第25話


私達ってどうして一緒にいたんだっけ?

お互い一緒にいて、心地よかったんだよね。

それってどうしてだっけ?

必要以上に干渉し合わなかったからだ。

ここまでしか入って欲しくない境界線がお互いにあって、それ以上私達は踏み込むことはしなかった。

こんな話を他人にしたらそれって本当に仲がいいって言えるの?って言うと思う。

けど、今まで、人と深く仲良くなる方法を学べなかった私達は、この関係こそが1番なんだと信じて疑わなかった。




梓衣華ちゃんが学校に登校するようになってから一週間後に期末テストが行われた。

数ヶ月間授業を全く受けていなかったのに、彼女は全教科高得点だった。

勉強した私より点数がいいってどういうことだろう。

元々頭のつくりが違うってこういうことを言うんだな。


「梓衣華ちゃんは親と離れたいって思ったことある?」

私達は学校の2階にある渡り廊下からぼーっと遠くを見ていた。

「突発的に思うときはあるかなぁ、、、でも、一瞬の感情で、すぐに思いとどまるよね」

梓衣華ちゃんは手に持っていたパックのジュースをストローで一口飲む。

「そうなんやよね。私のお母さんはさ、私のこと考えすぎて、頑張りすぎて、でもうちは思い通りにならなくて暴言を吐いたり、暴力でうちを支配する。」

「暴力とか暴言とか良くないことだけどねぇ?近くで苦労してきた姿を見てきてるから憎むことも嫌いになることもできない」

私は身体を壁に預けると、ため息をついた。

本当に、いっそのこと嫌いになれたら楽なのかもしれなかった。

けど、今まで転校ばかりで上辺だけでしか人との関係を築けなかった私は、お母さんに依存してしまっていた。

そうするしかなかった。

そうしないと自分を保っていられなかった。

「きっと、親子間でしかわからない感情やよね」

「親子関係って複雑だね」

そう言って梓衣華ちゃんは悲しげに笑った。

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