第14話
バスケットの中に入ってしまうような小さなサイズのネコだったから、隠れられてしまえば探すのに苦心するのではないかと思ったが、そんなことはなかった。
屋敷内に勤めるメイドたちの悲鳴やら驚いた声やら怒った声やらが次から次へと聞こえてくるから、その声を辿っていけばネコのおおよその居場所は判断できそうだった。レイラは急いで声のする場所を駆けまわる。
そんな風にレイラが屋敷内を走り回っていると、腹立たしそうな様子のハウスキーパーに腕を掴まれた。
「ちょっと、レイラさん! あのネコはまたエレーナお嬢様の仕業なのですか?」
「えっと、まあ、そうですね……」
あまりエレーナのことを悪く言うのも嫌なので、レイラは曖昧に答えた。
使用人たちの間ではエレーナが手の付けられない面倒くさいいたずらっ子という悪評がすっかり定着してしまっている。いつしか屋敷に勤める使用人たちの中では一番関りたくない相手として認識されていた。
「せっかくなので一つ良いことを教えておいてあげます」
ハウスキーパーは嫌味まじりの口調で言う。
「ここだけの話ですが、あなたがしっかりと面倒を見ないから、エレーナお嬢様はジェミナリー家にふさわしくない子として、どこかよその家に養子に出されるかもしれないらしいですよ」
「え……」
唐突に告げられた話にレイラは思わず間の抜けた声を出してしまった。
ネコにビックリする人たちの声がだんだん遠くなってしまっていたので、一旦ハウスキーパーには「失礼します」と声をかけてその場を去ったが、ハウスキーパーから聞いた話が暫くの間何度も頭の中で回っていた。
(エレーナお嬢様が養子に……?)
エレーナとは毎日一緒にいたものだから、到底そんな事実は受け入れられない。どうしてしっかりとエレーナに注意をしてこなかったのだろうかと、今更ながら後悔してしまう。
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