出会い
第3話
レイラが10歳の頃にジェミナリー家にやってきたときにはエレーナはまだ5歳だった。それから2年ほどレイラは屋敷全体の雑用をしていたが、12歳になったときにエレーナのお世話係をメインで担当させてもらえることになった。
もっともお世話係と言っても、まだ幼いエレーナの遊び相手であったり、危ないことをしないかどうか見守る係であったりと、少しメイドの仕事からは外れるような仕事内容である。メイドというよりも、幼いエレーナのお友達代わりとでも表現した方が近いのかもしれない。
エレーナは今でこそとても大人びて落ち着いているけれど、レイラが出会ったばかりの頃は、今のお淑やかなエレーナからは考えられないくらい、年相応の無邪気で元気な子だった。
そして、それなりにトラブルメーカーでもあった。
「わたしはエレーナ、あなたも早く名前を言いなさいよ。わたしに先に名乗らせるなんて失礼よ?」
初めてエレーナと2人になった時、思い切り人差し指でレイラの方を指されながら、そんなことを言われた気がする。緊張して名前を伝えるタイミングを逃してしまい、早速怒られてしまった。
出会っていきなり失礼な態度を取ってしまったうえに、自分よりもさらに年下の少女から注意をされてしまい、恥ずかしさで顔を赤くしながらレイラは慌てて名前を伝えた。
「ご挨拶が遅れてしまいまして申し訳ございません。わたしはレイラ・ミシャーリと申します」
「レイラって言うのね。今日からよろしくね!」
そう言ってエレーナは手を差し伸べて握手をしてくれようとしている。ムッとした表情が一変して明るい笑顔になっていた。
礼儀正しいエレーナに負けないようにとレイラもしっかりと背筋を正して握手の手を握り返す。
「よろしくお願い致します。エレーナお嬢さ……ま?」
握ってきた手が思っていた感触と違い思わず変な声での挨拶になってしまった。
なんだか手にべたりとした感触があったので、恐る恐る何なのかを確認してみると、真っ赤な何かが付いていた。血ではないだろうかと思い、一気にレイラの表情が青ざめてしまう。
「エ、エレーナお嬢様! どこかお怪我ですか?!」
担当初日からエレーナが大怪我をしてしまったことになんてなれば大変である。
だけどエレーナは慌てるレイラとは温度差が全然違い、何を言っているのか分からないという様子で可愛らしく小首を傾げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます