第8話
それはさておき、ベッドの近くまで行き、いつもと違う位置に置いてある枕を持ち上げてみると、枕の下にはまだ封をしていない封筒が置いてあった。
「これは一体?……」
普通は人の封筒なんて開けてはいけないだろうけど、エレーナがいなくなるなんて緊急事態だし、そもそも人に贈るための手紙を枕の下なんかに隠しておくはずはない。
多分エレーナは何らかの意図をもってこの封筒を置いたのだ。だからレイラは申し訳ないと思いつつも中身を確認することにした。
案の定手紙にはエレーナからレイラへのメッセージが書かれていた。
『よく見つけたわね! さすがレイラよ! あなたが見つけてくれなかったら危うくわたしは湖畔で1人夕方まで過ごさなければならないところだったのよ! ねえレイラ、お家の裏門から外に出て、北西の方向に15分程歩くと湖があるから、そこに来てもらってもいいかしら? 絶対に一人で来るのよ。わたしが一人で屋敷を抜け出したことがバレてしまったら大変なことになってしまうから、決して大事にしないようにね』
レイラの顔からサッと血の気が引いた。
この文面をそのまま解釈するとエレーナは一人で無断外出をして、湖畔で待っているということ。
目付け役担当のレイラが気づかないうちにエレーナがいなくなっているということはとても大変な事である。
もちろん、レイラの責任問題になるという意味で大変なことは言うまでも無いが、レイラにとって本当に困るのはそこではない。
エレーナは名門貴族の令嬢であり、一目見ただけで良い家の者だとわかるような恰好をしている上に器量も良いから、外を一人で歩くと誘拐や追剥等たくさんの危険が付いて回る。
だからいつも外出時には必ず護身術を心得ているメイドと行動を共にしなければならないことになっているのに……。
とにかく一刻も早くその湖畔に行って、エレーナを連れて屋敷に戻らなくてはならないと思い、レイラは大慌てで屋敷の外へと向かった。
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