第3話


入学式から数日後、クラスの親睦を深めるためにレクリエーションが行われことになった。

普通だったらこんな親睦会する必要ないのかもしれないが、この学校は生徒に問題があった。

素行が悪い生徒が集まってる。だけならまだいい。

けど、ここにはそれとは対照的な生徒もいた。

いわゆるいじめのターゲットになりやすい生徒だ。

そういう生徒が打ち解けられるようにこのレクリエーションが行われているのではないかと思う。

そんなことをしてもいじめというものはどこにでも起こることだと思うけど。


そのレクリエーションは学校ではなくどこか別の所でを借りて行われるようだった。

歩きでは行けない場所らしく、バスに乗って移動した。バスの席は教室の席順だった。まだクラスに馴染めていない子も多いだろうからという教師達の配慮だろう。

なので、私は順番通りだと梓衣華ちゃんの隣になる訳で。

良かった。っと安堵し私は座席に向かった。

座席に向かうと梓衣華ちゃんが窓際を促してくれたのでお礼をいい、奥に座った。

バスの移動中は私がずっと話をしていたと思う。

私は、かなりの人見知りなのにまだ出会って数日でこんなにも打ち解けられるのは相性がいいからだろうか。酷い時は数年ががかるからな仲良くなるのに。

その時間は確かこんな話をした。

「うちの家昔犬飼っとったんやぁ。保育園の頃から小学校の高学年くらいまで」

「へぇ〜犬種は?」

「シーズーとチワワ2匹」

「そんなに?笑」

「うん笑」

「飼ってたってことは寿命とかで?」

「ううん。うちん家母子家庭で、生活苦しくなったから手放した。、、、」

「そっか、、、」

友達になって間もない人にこんな反応に困る話をしてどうするんだろう?って思った。けど、すらすらと口から出てくる言葉は止まらない。

「チワワ2匹はまだ飼い始めたばっかでいなくなってもなんとも思わんかったんよ。やけど、シーズーの方は6年も一緒にいて、家族同然だった。」

「その犬の名前わんぞーっていうんやけど、学校帰ると、部屋のどこ探してもわんぞーがいなくて言葉が出なかったよ」

梓衣華ちゃんは私の止まることのない言葉を黙って聞いている。

「で、お母さんが仕事から帰ってきてーわんぞーどうしたん?って聞いたら知り合いに預けた。て、言うんやん。でもすぐ悟ったよね。あーもうわんぞーご戻ってくることはないんやって」

私はぎゅっと手を握って拳をつくる。

お母さん、わんぞーには私がいないとだめって言ってたのに。

「わんぞーがいなくなって少しして私言ったんやよね。わんぞがいなくても意外と平気やわって」

この頃からだ。本心を隠すようになったのは。

「全然平気やないのに。悲しいのに泣きたいのに泣けないまま、気持ちを消化できないまま、時間が過ぎてった。」

「その後少しの間はお母さんにわんぞーの話題を出したりしてた。」

けど、お母さんご困った顔をするから、

「もうこの話はしない方がいいんだって悟ってやめた。」

そして、私は言いたいことを言わなくなっていった。

「本当は今どこにいるのかとか、手放すことになった理由とか聞きたかった。けど、その反面この

ままでもいいかって気持ちもあった。」

「だって家族やし、お互いの事よくわかっとるやん。お母さんやって好きで手放したわけやないし。それまでにたくさん考えたんやろうし。私に相談してくれなかったのはあれやけど。私もまだ子供やったしなぁって」

そこまで話したところで、私は梓衣華ちゃんと目線を合わせ、言葉を待った。

「別にそのままでいいんじゃない?」

私は目を見開いた。

驚いたのだ。予想外の回答で。

模範的な回答が返ってくることを予想していたのに。

「そういう経験したことがない人はさ、それは本人に聞いた方がいいんじゃない?とか言うんだろうけど、お母さんの一番近くにいて、そばでずっと見たきた沙莉華ちゃんがそう思うんだったらそれでいいんじゃないかな?私はそういう白黒はっきりさせる選択だけが全てじゃないと思ってるよ。グレーが選択肢にあってもいいと思う。」

私はその言葉に胸が熱くなった。

どうして少し前まで他人だった人に私の一番言って欲しい言葉が分かるんだ。

私は溢れそうな涙を堪えて、梓衣華ちゃんに何度もお礼を言った。

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