第13話
「どう、可愛らしいでしょ?」
「そう、ですね……」
バスケットの中から出て自由の身になりその辺を歩き出したネコを見ながら言う。確かに可愛らしいその姿はエレーナが持ち帰ってレイラに見せたくなってしまう気持ちもよくわかる。
だけど屋敷内に野生の動物を放ってしまうのは非常にマズいのでは……。
そう思ってエレーナへの返事も曖昧にして、レイラはネコを捕まえようとした。静かにネコに近づこうとするけれど、レイラの気配にすぐに気づかれてしまう。再び狭い所に入れられてしまうのが嫌なのか、ネコはレイラに背を向けて一気に走り出した。
「ああ、待ってください!」
当然ネコは待てと言っただけでは待ってくれない。
ドアが開いたままになっていたエレーナの部屋から飛び出したネコは廊下を一気に駆けて行く。
「ねえ、レイラ、もしかしてわたしまた大変なことをしてしまったのかしら……」
あくまでもエレーナは迷惑をかけたくてネコを持ち込んだのではなく、レイラに可愛いネコを見せてあげたい一心で家の中に持ち帰って来たのであろう。
そう考えると責めるのは可哀想だけど、とはいえエレーナのせいで今からネコの捜索を始めなければいけなくなったので、大変なことをしてしまっていることもまた事実である。
「エレーナお嬢様、とりあえずお話はあとで、わたしはネコを捕まえてきますので」
「わたしも探すのを手伝――」
「いえ、お嬢様は部屋で大人しくしておいてください」
これ以上何かトラブルを起こして仕事を増やされては困るから、と付け加えることは口が裂けてもできないけど、思わず口からそんな言葉が出てきてしまいそうになった。
エレーナが明らかにしょんぼりしているのを見ると可哀想になってくるけど、そんなことを言っている場合ではない。とにかく早く探しに行かなければならない。
そんなことを考えている間にも、廊下を歩いていたメイドの小さな悲鳴が聞こえていた。
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