第15話
結局その日ネコが無事に捕獲されたのは、すっかり日が暮れて綺麗な月が夜空に浮かんだ後であった。
すでにネコは他の使用人が元居た丘に返しに行ってくれているが、この2、3時間程でネコがもたらした被害は小さくはなかった。
厨房のお皿がたくさん割れたことや、旦那様の骨董品のコレクションを壊してしまったこと、その他にも捜索に当たったメイドが机で頭を打ったり、廊下で転んだりなど、付随的な被害も多々あった。
そのせいで、レイラがこの屋敷に来てから初めてレイラとエレーナ2人揃って奥様に呼び出されてしまった。
この屋敷において、お説教というのはレイラの場合はハウスキーパーはじめ先輩メイドから、エレーナの場合は教育担当の使用人から受けることが多かった。レイラみたいな若輩者のメイドは基本的には余程のことがないと屋敷の主である旦那様や奥様と面と向かって話をすることなんてない。
つまり、今回の件は余程のことなのである。
煌びやかな椅子に座る奥様と1mほどの感覚を開けて向かい合うレイラとエレーナ。2人とも立っていたが、レイラは怖くて膝の震えが止まらなかった。
今日のお昼にメイドから聞いたエレーナが養子に出されてしまうかもしれないという話が、レイラの脳裏にはよぎっていた。
「2人とも、どうして呼び出されたのかわかるわね?」
奥様は静かな声だけど力強く話し始める。内臓を直接鷲掴みにされているかのような、迫力のある話し方であった。なんと答えれば良いのかわからずその場に立ち尽くしていると奥様は話を続ける。
「エレーナ、前々から思っていたのですが、あなたは少しおてんばが過ぎるわよ」
「ごめんなさい」とスカートの裾を強く握りしめながら俯きながら謝るエレーナに続いて、レイラも深々と頭を下げて「申し訳ございませんでした」と謝罪の言葉を口にした。奥様はそんなレイラの方を鋭い視線でジッと見つめる。
「レイラさん、もしあなたにエレーナの面倒を見るのが難しいのならば、明日からは他のメイドと役割を変わってもらうわ。うちの屋敷でうまくあなたに務まりそうな仕事がなければ他の屋敷に移動してもらっても良い」
先程エレーナが屋敷から追い出されるかもしれないという話を聞いた後なので、思ったよりもレイラにはショックはなかった。問題を起こして家から追い出されるのはこの家の令嬢であるエレーナよりもメイドのレイラの方がずっと納得ができると思ってしまう。
だけど、そんな事情は知らないエレーナが叫び声をあげた。
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