第20話


体育大会を終えたあたりから、梓衣華ちゃんは学校を休みがちになった。

君が来なくなったことで私の居場所はクラスのどこにもなくなった。

梓衣華ちゃんの隣が私の唯一の居場所だったのに。


学校で、自分の居場所がなくなった私は、学校を休みがちになった。

心の拠り所がなくなった私は、心のバランスがとれなくなった。

そして今日も家を出る時間になっても部屋着のまま、畳のリビングで横になり放心状態。

母は私を見るなり、足で私の背中を蹴った。

「また学校休む気か!行く気ないんやったら辞めてこい!」

そう、怒鳴られても私は無反応。

「聞こえとんのか!この聾!」

母は近くにあった小型掃除機で私の頭を打った。

何度も、何度も、何度も。

「私がどれだけ苦労してきたと思っとるんや!人には言えない恥ずかしい仕事までしてここまであんたを育ててきたのに!その仕打ちがこれ?」

人には言えない恥ずかしい仕事。

その言葉が示す意味を理解してしまった。

「ここまで1人で頑張ってきた私になんでこんな仕打ちするんや!」

そう言い母は泣き崩れた。

私も泣いてしまった。

今、母を悲しませていることが辛かった。

私が母と同じ立場になって母と同じように若くして子供を産んで、1人で育てるために、やりたくない辛い仕事をしていることを想像した。

どうしようもなく胸が苦しくなった。

生まれてきてごめんなさい。

こんなに迷惑かけてしまうなら、私なんて、生まれる前に死んでしまえばよかったのに。


殴られた所の打ちどころが悪かったらしく、頭を切っていたようだった。

頭を触ると、血がべっとり着いていた。

私はそのまま横になり、目を閉じた。

このまま死んでしまわないかなって思った。

どうして生きている価値のない私が生きているんだろう?

生きる生命力のない私がどうして?

、、、

あんなに頭から血が出ていたのに私は目を覚ましてしまった。

人間の生命力に驚かされる。

リビングの壁や畳には私の血が沢山付着していた。

どこの殺人現場ですか?って状態。

母は私の頭が出血していることに随分後になって気づいたらしかった。

きっと頭に血が上っていて、周りも見えてなかったんだろう。

こうやって殺人とかって意外と身近に起こるんじゃないかな。

人って感情的になると判断能力能力とか鈍って何をしでかすか分からない。

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