いてある。タマの口元がアップになった。モニターに文字が溢れる。


「では、参ります。」


疾風迅雷。

前傾姿勢で両手にサブマシンガンを持ったタマが歩道橋に飛び乗った。


「ギュゴー!!」餓鬼が、口から溶解液を吐いた。歩道橋は臭気を放ち溶けていく。足場を失ったが宙返りをしながら、発射する。

(ズタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!!!)


至近距離で、撃ち込まれた餓鬼は四肢が千切れた。

振り替えると、南天門にいた二匹が、間合いに入っていた。着地と同時に円を描いて回り込む。


「案外速いんですね。では、これはいかがでしょう?」

倒れた補給箱から、日本刀を引き出した。

身のこなしは、剣術というよりは舞踏だった。

「餓鬼様、なかなか、御上手ですね。」

LaLaLaLa~。

タクトを振るように、大きく刀を降っている。


餓鬼の首が飛んだ。が、次の瞬間、画面一杯に巨大な腕が現れタマを吹き飛ばした。


「くそっ、大型泥人形ダイダラボッチだ。こいつは予想外です。」

純が舌打ちをした。


ビルの間に、巨大な泥の人形が居る。肩のうえに少女が乗っているのか?


「にゃんにゃん、あーそぼ。。」


日傘をさした、女の子が微笑んでいる。






















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