第10話

そのままレイラは、屋敷に戻った後にどのような言い訳をしようかと考えながら暫く水面をぼんやり眺めていると、ついには夕焼けで空が赤くなるような時間帯になってしまった。


いよいよ屋敷に戻った後の心配に感情が埋め尽くされようとしていた時に、ようやくエレーナの見せたかった景色の意味を理解することができた。


「綺麗……」


思わずレイラの口から言葉が漏れた。沈んでいく真っ赤な夕陽を受け止めて反射する真っ赤な湖は、まるで水の中で大きな炎が燃えているみたいに、日常の中では見られないような綺麗な光景だった。


思わず見入ってしまっていたレイラの横で、エレーナも楽しそうに湖畔に映る夕日を見ていた。


「ね、綺麗でしょ! 凄いでしょ!! 前に他のメイドと来た時に、絶対にレイラに見せてあげたいって思ったの!」


エレーナがはしゃいでいる。座ったまま、レイラの真正面に回り込んで顔を覗き込み、反応を伺っていた。そんなエレーナの様子を見て、レイラは自然と微笑んでしまった。


「ええ、本当に素晴らしい景色ですね」


この後屋敷に帰った後のことを考えなくても良いのなら、本当に有意義な時間を過ごせたと思う。


エレーナがどうしても見せたくなってしまう気持ちがわかるような、本当に綺麗な景色だった。



すっかりエレーナは満足してくれたみたいだし、そろそろ帰らなければならないと思い、立つように促した。


「じゃあお嬢様そろそろ帰りましょうか?」


レイラが先に立ち上がり、エレーナの手を取る。


「ええ……」


なんだか浮かない顔をしているエレーナの手を取り少し強引に立ち上がらせると、エレーナが顔を歪ませた。


「痛いっ……」


「お嬢様?……」

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