第2話

彼女の話を整理すると、僕は中村疾兎「ナカムラハヤト」という名で男子高校生をしているとの事だった。入学して少しの間は登校していたが、いつのまにか学校へ来なくなり顔を見る機会が減ったそうだ。その理由は、家族に見捨てられたから。家族に見捨てられ自暴自棄になり、家で引きこもるようになったそう。

そして、彼女の名前は南風夏向「ミナミカゼカナタ」で僕の幼なじみだそうだ。家も近く、学校の行く道も同じことから登校する際は一緒に行っていたようだ。そして、高校生になり僕の方から告白し付き合うことに。

僕が何故病院にいるかどうかは夏向も知らなかった。電話で呼ばれて急いで来たら寝ている僕がいたようで、6日間も寝ている僕の傍で看病をしてくれていたそうだ。

それと記憶消失についての話を聞いた。

記憶消失というのは治ることの無い病の一つで、記憶喪失のレベルが一段階上がったもの。記憶喪失の場合は、いつになるか分からないが記憶は戻ることになる。しかし、記憶消失の場合は必ず戻ることのない病のようだ。大抵の場合は一部の記憶が消失してしまうようなのだが、僕の場合は生まれてからの記憶が途切れ途切れになっており、ほぼ無いと等しい状況のようだった。

僕自身も覚えていることは、限りなく皆無に近く一人称を僕と呼ぶことしか覚えていなかった。何故これだけなのかが可笑しく腹ただしくもある。

それに、記憶消失の場合は時間が経つにつれ周りの記憶を保持している人すらも忘れていく病のようで、いずれは夏向も僕の事を忘れてしまうのだと思うと悲しくて泣き出しそうになる。

そんな僕の表情を見て夏向が優しく僕を抱きしめた。

「疾兎は大丈夫だよ、私は絶対に忘れないから」

「ありがとう、ありがどゔ、うぅ」

そこからは、泣きじゃくる僕をずっと夏向が抱きしめてくれていたことしか覚えていない。

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