第11話


お昼になると、私と梓衣華ちゃんはお弁当を持って教室を出た。

そして教室を出てすぐ左側の階段を登った。

そこが私達が最近昼食をとるのに使っているスペースだ。

廊下は汚いし、寒いし本当はこんな所でお昼時間を過ごしたくはなかった。

けど、教室はスクールカースト上位者がいて何となくご飯を食べずらい。

楽しくおしゃべりも出来ないし。

あの子達ってたまに他人の会話を聞いてるときがあって、その他人の話をネタにして面白がっている時があるから。会話の一部を少し聞いただけで、何も知らない癖にあることないこと話されて、笑われるのなんて御免だった。

それを根本から回避する行動がこれだった。


私たちはいつものように、お互いのお弁当の中身が見えないように蓋で上手く隠しながら昼食を食べようとしていた。

その時、何となく、梓衣華ちゃんがお弁当を隠す理由が気になって横から中を覗き込んだ。

その中はラップで丸められたおにぎり2つに、申し訳なさげに隅にちょこんと漬物が詰められていた。

私がお弁当の中を覗いていることに気がついた梓衣華ちゃんの驚いた声が聞こえた。

「うわっっ」

私が後ろに退くと、

「大したもの入ってないから!!!」

と、お弁当に覆い被さるように中を隠した。

いやぁ、もう見ちゃったし。

私は苦笑いすると、

「梓衣華ちゃん。見て、私のお弁当」

そう言って自分のお弁当の中を見せた。

その中はラップで丸められたおにぎり2つに、温野菜が少し詰められているだけのお弁当。

「一緒だ」

「ね?」

「何か、毎日お弁当作ってると、最初はちゃんと見た目とか考えて作るんやけど、段々面倒くさくなってきて、どうせ自分が食べるし、誰にみられるものでもないしって思えてきて笑笑」

「はは、わかるよ。私達のこのお弁当、面倒くささを具現化した最終形態って感じ。」

「いやいや、うちは温野菜入れてるだけ頑張っとるよ。最終形態はきっとご飯詰めただけになるで笑笑」

「確かにそうかも。私もおにぎりラップで丸めてるだけ偉い笑笑」

そう言い、梓衣華ちゃんはくすくすと笑った。

「うちらって共通点多いと思っとったけど、やることまで似とるやん。この前菅原くんにも言われたけど、入学初日からすごい仲良いし、雰囲気も似てるから事情があって生き別れた双子かと思ったって笑笑」

「何その話!菅原漫画脳過ぎる!双子はないでしょ!紗梨華ちゃん可愛いもん!まぁ、似てるって言われて悪い気はしない〜!」

それはこっちのセリフだ。と思った。

まあるいおでこ。下がった眉。奥二重で丸い目。少し上を向いた低くて小さい鼻。

嗚呼、本当可愛い。好きすぎてしんどい。

どうしてくれるんだ。

私がうっとりした顔を梓衣華ちゃんを見つめた。

梓衣華ちゃんが不思議そうに私を見ている。

そんな表情も素敵。

私が暫く自分の世界に浸っていると、呆れた梓衣華ちゃん、私の両肩を掴み揺さぶった。

「どこ見てるの〜??戻ってきて〜!」

「ごめん〜笑笑」

「あのね、聞いて欲しいことあって」

梓衣華ちゃんから話を聞いて欲しいと切り出されることはすごく珍しい。

私は、おにぎりもどきをひと口食べると、梓衣華ちゃんの話に耳を傾けた。

「隣のクラスの聖くんに告られた。」

「えぇ!?聖くんってあの野球部の??」

「うん、前に委員会の集まりで話したことあって、それからちょくちょく声かけられるようになって、、、」

えー!私の知らないところでそんなことが!

「後、同じクラスの巽くんにも告られた。」

「はぁ??」

私は、手に持っていたおにぎりを落としそうになる。

「巽くんとは少年漫画好きな共通点があって、仲良くなったの」

「梓衣華ちゃんモテるなぁ」

いや、魅力的な子だどいうことは気づいていたけど、この短期間で2人に告白されているなんて。

漫画とかドラマの中だけでしか起こらないことだと思ってた。

「そんなことないよ」

謙遜するな。

他の人が聞いたら嫌味に聞こえるぞ!

「まぁ、梓衣華ちゃんに告った男子達の気持ちはよく分かるよ。私、梓衣華ちゃんの魅力を言えって言われたら永遠に言えるもん。」

「えー、私のどこに魅力があるの??」

全く思いつかないとでも言いたげな表情で、梓衣華ちゃんは首を傾げた。

そういうところだよ!可愛いな!

「まず、ショートが似合う。愛らしい顔をしとる。胸が控えめで可愛い。肌綺麗。おでこが広いの気にして隠してるところ可愛い。家庭的でいいお嫁さんになりそう。面倒見がいい。気遣いができる。

バス乗ってる時、音楽聴きながら突然鼻歌歌い始めるちょっとぶっ飛んでるところ。バイト先の先輩( 男性)に家にゲームあるから来ないって言われて後先考えずに家に行ってしまうところ。( 同棲中の彼女がいたから良かったけど。 )急に大声を出したくなったらしく、人目を気にしずに奇声をあげてまうところ。私が何気なく梓衣華ちゃんの腕を組んだら、スケベな顔しててちょっと引いた。」

「ねぇ、後半ディスってるよね!」

「褒めてるよ!そういうちょっと変なところも魅力なんよ!」

「ぇ〜」と、梓衣華ちゃんは小さい声でリアクションすると、不満を言いたそうに口を尖らせた。

その表情も最高に可愛い。

私の心のメモリーに永久保存します。

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