第4話凪葵という――
彼女と出会ったのが第1の転換期で、家に来るようになったのが第2の転換期。
そして彼女とセックスをしたのが、おそらく第3の転換期だろう。
もし彼女とセックスをしなかったら、俺は前までのようにただご飯を一緒に食べて、一緒に遊ぶだけの仲だったのだろうか。
いや、どうだろう。
そもそもセックスをしなかったらなんてのが、間違っているのかもしれない。
ほとんど毎日家に来て遊んでご飯を一緒に食べる女の子。
俺たちは思春期真っ盛りの高校生だ。
きっとセックスは遅かれ早かれしていた気がする。
ていうかこの距離感でしてなかったら、それこそおかしいと俺は思う。
例えば。時々ならまだわかるのだ。男の子部屋に、女の子が時々遊びに来るのは、おそらくなくはない。
一緒に出掛けるというのも、なくはないのだろう。
ならば何がおかしいのかといえば、
凪がこの距離感のせいで、ふとした瞬間に我慢ができなくてセックスをした。
友達から、エッチな友達へとジョブチェンジ。
それ以降毎日のように俺たちはセックスをしている。
互いに盛り合った獣のように。
ただ最近は落ち着いてきてるけど。
これでも、落ち着いているつもりだけれど。
「ん」
俺がぼーっと天井を眺めていると、ついに凪が起き出した。
もぞもぞと毛布の中で、俺にぎゅうっと抱き着いてきてその顔を俺の胸板の埋める。
サラサラとした髪が鼻に当たり、擽ったい。
だんだんと開いていく瞼。
「おはよう」
俺がそう声をかけると、一瞬こちらを見た後、また俺の胸に顔を埋めた。
「おはようゴツゴツの胸板君」
「俺の本体は胸板じゃないし、胸板は言葉をしゃべらねぇぞ」
まだ寝ぼけているんだろうか。アホなことを言う凪にそう返す。
「うちどんくらい寝てた?」
「30分くらいかな。ちな、今は9時半」
「なるほどなるほど。うちらってお風呂入ってないよね?」
「入ってないよ。溜めてはあるけど、入る?」
「はいるはいる」
そういって動かずに、今度は俺の胸をスンスンし始める凪。
「ほらいくよ」
「え~、疲れたからおぶっていってほしいなぁ」
「しょうがないやつめ」
俺は彼女を引きはがした後に、彼女の脇の下から腕を通して背中に手を滑らせ、反対の手は太ももの裏に入れて、持ち上げる。お姫様抱っこだ。
俺の筋肉は見せ筋みたいなもんだけど、役に立たないわけじゃない。
「おっ、梓川王子様?」
「そうだよ。すべてこの悪逆非道の王子様にまかせろ」
「あはは。全然任せらんないなぁ」
そういいつつも、凪はしっかりとこちらに身を寄せてくれる。
直接手で触っている部分も、彼女から触れてきて来てくれる部分も、相変わらず全部柔らかい。
天然物のクッションを抱きかかえているみたいだ。
「重くない?」
「相変わらず無重力だよ」
「それはうち凄すぎじゃん!」
おどけて言う凪と、ふと顔を見合わせて笑いあう。
彼女を抱いたまま脱衣所をすっとばして風呂場へ。
俺も彼女も全裸だから、せっかく気持ちよく湯を浴びるのに、脱ぐという動作が省略されるだけで、結構楽である。
シャワーをとってノブを回し、出てくる水がお湯に代わるまで待つ。
あったかくなってきたなぁというところで、それを凪へと渡した。
「サンキュ!はぁぁあ、気持ちいぃ…」
凄い溶けてるなぁと感心しつつ。
確かに、セックスの後のお風呂は気持ちいい。
正確には、セックスして結構時間が経っているいるわけだが。
体や髪を洗っているのを見つめながら、小さくため息を漏らす。
背中、白くてすごい綺麗だ。
腰なんかは括れていて、思わずそこに腕を通して後ろから抱きしめたくなる。
雫が彼女の肌を伝って下へと落ちるのが艶めかしくて。
先ほど発散したばかりだというのに、俺の股間には熱が籠り始めていた。
流石は思春期の男の子。
先ほど3回は出したというのに。
はたして、俺の息子は際限がないのだろうか。
程なくてして彼女の背中を見ているだけでフル勃起。
いきり立った息子が天を向いている。
俺はそれを彼女の背中につんと押し当てた。
びくんっ、と彼女が跳ねる。
「もうそんなにしちゃったの?」
「俺の息子は我慢を知らないらしいね」
彼女はちょっとだけ待ってといって、泡立った髪の毛を洗い流す。
タオルで軽く水気を拭き取ると、こちらに向き直った。
その際にプルンと震えた胸にを見て、こちらの息子もびくんとご挨拶。
濡れた肌が、胸が、太ももが、首筋が、全てが艶めかしい。
思わず息をのんだ。
「……口で頼む」
「あんまし得意じゃないけど、いいよ」
簡素なやり取りをした後、俺はバスチェアに座り、股を開いた。
行為後、俺が少し賢者タイムになっていると、彼女が口を洗い終わったようで俺の顔のすぐ傍に彼女の顔があった。
俺達は暫し見つめあうと、自然と互いに唇を合わせて何度も優しくキスをする。
えっちしている最中というのは、自分にしては大胆な言動をしている節がある。例えば凪だったら俺と密着してすぐキスを求めてくるし、奥を激しく突いてあげると「それっ、気持ちいいっ」と素直に言ってくる。
もちろんそれに答えて俺は脳みそが溶けている――むしろ息子が脳みそみたいなところもある――ので激しく腰を振り舌を絡ませるが、こうして一通り終わった後にするキスというのは、なんか変な気持ちになりそうである。
なんなら今は口でしてもらっただけだから、今度は凪の
余韻というのか。こういうのは恋人こそやるものではないか?と疑問符が浮かんでくる。
それでいて、でもやっぱり行為中にしてるしいつしててもいいじゃんという肯定感もある。
こうやって彼女とキスをするのは心が安らぐし、悪いことではない。むしろいい。
……となればやっぱり悩むことなんてないわけだ。
ふと考えた疑問を打ち消すようにして彼女口の中に舌を入れる。
それに彼女も舌をもってして答えた。
絡み合う互いの舌に数秒後、俺達は唇を離した。
「これ以上しちゃうとうち不味いかも……」
そう若干潤んだ瞳で言われれば、俺は理性を保ちつつ俺もと返す。
まだまだ互いにいろいろできそうではあるが、これ以上するには体が冷えてしまうので二人で湯舟に浸かることにした。
俺の股の間に凪が入り背中をこちらに預けてくると、俺はそのままぎゅっと後ろから抱きしめる。
背中の感触と若干手に胸が当たって、しかし今は厭らしい気持ちよりもなんだか安心したような気持ちになった。さらに少しだけ抱きしめる力を強めると、彼女は前に回した俺の腕をさわさわっと触り、俺の手に自分の手を重ねた。
少しだけドキリとする。こうやって触れ合うようになってから俺達は言うほど長くはない。もちろん友達として仲良くしていた期間は1か月くらいあったが、実際そういうことをしたのは一週間と少し前くらいである。
それでいて、ここまでスキンシップをしてくれているのはなんというか素直に嬉しいのだ。心を許してくれている感じがして。
そして彼女とこうしているのが、俺の心に安寧をもたらす。すごく安心する。
それと同時に恥ずかしさはやはりついてくるが。
彼女もそうなのだろう。
彼女の髪が揺れて、こちらを向いたと思えば、その顔は少し羞恥に染まっていた。
「なんか恥ずかしいね」
「……言うな、照れる」
「けど安心するかも」
そうだなと返答すると、彼女は腕を伸ばし俺の顔を捕まえると引き寄せて唇にキスをしてきた。
軽いキス。でもそれで彼女の気持ちが何となく伝わった気がした。
「なんだか恋人みたいだね」
「だから言うなよ、普通に照れるわ」
「じゃあ異常に照れてみてよ」
「くそむず」
自分で言ったんじゃんとけらけらと笑う彼女。
そうやって取り留めのない会話をしながら、俺たちは少し温くなっていたお湯でしばし微睡みに耽る。
はたからみたら変な関係だろうが――いやむしろ俺達からみても変だなとは思う――俺達はこういう関係で、だれが何と言おうとこれが俺達なのだ。
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