第2話 鬼との記憶
不動明王にはわかっていた。この鬼の正体。そして、琴との関係を。
それは、琴がまだ幼き頃。琴はとある屋敷の中にいた。そこに父と母がいる。
幼き頃から、優しい両親に育てられ、すくすくと育つ。
しかし、時折両親は琴がおかしな事を言ってくるのには、気味の悪さを感じていた。
ある時、庭の木のに向かい、話す娘を見て、何処かやはり病なのではないかと、祈祷をお願いしたのが、八重との出逢いだった。
八重が見た琴は、病でもない。。。只気味が悪いとされる理由はよくわかった。。。そう、霊能を兼ね備えていたからだ。
それを琴の両親に話す。両親は、琴を八重に預けたい。と申出た。それは、琴を今後どう、接し育てたらよいのか、わからなかったからだ。
そして、その屋敷に居たのが、、、そう、あの鬼である。琴には鬼が視え、よく、庭の木の実を取っては、鬼にあげていた。
その様子を背後から見ていたのが、不動明王だった。
鬼と随分と仲良く遊ぶ琴。しかし、屋敷を出る前夜、琴はかなりの熱にうなされる。熱は全く下がらず、八重が呼ばれ、祈祷するとやがて、熱が下がってくる、、が、しかし、記憶をなくし、その代わりに、霊能を更に授かっていた。。。
鬼「おい!、、こ、琴。」
少し照れながら、鬼は琴を呼ぶ。
次はいつまた、ここ、裏山にくるのだ?
琴「明日も来ます。」
鬼「では、俺も来てやろう。」
琴は、少し微笑みながら、待っている事を鬼に伝えた。
こうして、どんどんと、鬼と琴は近づいていった。八重はその様子をずっと見ていた。。。
ある時、山に入った琴。ただ、その日は山の、雰囲気がちがった。
山全体が、薄気味悪い。
琴は感じ取る。鬼と、、、それ以外に何か、、、居ると。。。
八重は、琴の異変と、山の異変を感じ取る。家の外に出、山を見ていた。そして、琴を追う。
琴は、いつも鬼と会う場所までやってきた。木の実があちらこちらに豊富な場所である。
が、現れたのは、鬼、、、ではない!
「お前か!、、俺の仲間に、、、ちょっかいかいてるのは!」
琴が目にしたのは、あの鬼とは全く似ても似つかないような邪神。
しかも、一体どころではない、、、何体もいる。
すかさず、不動明王が琴の前に立ちはだかる。
邪神「なんだぁ!出来損ない不動明王か!、、、他愛もないもないこと!
その娘、、、邪魔な娘!」
不動明王「何が邪魔なんだ!、、お前らが邪魔なんだろ!とっとと消えろ!」
邪神「消えろだ?、、、ハハハ、、笑わせおって!、、若造な、出来損ないが!」
そう言うと、琴目掛けて攻撃してきた。
「やめろ!!!、、、!」
「やめろ!、、触るな!!、、その娘に触るな!」
鬼だった。鬼が琴をかばい、救ける。
琴を自分の腕に抱え込む。。。
琴「鬼殿。。。」
八重が琴に追いつき見た光景は、真に不思議な光景だった。。。
八重「邪神が、人間を救けるとは!、、、」
只見ていた、八重だった。。。
不動明王は鬼の側に付き、琴と鬼の前に立ちはだかる。
鬼「不動!、、お前は、私を知っているのだな!」
不動明王は、笑みを浮かべる
「琴を離すなよ!!鬼!、、あいつら、ぶっ飛ばすからよ!」
そう、不動明王が言うと、不動明王とは思えないような、エネルギーを、手に持つ法具に集め、邪神達目掛けて放った。
邪神達は、散り散りに吹き飛び、消えて行った。
不動明王「とりあえず、追い返したが、また来やがるな、きっと。」
周りが静かになると、八重がかけよる。
八重「琴!無事か?!」
不動明王「大丈夫だ。無傷だ。鬼のおかげだな。」
八重は安堵する。。。
琴「お師匠さん。。すみません。。」
鬼は琴を手から放す。。。
琴「鬼殿。。ありがとう。。」
鬼は少し照れたように、微笑むだけだった。。。
八重「貴方様は一体、どなた様なのですか?。。。なぜ、元に戻られないのですか?」
鬼は悲しく微笑み、その場を離れ、消えた。。。
その夜、八重は、不動明王を呼び出す。
八重「お不動様。。貴方様はご存知なのでは?」
琴はスヤスヤと眠っている。。。
不動明王「あぁ、、知っている。」
八重「あの邪神は、一体、、何者なのですか?」
不動明王「あいつは、神だ。。しかも、かなりデカイ神。。。」
それしか、言わなかった。。。
次の日、琴はまたあの山に行く。鬼に会いたいと思ったからだ。
だが、鬼は現れなかった。。。
次の日も、次の日も。。。
(もう、会えないのか?。。。)
琴はそんな事を思った。。。
それでも、琴は毎日毎日山に行った。
そうして、現れた、、一体の邪神!
邪神「あの鬼に近づくでない!」
琴「なぜですか?」
邪神「お前は、、、お前は、邪神、我らの敵だからだ!、、、近づくな!」
そう、言い残し消えた。。。
琴はわからなかった。なぜ?敵なのか??
不動明王に琴は尋ねるも、教えてはもらえなかった。。。
琴「鬼殿。。。」
(会いたい・・・)
琴の中に何かが、芽生えていた。。。
幾年か後・・・
父「琴。。。大丈夫か?」
琴「父様。。。」
琴は、生まれ育った両親の元へ、返されていた。。。そして、床に伏せっていた。。。
母は時折涙を浮かべていた。。。
八重には知らせが来た為に、琴を両親の元へ返したのだった。。。
この世での時間がわずかになっていると。。。
琴は寝床を離れ、庭の木を見ていた。。
おぼろげに脳裏に浮かぶ、幼き自分と、鬼だった。。。
琴(あぁ。。そうだったんだ。。寂しい自分に寄り添ってくれた、、神様だったんだ。。。)
幼き頃から、両親から気味悪がられ、ぽつんと、独りぼっちだった。。
そんな自分にいつも寄り添ってくれた、鬼は、琴には鬼ではなく、神様にしか見えなかったのだ。。。
いよいよ、琴は、あちらの世界へ還る前夜のこと。
床に伏せっている琴の目の前に現れた。。。
そう、鬼である。。。
鬼「いよいよ、別れなのだな。。」
琴は夢うつろだった。。。
鬼は琴に、触れた。。。
そうして、一言、、、
「そなたとは、また逢える。。。きっと、、、また。。。」
琴は尋ねた
琴「貴方様は?、、、何と言うお名前ですか?。。。」
鬼「・・・天地金神だ。」
琴は小さくその名を呼んでみた。
「て・ん・ち・か・ね・の神様。。」
鬼は琴をそっと抱きしめ、、、
消えていった・・・。
如何だっただろうか・・・・・
人は皆、転生を何度も繰り返す。。。
そう、この琴も、八重すらも。。。
何度も何度も。。。
そして、もしかしたら、また、この時の鬼に再会しているのかもしれない。。。
不動明王「なんだよ!、、かっこつけて!、、おい!、、中筒!」
中筒「なんだ?、、良いではないか。、、、なぁ、金神殿。。。」
不動明王「金神様、、、あの時、琴の事、絶対に好きだっただろ?」
金神「な、なあんじゃ!!、、そ、そんな事、あるか!、、、」
不動明王「なあに、、照れてんだよ!、、、あ、やっぱ、、、好きだったんだぞ!、、きっと!」
かなり照れている金神様なのである。
そう。。。もう、邪神などではない。
立派な神様として、今はこうして、お帰りになり、我々と共に、この琴の御霊を持つ者の側にいるのである。。。
巫女と鬼の間にあるもの。 中筒ユリナ @ariosu-siva
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